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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「赤穂城断絶」 ストレス解消活劇〔44〕 

赤穂城断絶」 
正統忠臣蔵、お正月映画に最適
 
 


【英題】The Fall of Ako Castle or Swords of Vengeance
【公開年】1978年  【制作国】日本国  【時間】160分  【監督】深作欣二
【原作】高田宏治
【音楽】津島利章
【脚本】高田宏治
【言語】日本語
【出演】萬屋錦之介(大石内蔵助)  千葉真一(不破数右衛門)  松方弘樹(多門伝八郎)  渡瀬恒彦(小林平八郎)  森田健作(間十次郎)  西郷輝彦(浅野内匠頭)  江波杏子(浮橋)  丹波哲郎(柳沢吉保)  岡田茉莉子(大石りく)  三船敏郎(土屋主税)  金子信雄(吉良上野介)  芦田伸介(色部図書)     
 
【成分】笑える スペクタクル パニック 勇敢 かっこいい 忠臣蔵 元禄時代 17世紀後半 江戸時代 時代劇  
 
【特徴】伝統的な忠臣蔵を迫力ある映像で撮影。大石内蔵助は昼行灯のかけらもない威風堂々、吉良上野介は如何にも憎たらしいキャラ。
 千葉真一氏の不破数右衛門は野性的原始人的魅力満載で楽しい。
 
【効能】大晦日やお正月で家族団欒のひとときに鑑賞するとムード万点。
 
【副作用】時代考証や史実にこだわる人には不快感。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。  
ソニー千葉の怪演が素敵

 近年の忠臣蔵は、史実を意識した解釈でリアルな物語を組んでいる。悪役の吉良上野介は実は常識人の名君で、田舎のお坊ちゃま大名浅野内匠頭に逆ギレされたとか、主人公大石内蔵助は本当に昼行灯で、部下からの突き上げて止む無く討ち入りを行なったとか。
 討ち入り時の装束も伝統的な歌舞伎仕様の派手な制服ではなく、地味な火事場装束(余談1)でもちろん騒々しい陣太鼓などは鳴らさない。
 吉良の最期も、けっして見苦しく高い官位をひけらかせて恫喝したり命乞いをしたのではなく、武士の端くれとして太刀を抜いて闘い、満身創痍で倒れてとどめを刺されたとか。(余談2)

 しかし、この作品は昔ながらの様式美とエンターテイメントの忠臣蔵である。萬屋錦之介氏の大石内蔵助は実に堂々としていて威厳がある。城代家老どころか将軍様のような威圧感がある。こんな家老が大将なら討ち入りにはもっと大勢の家臣が参加していたかもしれないし、ひょっとしたら討ち入りせずとも御家再興できたかもしれない、と思うくらい立派な存在感である。
 敵役の吉良上野介は名悪役の金子信雄氏がふてぶてしくて見苦しくて憎たらしい定番通りの伝統的な吉良を存分に演じる。

 萬屋錦之介氏とは対極の泥臭いキャラを演じるのは、2007年NHK大河ドラマ「風林火山」の板垣信方役を最後に「アクションスター千葉真一」からの引退(余談3)を表明した千葉真一氏の不破数右衛門だ。
 不破といえば100石どり(資料によっては200石)の浜奉行で、浜奉行といえば有名な赤穂の塩でも判るように赤穂藩の財政を支える重要な産業を統括する役所である。つまり不破は若輩ながらも重臣の末席に位置する人物なのだが、千葉真一氏の不破はどうみても近寄ると噛みつかれそうな挙動不審の原始人だ。史実の不破は赤穂藩取り潰し前に藩主内匠頭の不興を買って浪人になっているので、風体がホームレス風なのはわかるが。どう観てもボロをまとった剣客というよりは野人そのものだ。
 千葉真一氏の不破は吉良邸で小林平八郎(余談4)に扮する渡瀬恒彦氏と仁侠映画のような激闘を繰り広げて作品を盛り上げる。

 もう1つの魅せ場はサイドストーリーとして近藤正臣氏扮する汚れ役の橋本平左衛門、若手の武士で誰よりも勇ましく強硬論を唱えていたが、落ちぶれて女と心中する。ただ、史実の橋本平左衛門はまだ20歳になっていない少年なので、当時の郷ひろみ氏あたりのアイドル歌手か俳優を据えても良かったのではないか。松の廊下事件で人生が暗転する悲劇の少年武士の思春期にありがちな堕落と破滅が強調され、絢爛の元禄文化にマッチして良かったろうに。いくら近藤正臣氏が童顔でも、ちょっと苦しい。

 冒頭の裃を着た大勢の武士たちが門外で騒然とする様は、TVドラマではなかなか出せない迫力、そして城代家老の御前で集会をするとき家臣全員が一斉に気勢をあげたり、一斉に泣き出す様は、まさに芝居の伝統美? 昔ながらの忠臣蔵を存分に映画というキャンバスで描きまくった作品である。寒い正月にピッタリの熱いエンタメ時代劇だ。

(余談1)火事場装束とは、今でいう消防服である。赤穂藩は大名火消しとして江戸市中の消防活動をしていた時期がある。

(余談2)幕府の検死報告書には、吉良上野介には致命傷にはならない無数の傷があったという。

(余談3)どうやら俳優業からの完全引退ではなさそうだ。

(余談4)150石取りの家臣、吉良家では大身である。よく誤解されるが吉良家は大名ではなく4000石程度の旗本である。領地を持った旗本であり、官位は従四位上左近衛権少将と10万石クラスの国持ち大名なみの家格を誇る。
 しかしあくまで旗本で大名ではないので本来は忠臣蔵のように大勢家臣を持てる経済力は無い。150石は高級旗本の家臣としては執事か用人クラスだ。赤穂の旧家臣団の討ち入りを警戒して、大勢警備の武士を雇っていた話はある。
 
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆ 良
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆ 佳作

 
晴雨堂関連作品案内
大忠臣蔵 [DVD] 大曽根辰保
NHK大河ドラマ 峠の群像 [DVD] 緒形拳主演
忠臣蔵(2巻組) [VHS] ビートたけし主演

晴雨堂関連書籍案内
赤穂城断絶 (1978年) 高田宏治
逆説の日本史 14 近世爛熟編文治政治と忠臣蔵の謎 井沢元彦
忠臣蔵―刀傷松の廊下から吉良邸討ち入りまで完全CG再現 (双葉社スーパームック CG日本史シリーズ 12)


 
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トラックバック、ありがとうございます。
私もお返し登録したかったのですが、やり方がよくわからず...。
今、職場なので家に帰ってやってみます。

千葉ちゃんのホームレス状態、おかしかったですよね。「四十七人の刺客」の時は岩城光一がまともな不破を演じてましたよ、たしか。
千葉ちゃんにはあれが似合ってましたけど。(笑)
近藤正臣はけっこう好きです。いまじゃすっかりシルバー世代ですね。
[ 2010/10/11 13:21 ] [ 編集 ]
A君へ
 
 トラックバックの仕方、簡単ですよ。改めてメールで教えます。

> トラックバック、ありがとうございます。
> 私もお返し登録したかったのですが、やり方がよくわからず...。
> 今、職場なので家に帰ってやってみます。
>
> 千葉ちゃんのホームレス状態、おかしかったですよね。「四十七人の刺客」の時は岩城光一がまともな不破を演じてましたよ、たしか。
> 千葉ちゃんにはあれが似合ってましたけど。(笑)
> 近藤正臣はけっこう好きです。いまじゃすっかりシルバー世代ですね。
[ 2010/10/20 23:57 ] [ 編集 ]
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