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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「望郷 ボートピープル」 自分に喝を入れたい時に〔22〕  

望郷 ボートピープル
アンディ・ラウの事実上デビュー作


望郷 ボートピープル
未ソフト化
 
【原題】投奔怒海
【英題】Boat People 
【公開年】1982年  【制作国】英領香港  【時間】102分  【監督】許鞍華
【原作】
【音楽】羅永暉
【脚本】健健
【言語】中国語 一部日本語 ベトナム語     
【出演】林子祥(芥川汐見)  馬斯晨(阮琴娘)  劉徳華(祖明)  石夢奇(阮主任)
        
【成分】悲しい 切ない 知的 社会派 ベトナム ベトナム戦争 70年代 中国語 日本語 越南語
 
【特徴】ベトナム戦争を解放戦線側から取材してきた左翼系日本人カメラマンが、「解放後」に見たものは・・。
 ベトナム戦争後も続く悲劇を描写。公開当時はベトナムから粗末な舟に乗って日本へ亡命する「ボートピープル」が国際問題となっていた。
 ミカエル晴雨堂は、「キリングフィールド」より遥かに傑作だと評価する。
 
【効能】悲観的状況でも必死に活路を開こうとする少女の決死の視線に喝を入れられる。
 
【副作用】暗い社会派映画なので、気分が沈むかもしれない。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。  
英の「キリングフィールド」よりも遥かに傑作!
 
 冒頭、いきなりドキュメントタッチで戦車の列が市街地を凱旋する。戦車や軍用トラックには北ベトナムの旗がはためき、沿道には市民たちの歓呼、車上のサンダル履きの兵士たちは笑顔で手を振る。それを70年代の日本人大学生のような長髪・髭面の若者がニコンの一眼レフでシャッターを切っていた。BGMはまるで古き良き時代の邦画活劇を連想しそうな曲調だ。(余談1)ベトナム戦争が終わった「感動の場面」である。

 次のシーンで数年後に飛ぶ。70年代大学生のような風貌の若者はこざっぱりとした身なりになっていて、お洒落に口髭を生やした30代後半くらいの中年男性になっていた。喫茶店のマスターかデザイナーといった雰囲気だ。場所はベトナムの小学校らしき運動場、校長らしき年配の男性が口髭の男を紹介する。林子祥氏(ジョージ・ラム)扮する芥川という日本人カメラマンだった。(余談2)

 芥川は戦争終了後の平和になったベトナムを取材に来ていた。政府の担当者たちはベトナム戦争でアメリカを非難し北ベトナムを擁護していた芥川を「味方」として歓迎し、芥川も幸せそうな子供たちの姿を見て感無量となるが、やがて政府の「演出」に気がつく。
 街を取材中、貧しい母子家庭の少女に出会ってから、芥川の取材目的は次第にベトナム解放の虚像を嗅ぎ回る方向に変わっていき、政府はそんな芥川に態度を硬化させはじめる。

 この作品は香港の女性監督許鞍華氏(アンホイ)が手掛けた社会派映画である。許監督にとって、たぶん初めての長編映画であり世界的に脚光を浴びた作品だ。なにしろ当時はベトナムから小型船で脱出する政治的難民(ボートピープル)が国際問題となっていた。物語は実際にあったエピソードをベースに、「善意の第三者」である日本人芥川の視点で展開していく。(余談3)
 学生の頃に観たときは気がつかなかったが、劉徳華氏(アンディ・ラウ)の事実上のデビュー作でもある。芥川が出会う少女のお兄さんか従兄弟の役だったと思うが、まだ20歳そこそこの若さ、短パン姿で毛の少ない綺麗な足を見せている。芥川のカメラをひったくろうとしたり、少し反抗的なキャラだ。

 「キリングフィールド」を絶賛する声を聞くたびに私はこの「望郷-ボートピープル」を薦める。というのも、時代背景や舞台がほぼ同じで人物相関も似ている部分が多く、主人公がジャーナリストであるのも共通しているので比較しやすい。欧米人男性が制作するのとアジア人女性が制作するのとでは視点に明確な差が出ていることが雄弁に出ているのだ。
 「キリング・・」では主人公のアメリカ人ジャーナリストとカンボジア人記者との関係はどう見ても対等な友人関係ではなく、明らかに主人と従者の間柄だった。従者であるカンボジア人を心配する主人のアメリカ人の関係を軸に、カンボジアのポル・ポト政権の野蛮さを描写する映画だ。
 ところが「望郷」は主人公の日本人ジャーナリストとベトナム人少女はかなり対等に近い間柄で、父と娘のような間柄でもあり、世間慣れした少女が未だ学生のような青臭さのある芥川に世間の厳しさを教える事もある。政府の冷酷な政策により弟も母親も失った少女をベトナムから脱出させようと命をはる芥川と、無事に小船で脱出し決死の形相で遠くを見る少女の横顔。
 英国人男性監督の視線と認識と価値観、アジア人女性監督の視線と認識と価値観、私は迷わず後者を支持する。

(余談1)ベトナム戦争時、北ベトナム軍兵士のスタイルは探検隊のような熱帯用ヘルメットにダボダボの軍服、サンダル履きだった。米軍兵士よりも遥かに安上がりの装備で戦っていた。
 若者が持っていたのはたぶんニコンF-2だと思う。石川文洋氏や一ノ瀬泰造氏も使用していた耐久性に優れたカメラである。機械式シャッターなので電池が切れても撮影ができる。当時のカメラマンは絞りとシャッタースピードとピントを手動で調節して撮影していた。私も写真を始めた頃は機械式のマニュアル機を使っていた。

(余談2)日本人の同僚と日本語で会話をする場面がある。中国人が聞けば「日本語」に聞こえるのだろうか? 実に聞き取り難い日本語台詞でありステレオタイプ臭かった。同僚は「銀座の寿司が懐かしい」と言うが、物価の高い銀座で普通のサラリーマンが気軽に寿司など食えるか。
 とはいえ林子祥氏の所作や言動は、北ベトナムや南ベトナム解放戦線にシンパシーを感じる日本の左翼系知識人そのものだった。林子祥氏が若い。

 中華思想の表れなのかどうかは解らないが、ベトナムが舞台なのに作中の台詞の殆どは綺麗な中国語(北京官話)だった。

(余談3)70年代後半から80年代前半にかけて、ボートピープルは大勢日本にもやってきた。

 許鞍華監督は日本人の母をもつ。
 

上映から十年後に再編集された予告編
 
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆☆ 優

晴雨堂マニアック評価
☆☆☆☆ 名作

 
【受賞】1983年香港電影金像獎 最佳導演
 

 
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