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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「Uボート TVシリーズ完全版」 感動からエナジーを得よう〔2〕 

Uボート TVシリーズ完全版」 
潜水艦映画の金字塔!

  


【原題】DAS BOOT 
【公開年】1981年  【制作国】西独逸  【時間】313分  
【監督】ウォルフガング・ペーターゼン  
【原作】ロータル=ギュンター・ブーフハイム
【音楽】クラウス・ドルディンガー
【脚本】ウォルフガング・ペーターゼン
【言語】ドイツ語 一部イングランド語 フランス語   
【出演】ユルゲン・プロフノウ(艦長)  ヘルベルト・グリューネマイヤー(ヴェルナー少尉)  クラウス・ヴェンネマン(機関長)  フーベルト・ベンクシュ(先任士官)  ベルント・タウバー(航海士)  マルチン・ゼメルロッゲ(次席士官)   マルティン・マイ(ウルマン見習士官)  アーウィン・レダー(ヨハン機関曹長)  ウーヴェ・オクセンクネヒト(兵曹長)   クロード=オリヴィエ・ルドルフ(アリオ機関兵)   
 
【成分】泣ける 悲しい パニック 恐怖 絶望的 切ない 潜水艦 反戦 第二次大戦
 
【特徴】映画「Uボート」の原版TVドラマ。映画は5時間余りあるTV版を2時間に編集したもので戦闘場面中心になっているが、このTV版は艦内の生活や乗組員の人間模様が中心になっており、よりUボート乗りの息遣いや生活臭を体感できるようになっている。
 
【効能】暑苦しい海の男たちのパワーが感じられる。
 
【副作用】むさ苦しく下品で臭ってきそう。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。  
ぜひTVシリーズ完全版を観てほしい。
 
 監督のペーターセン氏と主演のユルゲン・プロブノウ氏が世界的に有名になりハリウッドのエンタメになる切っ掛けの作品である。
 この作品以前の潜水艦モノは駄作とはいわないが臨場感にかけるものが多い。他の戦争映画でもいえるが、毎日シャワーを浴びている俳優たちにわざとらしく汚した軍服を着せ汚れメイクをしても晴着を着て闘っているように見えてしまう。
 その点、この映画は正確に再現した艦内セットに俳優たちを缶詰めにし、散髪髭剃りを禁じたのは大成功だった。実際のUボート乗りは髭面・垢まみれになって異臭を放ちながら母港に戻り、歓迎の花束を渡す乙女たちの眉間にシワをよらせた。そんな雰囲気はよく再現されており、スクリーンを観ていると体臭が漂ってきそうだった。
 
 戦記に詳しい人なら判るだろうが、Uボートでの生活は劣悪、狭くて不衛生で陽が当たらないから、臭い汚いきついの3Kだ。唯一恵まれているのは、食糧を優先して配備してくれるので食事は良かった。Uボートに同乗した日本海軍士官の回想によれば料理は高級レストランなみに旨かったそうだ。
 
 初公開時は長大なフィルムを2時間にまとめていたので、内容は戦闘場面に重点が置かれた。これを初めて観た高校生の頃は、リアルな第2次大戦時の原始的な水雷戦の模様に興奮したものだ。しかもアメリカが制作した大半の戦争映画みたいに敵に勝ってメデタシではない。ラストは戦争の意味を考えさせられるメッセージ性の強いものであり、これはドイツだから描けたともいえる。
 
 ただ、当時から疑問に思っていた事があった。台詞の中には意図不明・背景不明のものが見られ、どうしてこの人はこんな態度を? なぜ怒る? 最初の頃に登場した人は何処へ? それらがTVシリーズ完全版で明らかになる。カットされた部分が復活して2時間から5時間半になった訳だから、個々の登場人物の性格や生い立ち人間関係など新しい発見だらけだった。(余談1)
 そして完全版を観て思ったのだが、魚雷戦をしている潜水艦の描写よりも、潜水艦の中で生活している乗組員の喜怒哀楽が重点である事が良く解る。特に食事の場面が多い生活感のある作品だった。戦争映画というよりはサブマリナーの人間ドラマといった方が良いだろう。
 
(余談1)たとえば、堅物の若い先任士官は2時間版ではヒットラーユーゲント出身の生真面目ナチ士官というだけの描かれ方だったが、実は彼の「信念」の裏には婚約者を連合軍の空襲によって失った哀しい過去がある。
 2時間版やディレクターズカット版では写真だけの登場のフランソワは、士官クラブでドンチャン騒ぎの裏でウルマン見習士官と逢瀬、出港の時にもビルの窓から見送っていた。

 2時間版ではカットされている場面で、出撃して一週間くらい経ったエピソードに、就寝していたヴェルナー少尉がむさ苦しい下士官室の喧騒で飛び起き天井に頭を打ってしまう場面がある。カーテンを開けるとガラの悪い黒髪オールバックのピルグリム兵曹が「Moin Moin!(モインモイン)」と挨拶し、続けて同僚兵曹のフレンセンが「Morgen Leutnant(モーゲン ロイナン)」と挨拶する。
 フレンセンの挨拶は「おはよう、少尉」で、「Guten Morgen(グーテン モーゲン、英語のグッド・モーニング)」をくだけた感じにした言い回し。よく使われる。ピルグリムのも同じ「おはよう」だが標準語ではなくドイツ北部の方言である。
 この台詞でピルグリム兵曹はドイツ北部のキールやハンブルク辺りの出身なのが判る。

 蛇足だが、日本語吹き替えは良くなかった。損傷を受けた艦を必死で復旧している場面が後半によく出てくるが、俳優たちはリアルに演じられているのに日本語声優の演技がまずい。雰囲気としては工場や工事現場でトラブルが発生して騒然としているのに近いが、声優たちはその臨場感を表現できていない。たぶん、そんな所で働いた事が無いのではないか。
 
 81年公開時、主人公の「ウェルナー中尉」の肩章が「少尉」になっているのがナゾだったが、TVシリーズ完全版では「ウェルナー少尉」に改められていた。やはり日本語訳の誤りだった。日本の翻訳スタッフは軍隊の階級をよく間違える。陸軍中佐を「大佐」としたり、海軍大佐を「大尉」に海軍大尉を「少尉」とするなど、あまりにも多い。
 
 渡辺謙氏主演の「硫黄島からの手紙」でも、中村獅童氏扮する「ルタナン・イトウ」を伊藤中尉と訳していた。なんでやねん! たしかに「ルタナン」は英語で陸軍少尉・陸軍中尉の意味がある。しかし、中村氏が被っている軍帽にはハッキリと錨マークがあり、着ている海軍第三種軍装の襟には黒地に真中一本線の桜三つがハッキリ写っているではないか。アメリカ英語で「ルタナン」は海軍大尉だ。海軍と陸軍では呼称が違うのだ。


この予告編で艦長が乗組員を前に「Alles klar?」と言ってる場面の字幕が「出航する」になっている。
もちろん字幕にありがちな方便翻訳だ。実際の意味は「大丈夫か?」になる。
ドイツ人との会話でけっこう頻繁に出てくる。

 
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆☆☆ 秀
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆☆☆ 金字塔
 
  
晴雨堂関連作品案内
Uボート ディレクターズ・カット ウォルフガング・ペーターゼン
Uボート パーフェクト・コレクション (初回限定生産) ウォルフガング・ペーターゼン
ラストUボート [DVD] フランク・バイヤー
Uボート Vol.1 ~攻撃せよ!前進せよ!撃沈せよ!~ [DVD] オットー・クレッチマー
Uボート Vol.2 ~パウケンシュラーク作戦~ [DVD エリッヒ・トップ]
Uボート Vol.3 ~獅子の如く戦いたり~ [DVD] エリッヒ・トップ
眼下の敵 [DVD] ディック・パウエル
  
晴雨堂関連書籍案内
Uボート〈上〉 (ハヤカワ文庫NV) ロータル・ギュンター ブーフハイム
Uボート〈下〉 ロータル・ギュンター ブーフハイム
深海からの声―Uボート234号と友永英夫海軍技術中佐 富永孝子
WWI WWII Uボートパーフェクトガイド (歴史群像シリーズ)
 

 
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