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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「明日に向って撃て!」 自分に喝を入れたい時に〔24〕 

明日に向って撃て!
ロバート・レッドフォードの出世作

 


【原題】BUTCH CASSIDY AND THE SUNDANCE KID
【公開年】1969年  【制作国】亜米利加  【時間】112分  
【監督】ジョージ・ロイ・ヒル
【音楽】バート・バカラック
【脚本】ウィリアム・ゴールドマン
【言語】イングランド語 一部スペイン語
【出演】ポール・ニューマン(ブッチ・キャシディ)  ロバート・レッドフォード(サンダンス・キッド)  キャサリン・ロス(エッタ)  ストローザー・マーティン(パーシー・ガリス)  クロリス・リーチマン(アグネス)  ジェフ・コーリイ(ブレッドソー保安官)  ヘンリー・ジョーンズ(バイクのセールスマン)     
 
【成分】泣ける 笑える 楽しい 悲しい 勇敢 絶望的 切ない かっこいい コミカル 強盗 アメリカ 南米  
   
【特徴】実在した西部で有名な強盗犯2人組の物語。常に深刻な状況を綱渡りで命をつなげながら陽気で明るい。破滅的な人生を最期まで掛け合い漫才をやりながら絶望的状況を突破しようとする2人の姿は切ない。
 
【効能】常に明るい2人に勇気付けられ、ラストの勇姿に涙する。
 
【副作用】自堕落な犯罪者の物語に同情できない。「俺たちに明日はない」の二番煎じ的映画に見え混同する。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。  
絶望の中を楽天的に生きる2人。 

 ささやかな思春期ファンタジー「リトル・ロマンス」の冒頭シーンで、主人公の男の子が映画を観ている。スクリーンに映しだされているのが、「明日に向って撃て!」で有名な場面、断崖絶壁に追い詰められたブッチ(ポール・ニューマン氏)とサンダンス(ロバート・レッドフォード氏)。「飛び降りて逃げよう」「いやだ、俺は泳げない」「ガハハハ」といった具合に2人は掛け合い漫才をやり、決意を固めると存外アッサリと飛び込む。
 この場面を観た中学生の頃、他人事ながら著作権は大丈夫なのだろうかと気になったが、調べてみると監督が同じだったので納得した。(余談1)

 アメリカン・ニューシネマは60年代後半頃から70年代半ばまでに制作された映画群を指し、ベトナム戦争やそれにともなう国力の疲弊と国内外の政治的な激変などに影響されている。だからこの時代の作品に共通するキーワードは「反体制」「絶望の中の陽気さ」「体制によって簡単に捻り潰される個人」などだ。中でも顕著な内容の作品が、カップルで銀行強盗をやる「俺たちに明日はない」、アメリカ南部をラフな格好でツーリングしていると村人に襲われる「イージーライダー」、そしてこの作品だ。(余談2)

 主人公2人の生活は常に綱渡りの生活で、絶望と緊張のただ中にあるにも関わらず、陽気で最期まで掛け合い漫才を続ける。彼らにとって最も幸福な時期は、サンダンスの恋人エッタを加えて南米へ逃避行をする道中だろう。ノンビリとした船旅、新天地ボリビアに思いをはせながら皮算用、3人ドレスアップして記念撮影、ボリビアでの生活に備えて学校の教師だったエッタからスペイン語を習うブッチ、それを邪魔するかのようにエッタの身体を求めるサンダンス、もちろんサンダンスにはスペイン語を習う気は全く無い。

 ボリビアは非常に貧しい国であてがはずれる。それでも強盗から足を洗い堅気の用心棒として就職するが、雇い主が殺されてやむを得ず元の銀行強盗に逆戻り。2人の最期は明るい南米の陽射しの下オープンカフェでランチを食べていたら警官隊に包囲されいきなり狙撃される。切羽詰った状況なのに「ここは飯の代わりに弾を食わせるのか」と冗談を言い、サンダンスの百発百中の射撃で警官隊を撃ち倒し、建物に立て篭もる。
 
 ボリビア警察は手強い2人のアメリカ人強盗犯に対抗すべく軍隊に出動を要請、一個中隊(余談3)規模の部隊が建物を攻囲して歩兵たちは一斉射撃の体制に入る。そんな大袈裟なことになっているとも知らず、ブッチとサンダンスは呼吸を整え傷の痛みを紛らわすかのように、いつもの掛け合いのボヤキ漫才をはじめる。「今度はオーストラリアへ行こう、あそこなら俺たちが外人だとは判らないから」「お前のいう事はいつもあてにならん」。
 2人は何度も窮地を脱出してきたが、たぶん今回もいつものように意を決して強行突破をはかろうと拳銃を乱射しながら外へ飛び出し画面はそこで静止する。続いて軍隊の一斉射撃の大音響、画面はセピア色へと褪せて物語は終わる。映画史上に残る名ラストであり、まさに邦題「明日に向かって撃て!」に相応しい。

 中高生の頃はこの「明日に向かって撃て!」とウォーレン・ビューティ氏主演の「俺たちに明日はない」とをよく間違えた。タイトルの音韻が似ているし、両方とも2人の銀行強盗犯が主人公だし、悲劇的最期をとげるのも同じだ。しかも原題も「俺たち・・」は「ボニーとクライド」と2人の主人公の名前を、そして「明日に・・」も意訳すると「ブッチとサンダンス」でこれも主人公2人の名前がタイトルだ。
 「明日はない」に対してこれを「明日に向かって」とした邦題のライターは作品の内容や背景などを良く理解している。素晴らしい邦題だ。

(余談1)しかし21世紀初頭の現代では難しいだろう。たとえ監督や作者が同じでも、様々な個人や会社が参画する共同事業体のようなもので制作するのが映画だ。同じ事をやろうとしたら、関係者と合意をとるのに煩雑な手続きと高額な手数料がかかるかもしれない。

(余談2)時代の雰囲気をポップスに例えると、ビートルズが清潔そうな背広姿をやめて髭面ヒッピースタイルになっていく頃から、レッドツェッペリンやジミー・ヘンドリックス氏やエアロスミスなどのハードロック勢の興隆まで。
 絶望的な環境の中で絶望的な前途が見えているはずなのに楽天的な主人公たちがニューシネマの特徴と私は思うが、多くの映画ファンが指摘しているように70年代後半に入って「ロッキー」が一種のハッピーエンドに終わったことからニューシネマも終焉、反体制色が薄らぎ希望を与える作風が主流を占める。

(余談3)一個中隊は100人前後。
 
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆☆ 優
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆☆ 名作

 
【受賞】アカデミー賞(脚本賞)(1970年) ゴールデン・グローブ(音楽賞)(1969年)
  
晴雨堂関連作品案内
リトル・ロマンス [DVD] ジョージ・ロイ・ヒル
俺たちに明日はない [DVD] アーサー・ペン
イージー★ライダー [DVD] デニス・ホッパー 

晴雨堂関連書籍案内
明日に向って撃て!―映画で身につけるいきいき英語表現 (MOVIE SCRIPT映画で英語!) ウイリアム・ゴールドマン
ザ・ウェスタン―「荒野の決闘」から「新・明日に向って撃て!」 西部劇大全集 (1979年) (シネアルバム〈75〉) 畑暉男
 

 

 
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(1969/ジョージ・ロイ・ヒル監督/ポール・ニューマン、ロバート・レッドフォード、キャサリン・ロス)
[2009/06/22 13:50] テアトル十瑠
管理人の承認後に表示されます
[2009/06/22 16:00]
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