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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「椿三十郎」 家族と一緒に癒されよう〔18〕 

椿三十郎
盆と正月に一家団欒で観よう。
 


 
【公開年】2007年  【制作国】日本国  【時間】119分  【監督】 森田芳光
【原作】山本周五郎  
【脚本】菊島隆三  小国英雄  黒澤明      
【出演】織田裕二椿三十郎)  豊川悦司(室戸半兵衛)  松山ケンイチ(井坂伊織)  鈴木杏(千鳥)  小林稔侍(黒藤次席家老)  中村玉緒(睦田夫人)  西岡徳馬(菊井大目付)  藤田まこと(睦田城代家老)   
 
【成分】笑える コミカル パニック 勇敢 かっこいい 江戸時代 時代劇
 
【特徴】時代劇の傑作「椿三十郎」のリメイク。リアルな江戸時代のホームレス素浪人三船敏郎から現代的なフリーターぽい素浪人織田裕二が特徴。
 全編にわたって、コミカルな雰囲気の中で迫力とリアリティある殺陣が素晴らしい。元の脚本が良いので面白い。前作より血飛沫描写は抑えている。
 
【効能】椿三十郎の飄々としたアウトローに安心感がある。右往左往する青年侍たちの青臭さに親近感。物語のテンポに爽快感。
 
【副作用】前作と殆ど変えていないので、リメイクの手抜きに見える。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。  
予想通りの駄作を覚悟したが・・。
 
 意外にもエンタメ娯楽佳作に仕上がっていることに驚いた。新春に家族そろって映画館で観たら楽しめる内容だろう。特に前作を知らず、時代劇をダサいと思って観ない観客層にはウケるのではないか。逆に前作の三船・仲代コンビの痛快重厚作品を知っている人間の多くは、薄味に感じてしまうかもしれない。

 それは丁度、田舎の味噌や醤油や蒲鉾などの味と香りに慣れた人間がいきなり都会のモノを食べたときのような味気ない感覚、ドイツやイギリスなどの濃いビールに呑みなれた人間が急に日本の薄い発泡酒を呑んだような感覚に近い。 
 逆に織田裕二氏の「椿三十郎」を観て面白いと思った人が前作を観たら、都会の人間が田舎のモノを食べて濃厚でナチュラルな味と香りに感動するか、あるいはクセの強さに敬遠してしまうかだろう。

 「作品」としては駄作ではない。むしろ「佳作」の域に達していると思う。前作を知らない人間は素直に冒頭から物語がテンポ良く展開する事に意表を突かれ、最後の山場まで飽きさせない事に惹き付けられるだろう。松山ケンイチ氏らのクソ真面目なコミカルさに微笑み、現代劇と変わらぬイメージで織田裕二氏が椿三十郎を演じている不思議な調和に魅力を感じ、豊川悦司氏との睨み合いと殺陣に迫力を感じ、中村玉緒氏のユックリとしたテンポに味わいを感じるだろう。
 個人的には、前作と同じく不自然にモミアゲが長い鬘を用いず、自毛の生え際を活かした鬘メイクにしてくれたのは嬉しかった。

 ただ、私の記憶に間違いがなければ、脚本は黒澤監督作をそのまま流用しているようだ。台詞だけでなく、カメラワークすら前作そのままのように見える。前作の完成度が高く、しかも巨匠の手による伝説の大ヒット痛快エンターテイメント時代劇なので、迂闊にいじる事ができなかったのかもしれない。

 それは角川春樹氏や森田芳光監督をはじめ制作者たちの英断であると同時に、技量の限界を暴露したものといえる。例えば「椿三十郎」の姉妹作ともいえる「用心棒」はハリウッドやイタリアなどでリメイクされたが、物語の基本展開と人物相関は踏襲しても西部劇にしたりギャング劇にするなど独自性を出している。それだけでなく随所に監督たちのセンスを前面に押し立てている。リメイクとは本来そういうモノではないか。(余談1)優秀な前作をそのまま流用すれば、制作者や俳優たちがよほど無能でない限り、その時点でそこそこの売れる作品にはなる。

 同じ脚本・同じ構図では、単に映像がカラーになり俳優が変わっただけ、と観てしまうファンも出てくるだろう。それならば前作をコンピューター処理で解析し瑞々しい天然色と透き通った音声にすれば済むことになる。もはや塗り絵の世界だ。
 あるいは制作者はそれを解っているからこそ、あえて織田裕二氏を現代劇のイメージに近い髪型で椿三十郎を演じさせたのか? 敢えて俳優たちに現代的な所作にしたのか? 時代劇の所作にしたら、それこそ前作をなぞっているだけになるので現代劇風は正解だ。

 素直に佳作として楽しめる作品であるのは認めるが、しかし黒澤監督作をシェイクスピアのような不朽の古典にしてしまうのはまだ早いと思う。思い切ったリメイクにしてほしかった。
 個人的な希望をいえば、織田裕二氏が室戸半兵衛になり、石黒賢氏を椿三十郎にすれば面白かったのではと思う。

(余談1)日本製のウヰスキー「山崎」や「白洲」の味に感動した人は、本場スコットランドのウヰスキーを味わってみるといいだろう。たしかに「山崎」「白洲」は素晴らしい味だが、スコッチほどの個性もクセも無いし、スコットランドでは「山崎」や「白洲」より安い値で多様な美酒に巡り合える事に驚くはずだ。つまり、日本のウヰスキーは技術的には「美味いスコッチ」を巧く再現している、という事である。
 
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆ 良
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆ 佳作

 
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