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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「遠すぎた橋」 社会を冷笑したい時に〔28〕 

遠すぎた橋
史上名高い負け戦の映画化

 

 
【原題】A BRIDGE TOO FAR 
【公開年】1977年  【制作国】英吉利 仏蘭西  【時間】175分  
【監督】 リチャード・アッテンボロー
【原作】コーネリアス・ライアン
【言語】イングランド語 一部ドイツ語     
【出演】ダーク・ボガード(ブラウニング中将)  ショーン・コネリー(アーカート少将)  マイケル・ケイン(バンドール中佐)  ジーン・ハックマン(ソサボフスキー少将)  エリオット・グールド(スタウト大佐)  アンソニー・ホプキンス(フロスト中佐)  ライアン・オニール(ギャビン准将)  ロバート・レッドフォード(クック少佐)  マクシミリアン・シェル(ビットリッヒ中将)  ローレンス・オリヴィエ(スパンダー)   
 
【成分】悲しい スペクタクル 勇敢 絶望的 軍隊批判 オランダ 第二次大戦
 
【特徴】史上名高い連合軍の負け戦「マーケット・ガーデン作戦」の映画化。前半の華々しい爽やかな進撃場面と、後半のジリ貧となって力尽きる場面、そして総司令官の虎の威を借りて命令をごり押ししながら、ラストは最初から結果は判っていたかのようにうそぶく将軍の厚顔。負け戦を題材にしているので、テーマは戦争の虚しさである。
 
【効能】悲観的状況でも必死に活路を開こうとする現場将兵たちの姿に感涙。
 
【副作用】スキッと爽やか戦争娯楽映画ではないので、活劇を求めている観客にはつまらない。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。  
豪華キャストで描く壮大な負け戦。
 
 後の戦史家たちからも失策と評価されている連合軍の汚点「マーケット・ガーデン作戦」を舞台にした戦争映画である。(余談1)
 出演者の顔触れは素晴らしい。ショーン・コネリー氏、ロバート・レッドフォード氏、ジーン・ハックマン氏、アンソニー・ホプキンス氏、ローレンス・オリビエ氏、ダーク・ボガード氏、ハリウッド映画も代表する重鎮俳優ばかり、監督は名脇役にして名監督のアッテンボロー氏だ。いかにも俳優のギャラだけでかなりの予算がつぎ込まれている事がわかるが、戦闘場面も極めてリアルでなおかつ派手である。まるで大作「史上最大の作戦」を彷彿させる規模(余談2)だが、物語は華々しい勝ち戦を描いてはおらず、主人公たちの奮闘むなしく敗れ去る負け戦を描いている。

 空挺部隊が落下傘降下をする場面は迫力ある絵になっているし、各々出演者たちの熱演も素晴らしい。ホプキンス氏扮する中佐が率いる英軍部隊が意気揚揚と橋の手前に陣地を作るが、援軍が来ず敵にすっかり攻囲され次第に疲弊して降伏してしまう過程を軸に、ショーン・コネリー氏やジーン・ハックマン氏(余談3)ら扮する現場司令官たちがモントゴメリー将軍の無茶な作戦と各部隊との連携の悪さに苛立ちと焦燥感を露にする様が見どころである。またドイツ軍でも上層部と現場司令官との認識のズレがあることもシッカリ描写されていた。
 ラストで激戦地から戻ったショーン・コネリー氏は敢えて泥と硝煙にまみれた軍服のままブラウニング中将に詰めより、中将扮するダーク・ボガード氏がこともなげに「もともと遠すぎた橋やったんや」と言い放ち、呆気にとられるとともに怒りが込み上げるコネリー氏の表情が良い。

 但し、登場人物が多いことと相関関係も多少複雑なので、関心の無い人が観たら後半以降のくだりが解り辛くなるかも知れない。
 それにしても、英軍部隊に押し入られ勝手に自宅を陣地にされてしまった老婦人が最も哀れだ。毎日続く銃撃と砲撃で神経を病み、ドイツ兵の銃口が光る表通りに出て片手を挙げ「タクシー」と呼んで撃たれる様は笑い事ではない。

(余談1)ジョージ・C・スコット主演「パットン大戦車軍団」(邦題は陳腐だが内容は優れている)では、パットンにライバル意識をもちシチリア戦で功名を競った英将軍モントゴメリーは完全に狂言回し的存在で描写されていた。「遠すぎた橋」では姿を見せない雲の上の将軍として名前が出る程度で、憎まれ役はダーク・ボガード氏扮する副司令官ブラウニング中将が務める。モントゴメリーの威を借りてショーン・コネリー氏らに強硬な姿勢で命令する役柄だ。「ベニスに死す」では美少年を追い掛け回していた人が、と思うと愉快だ。

 問題の「マーケット・ガーデン作戦」もモントゴメリーがパットンを意識して功を焦り、無茶な作戦を立案したと見られている。とはいえ、必要に迫られた背景もあった。
 映画「史上最大の作戦」やTVドラマ「コンバット!」で描写される1944年ノルマンディー上陸作戦、これを機に連合軍は大攻勢を仕掛けドイツ軍はフランス・ベルギーから敗走していくが、オランダは低地で河川が多いため連合軍の進撃は容易ではなかった。また、フランスの大西洋沿岸にはドイツ軍の残存部隊が存在し港湾施設は破壊されて補給路が正味確保されたとはいえない。進撃の早いフランス戦線では補給路が伸び過ぎて物資不足になる。それを解消するためにイギリスに近いオランダをドイツ軍から解放し、オランダの良港から荷揚げして堅実な補給路をつくる必要が出てきた。

 映画で登場する空挺部隊(パラシュート部隊)は、小火器で武装した歩兵部隊が飛行機で戦線を飛び越えて敵勢力下の要地に落下傘で降り立ち急襲制圧し敵の陣営を撹乱させる機動部隊である。これに呼応して味方主力が銃火器や機械化兵力をつぎ込んで戦線を突破し空挺部隊が孤立することを防ぐのだが、連携が噛み合わないと大変なことになる。空挺部隊は短機銃程度の武器しか携行していないので、敵が本格部隊を投入してきたら潰されてしまう。
 空挺部隊は日本軍もドイツ軍も勢いがあった時期に積極活用して成功させている。日本軍のスマトラ島油田基地の制圧やドイツ軍のクレタ島制圧が有名。

(余談2)もちろん「史上最大の作戦」の方が予算・スタッフ・出演者、全ての面から見て遥かに大掛かりではある。
 「遠すぎた橋」でもドイツ人俳優が出演しているが、原版はドイツ語を話していたのだろうか? 日本語吹替えでしか見ていないので解らない。

(余談3)ジーン・ハックマン氏は叩き上げのポーランド軍司令官に扮している。できれば観客は単に叩き上げ将軍と済まさないで、ワイダ監督「地下水道」と「灰とダイヤモンド」をリンクさせながらポーランドが抱える背景も見てほしい。
 

 
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆ 良
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆☆ 名作

 
晴雨堂関連作品案内
遠すぎた橋 サントラ
レマゲン鉄橋 [DVD] ジョン・ギラーミン
史上最大の作戦 [DVD] ケン・アナキン
KANAL 地下水道 [VHS] アンジェイ・ワイダ
POPIOL I DIAMENT 灰とダイヤモンド [VHS] アンジェイ・ワイダ
パットン大戦車軍団 <特別編> [DVD] フランクリン・J・シャフナー
 

 
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 ようやく先日にこの映画を見ましたが、老婦人のくだりは強烈でしたよね。

 彼女が外に出ようとしても、もう誰も止めようとしない。

 そして止めなかった一人である、中年息子もそれきり出てこない。

 
 あとこの失敗の「A級戦犯」であるべきモントゴメリーが全く姿を見せないのもポイント。


 それにしても「ジョン・フロスト橋」の名前については、本当に現地の希望があったかどうかも疑いたくなりますね。
[ 2013/11/10 22:56 ] [ 編集 ]
JIN氏へ

 リチャード・アッテンボロー監督らしい演出です。英仏合作ではなくアメリカ単独制作だったら、もう少しノー天気に戦争を描いたかもしれません。 


>  ようやく先日にこの映画を見ましたが、老婦人のくだりは強烈でしたよね。
>
>  彼女が外に出ようとしても、もう誰も止めようとしない。
>
>  そして止めなかった一人である、中年息子もそれきり出てこない。
>
>  
>  あとこの失敗の「A級戦犯」であるべきモントゴメリーが全く姿を見せないのもポイント。
>
>
>  それにしても「ジョン・フロスト橋」の名前については、本当に現地の希望があったかどうかも疑いたくなりますね。
[ 2013/11/11 23:46 ] [ 編集 ]
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