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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「戦艦ポチョムキン」 絶望から脱出しよう〔26〕

戦艦ポチョムキン」 あらゆる意味での金字塔
 
  

【原題】Броненосец «Потёмкин»
【英題】Battleship Potemkin
【公開年】1925年  【制作国】蘇連  【時間】66分  
【監督】セルゲイ・M・エイゼンシュテイン
【原作】ニーナ=アガジャーノ・シュトコ
【脚本】セルゲイ・M・エイゼンシュテイン
【言語】無声映画
【出演】アレクサンドル・アントノーフ(-)  グリゴリー・アレクサンドロフ(-)  ウラジミール・バルスキー(-)     
 
【成分】悲しい スペクタクル パニック 恐怖 勇敢 絶望的 ロシア革命 20世紀初頭 白黒 サイレント 
 
【特徴】レーニン率いる共産党政権が発足してまもなく制作された意欲作。当時としては画期的手法で描かれ、現代では映画の教科書のような扱いをされる金字塔である。日本漫画に例えたら手塚治虫氏にあたるのがエイゼンシュテイン監督だ。
 最近、デジタル補正で鮮明な画像となって蘇ったらしい。私はまだ古い劣化した画像しかみていないが。
 
【効能】圧政に立ち向かう名もなき水兵たちの姿に感涙し勇気をもらう。画面づくりやエキストラの使いかたは秀逸で映画を学ぶ人には最適の参考書。
 
【副作用】古い映画であり、サイレント映画的テンポと演技なので、感情移入できないかもしれない。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。  
映画の教科書 

 映画史で必ず登場する作品であり、基礎的な映画の技法を学ぶ際にはよく取り上げられる「教科書」がこの「戦艦ポチョムキン」である。

 公開は1925年、作品のモデルとなったのは1905年の黒海艦隊で起こった反乱事件(余談1)とサンクトペテルブルクで労働者のデモ行進を軍が銃撃制圧した「血の日曜日事件」だ。これら一連の事件を第一次ロシア革命と呼び、やがてレーニンらの組織的革命へと発展し、紆余曲折をへて1918年にロシア皇帝は処刑され1922年に共産党一党独裁のソビエト連邦が誕生する。いわばこの映画は共産党が天下を握った直後の作品であり、第一次ロシア革命から20周年の節目を記念して制作された。

 当然の事ながらロシア革命を肯定する内容であり、共産党のバックアップもあっただろうが、スターリン時代と違って初期の共産党政権では画期的な試みを許容する空気があった。この作品も様々な独創的な新機軸がとられている。
 他のレビュアー諸氏も言及されているが、モンタージュ技法の確立とオデッサの階段の場面の2つが代表的だ。モンタージュ技法の確立がどれだけ衝撃的かを判りやすく例えれば、日本漫画で手塚治虫氏が登場するのと同じくらいの影響力である。手塚漫画以前のストーリー漫画は基本的に上手下手の舞台を観客席から観た視点のみで描いたもので、クローズアップや場面の切り換えを多用して読む映画のようにしたのが手塚治虫氏で、現代日本漫画に与えた影響は計り知れない。「ポチョムキン」のエイゼンシュタイン監督もそれに匹敵する影響を後の映画に与えたのである。以前の映画もモンタージュ技法を使用していたとは思うが、基本的には舞台芝居の範疇だった。それを舞台芝居ではなく映画ならではの臨場感ある迫力を出したのがこの作品である。

 そして、最も有名な場面が、軍隊が横隊を組んで前進しながら民衆に対して小銃を発砲して(余談2)いき、逃げ惑う人々に悲痛な形相の母親が崩れるように倒れ、彼女の赤ん坊を乗せた乳母車が巨大なオデッサの階段を転げていく。この場面が後のケビン・コスナー氏主演「アンタッチャブル」で取り入れられたのは有名な話である。

 実際の反乱では同調する軍艦は僅か2艦程度で、反乱軍は投降し処刑もしくは流刑にされた。しかし物語はいたって単純で解りやすくハッピーエンドで終わる。戦艦ポチョムキンの反乱を鎮圧にやってきた艦隊が一斉に反乱軍に寝返り、サイレント映画なのに「ウラー!」と大群衆の歓喜の雄叫びが聞こえてきそうな迫力だった。
 因みにこのラストは、かわぐちかいじ氏「沈黙の艦隊」でも取り入れられた可能性がある。よく似た場面があるからだ。

 残念ながらショスタコビッチの交響曲はBGMに合わないと思う。

(余談1)池田理代子氏の漫画「オルフェイスの窓」の第3部でも紹介されている。
 「男たちの大和」を御覧になれば判るように、士官と下士官と水兵の格差は貴族・平民・奴隷のような隔たりがある。が、旧日本海軍が誇るべきことは諸外国の海軍に比べれば格差はまだ多少は小さい点である。なにしろ日本海軍ではゼロ戦パイロットの坂井三郎中尉の例もあるように水兵あがりの士官も少数ながら存在するが、諸外国の、それも帝政ロシア時代の海軍で水兵あがりの士官など皆無である。

(余談2)この映画をバックアップした共産党が新たな民衆への弾圧者として映画の帝政ロシア政府軍と全く同じ事を行なうのは皮肉である。
 

 
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆ 良
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆☆☆ 金字塔

 
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コメント

トラコメありがとうございました。

まさに映画の教科書というべき映画でしたね。

サイレント映画なのでセリフはないにも関わらず、セリフありの見慣れている現代の映画よりも非常に優れた演出と編集は見事の一言。

白黒映画でも永遠に色褪せない名作というべき映画でしたね。

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