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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「めぐみ-引き裂かれた家族の30年」 社会問題を考えたい時に〔9〕 

めぐみ-引き裂かれた家族の30年



【原題】ABDUCTION: THE MEGUMI YOKOTA STORY
【公開年】2006年  【制作国】亜米利加  【時間】90分  
【監督】クリス・シェリダン  パティ・キム
【制作総指揮】ジェーン・カンピオン
【音楽】ショウジ・カメダ
【脚本】クリス・シェリダン 、パティ・キム
【言語】イングランド語 日本語      
【出演】横田滋(本人)  横田早紀江(本人)  増元照明(本人)       
 
【成分】泣ける 悲しい 恐怖 絶望的 切ない 北朝鮮拉致事件 ドキュメント
 
【特徴】北朝鮮拉致事件を第三者の視点で冷静にドキュメントを制作。
 
【効能】日本と北朝鮮に横たわる問題について学習の一助となる。横田夫妻の姿に胸を打たれ、痛みや危機意識を共有できる効果がある。
 
【副作用】北朝鮮の犯罪を信じたくない方々には抵抗のある作品。拉致被害者家族に感情移入し過ぎた人には生ぬるい内容で不快感。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。  
ドキュメント作としては佳作。

 監督の名前は知らないが、プロデューサーのジェーン・カンピオン氏は短編映画時代から注目している。ニュージーランド出身の有能な映画監督だ。彼女が制作指揮を担当することで、作品内容への期待も高まる。特に直接の利害関係の無い外国人の視点と、女性であるゆえに横田めぐみ氏と母早紀江氏の心情に迫れる点が期待できる。(余談1)もし当事者が中心となって制作したら、中国や韓国の映画に登場する日本兵を観れば解るように、加害者への憎しみばかりが先行して第三者には辟易する内容となる。

 作品内容は、やや抑え気味ながら期待通りの完成度だった。私は作品を評価するとき、自分自身がどう思ったのかも大事だが、作品の趣旨や目的と投下資本に見合った内容であるか完成度であるかも見る。だから高い採点をしても酷評する作品もあるし、低い採点でも褒めちぎってお気に入りに加える作品もある。
 この作品は賛否あるかもしれないが、世界各国に拉致問題を知らしめるために制作したことを考えると佳作だ。人間が飽きずに鑑賞できるのは90分~120分くらいまでだ。通常のエンタメ映画であれば、物語に起承転結の盛り上がりの波を明確に演出できるのでもっと長くできるだろうし、思い入れを抱きやすいテーマであれば200分以上の大作にもできる。
 しかし、これは第三者に見せるドキュメントだ。淡々と描写しすぎると飽きられるし、演出が過ぎると事実としての説得力が無くなる。拉致被害者諸氏に同情される方々にとっては3時間の長尺でも短いだろうが、作品を「普及させる」という目的を達成させるには90分程度が限界だと思う。90分という枠では描写できる要素も限られる。拉致被害者諸氏だけでなく制作者たちにとっても断腸の思いで無数にあるエピソードをカットし、象徴的な要素や必要最低限の要素を描写するにとどめざるを得ない。それが、横田めぐみ氏と母早紀江氏である。制作者たちの思い切りの良さには敬意を表する。

(余談1)人間というのは理屈を操れるが、基本的には感情の生き物であり、感情は利害関係とダイレクトに結びつく。
 もう昔の話だが、在日コリアンの友人に誘われてある宴席に顔を出したことがある。おり悪く、ちょうど金正日氏が拉致を認めて日本中が騒然とした時期と重なってしまった。私が日本人だということで在日一世の老人から説教された。説教を要約すれば「拉致は悪いことだが日本の侵略・植民地支配ではもっと酷いことをやったし、今も本当の意味で謝罪していないし差別も相変わらずだ」

 私は絶望を感じながら敢えて反論はしなかった。反論すれば宴席が騒然となり乱闘になるかもしれない。私を誘ってくれた友人知人にも迷惑がかかる。理屈では解決できない。辛抱強く時間を経て怨嗟が薄まるのを待ち、機が熟したときに友情を求める感情で一気に解決するしかない。私の世代で解決できれば、それは奇跡かもしれない。
 
 その在日一世コリアンの翁氏の説教が成り立つのであれば、なおさら日本も言い分が生まれてしまう。日本の侵略を非難するなら、在日同胞として祖国の犯罪を糾弾するのも人の道ではないのか、これは右翼の屁理屈なのだろうか?

 翁氏は相手が私だから憤懣を吐き出しやすかったのだろう。翁氏と比べては失礼だが、日本の与太者から見れば相手がチマチョゴリの女学生だと暴力を振るいやすい。弱いから、大人しいから狙われてしまう。

 拉致被害者家族たちは30年に渡って苦しい思いをしてきたのだが、一部の左翼系運動家は北にシンパシーを感じているため最近まで被害者の気持ちを察せず暴言を並べた。社会的弱者の味方が左翼の売りだったはずなのに。北の犯罪が明らかとなっても、被害者たちの「強硬な姿勢」を保守反動と言いがかりをつけて非難する。そして日本の戦争犯罪を無いものと隠蔽しようとする一部の政治勢力は拉致被害者たちを政治的に利用しようとする。

 感情と利害の悪循環は今後も続くだろう。永遠かもしれない。だからこの手の映画を利害の中立にあるジェーン・カンピオン氏らが手掛けて正解だった。
 
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆ 良
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆☆ 名作

 
【受賞】ダラス・アジアン映画祭最優秀ドキュメンタリー賞 スラムダンス映画祭ドキュメンタリー部門観客賞 サンフランシスコ・アジアン・アメリカン国際映画祭最優秀審査員賞 オマハ映画祭観客賞
 
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