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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「魍魎の匣」 不安と恐怖を楽しむ時に〔9〕 

魍魎の匣」 今度は阿部寛が主役
 


【公開年】2007年  【制作国】日本国  【時間】133分  【監督】原田眞人
【原作】京極夏彦
【音楽】村松崇継
【脚本】原田眞人
【言語】日本語
【出演】堤真一(中禅寺秋彦・京極堂)  阿部寛(榎木津礼二郎)  椎名桔平(関口巽)  宮迫博之(木場修太郎)  田中麗奈(中禅寺敦子)  黒木瞳(柚木陽子)  マギー(鳥口守彦)  堀部圭亮(青木文蔵)  荒川良々(安和寅吉)  寺島咲(柚木加菜子)  谷村美月(楠本頼子)  大森博史(寺田兵衛)  大沢樹生(増岡則之)  右近健一(雨宮典匡)  清水美砂(中禅寺千鶴子)  篠原涼子(関口雪絵)  宮藤官九郎(久保竣公)  柄本明(美馬坂幸四郎)     
 
【成分】笑える ファンタジー ゴージャス 不思議 不気味 勇敢 知的 かわいい ミステリー SF 第二次世界大戦末期~1952年 
 
【特徴】京極シリーズ映画化第二弾。前回に引き続き堤真一氏・阿部寛氏・宮迫博之氏・田中麗奈氏・荒川良々氏が出演。前回のオカルトチックな内容からガラリと雰囲気が変わり、SFちっくなアクションになっている。
 京極堂が新興宗教教祖を論破する場面はなかなか痛快、制服姿の寺島咲氏と谷村美月氏はまるで夢野久作の「少女地獄」ぽくて幻想的。全般に画像は美しい。
 
【効能】知的好奇心をくすぐられる。
 
【副作用】京極堂が三枚目的で不満が発生する可能性あり。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。  
努力賞及第作。
 
 佳作ではないが、努力賞モノの及第作である。佳作とは思えなかったのは、前作「姑獲鳥の夏」は間違いなくミステリー映画の体であり、超常現象と思えた妖しい現象や事件も見事に常識を超えない現象として論理的に説明できるドンデン返しに面白みがあったが、この「魍魎の匣」にはミステリー映画の面白さは無く、出演者の顔触れから誰が犯人なのかは予測でき、物語も一見すると時系列を奇を衒った組み方をして難しく見せているが実は単純で、佳境の盛り上がり方やラストも予測できる。たぶん、多くの原作ファンにとっては好ましくない映画化だったのではないかと思う。

 しかし駄作とは決め付けず及第作としたのは、千数百ページにおよぶ長編原作をよく2時間強の映画にまとめた事である。当然のことながら原作と映画は別物である。原作ファンにとって嫌なのは「映画化」という名のもとの矮小化であり、これはどんな名画に仕上がってもついてまわる感情だ。これを克服するには、制作者側の努力だけでなく鑑賞者側も割り切って譲歩することも必要かもしれない。

 私は矮小的改編は許容の範疇であり妥当だと思う。2時間前後の映画枠に収めるのは難しいはずだし監督たちは四苦八苦しただろう。かといって原作を「損なわず」に3・4時間枠にすると、歴史超大作や戦争スペクタクルでもない限り世間は退屈してしまう。ミステリーや伝奇モノでもホームズやポアロのように古典化して世間に広く定着し史実の偉人と同格かそれ以上に扱うマニア層が世界市場を形成するほど分厚く存在するのであれば話は別だが、いくら大ベストセラーで日本推理作家協会賞やメフィスト賞(余談1)を背景にしても京極堂はまだ新参者である。

 前作は実相寺監督が担当していたが、残念ながら逝去されてしまった。原作者は実相寺監督のファンらしいので御健在ならこの作品も担当されていた可能性がある。今回は監督業よりも「ラストサムライ」や「スピリット」で英語を話す怪しい日本人役が有名な原田眞人氏だ。キャスティングは「関口君」以外はほぼ前作から引き継いでいるが、キャラクター解釈に若干の変更があったので少しイメージが変わって見える。
 もっとも顕著なのは、前作ではコミカルなムードを漂わせていた榎木津礼二郎がシリアスになり、逆に孤高の思索家京極堂が笑いを誘うことをやってしまう。ボーイッシュを強調しすぎて昭和20年代では浮き過ぎていた京極堂の妹敦子が時代考証に即した姿に修正された。(余談2)
 
 私が気に入った場面は、京極堂が新興宗教団体の本部に乗り込んで教祖を論破し平伏せしめるところだ。私も学生時代に面白がって宗教の勧誘員によく論戦を絡めたものだ(よっぽど暇だったんだな)が、最も効果的な論破は最初から相手を威圧してかかるのではなく、堂々としながらも相手の顔を立てながら懐に入り込み、相手を上回る知識と論理でもって相手の土俵で相手の得意技でねじ伏せる。相手は論破されただけでなく、下手をすれば私を新たな教祖と見なして寄りかかられる場合があるので気をつける必要がある。(余談3)
 作中でなんと学生時代の私が使っていた同様の論法を京極堂がやっていたのに一番驚いた。

(余談1)メフィスト賞はたしか京極堂のおかげて創設されたと思う。例えは不適切かもしれないが、後藤久美子氏が12歳で大ブレイクしたのをきっかけに日本美少女コンテストが創設されたのと似ている。両者も独特の世界を世間に紹介し大きく広め一つのジャンルを確立したことでは共通している。
 なぜ後藤久美子氏を連想したのかといえば、作中では宝塚歌劇の男役のような話し方をする中学生の美少女加菜子が登場する。戦前の御嬢様学校風の制服姿で材木置き場をよじ登ってエスケープする様は、12歳当時のゴクミが演じていたら寺島咲氏よりもマッチしただろうなと思ったからだ。容姿だけでなく声の質や話し方や後の結末などを考慮するとゴクミのほうが適役だ。もしゴクミが20年遅く産まれたら、加菜子役は彼女だったろう。

(余談2)10数年前、職場の友人から京極夏彦氏の作品を薦められた。作品に登場する古本屋の店主が私にそっくりと言うからだ。どうせエロ親父だろうと思って読んだら、なんて格好良いキャラクターなのだ。私は過大に評価されていたのか。確かに私の普段着は着物(作務衣)で、家には本が沢山あるが難しい本だけでなく女性の水着写真集もある。毛沢東語録の隣にはゴクミ語録を立てている。

(余談3)一番いいのは最初から関わらず無視するのが一番。
 
晴雨堂スタンダード゜評価
☆☆☆ 良
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆ 凡作

 
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姑獲鳥の夏 プレミアム・エディション [DVD] 実相寺昭雄
 
晴雨堂関連書籍案内
魍魎の匣―文庫版 (講談社文庫) 京極夏彦
文庫版 姑獲鳥の夏 (講談社文庫) 京極夏彦
 

 
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今週は平日連休が取れたので、シネコンはしごでもう2本。 その1本目。 ヤケに難しい漢字ばっかり使う京極夏彦原作の映画化第二弾。 第一弾の「姑獲鳥の夏」も劇場鑑賞したけど、記憶薄っ。
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