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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「チャップリンの独裁者」 家族と一緒に感動しよう〔10〕 

チャップリンの独裁者
チャップリン渾身の反戦喜劇大作。



 
【原題】THE GREAT DICTATOR
【公開年】1940年  【制作国】亜米利加  【時間】126分  
【監督】チャールズ・チャップリン
【音楽】メレディス・ウィルソン
【脚本】チャールズ・チャップリン
【言語】イングランド語
【出演】チャールズ・チャップリン独裁者アデノイド・ヒンケル/ユダヤ人の床屋)  ポーレット・ゴダード(ハンナ)  ジャック・オーキー(ベンツィーニ・ナパロニ)  レジナルド・ガージナー(シュルツ中佐)  ヘンリー・ダニエル(ガービッチ内相兼宣伝相)  ビリー・ギルバート(ヘリング元帥)       
 
【成分】泣ける 笑える 楽しい ロマン 勇敢 知的 切ない かわいい かっこいい コミカル 第二次大戦
    
【特徴】晴雨堂の中では、「ライムライト」とならんでチャップリン渾身の代表作である。
 「モダンタイムス」以降、チャップリンの作風は反体制に傾いていく。本作も実は反体制的作品だ。今でこそナチスドイツ=悪の帝国という図式が定着しているが、当時のアメリカ世論はナチスよりソ連が悪の帝国だった。
 
 本作はいろんな象徴的意味合いがある。1つはチャップリンといえばチョビ髭放浪者という独特のキャラクターが記号化しているが、本作を最後に放浪者チャーリーは登場しなくなる。
 また当時は既にトーキー映画の時代に入って久しいが、チャップリンはサイレントの喜劇にこだわってトーキーに本格的参加はしなかった。「モダンタイムス」はトーキーを取り入れているがチャップリン本人は台詞を発声しない。ところが本作では本格的に台詞を話す。
 その台詞で最も有名なのはラストの演説シーンである。ユダヤ人迫害の事実を知って急遽差し替えたラストだ。チャップリンはサイレント時代の喜劇役者の仮面を脱ぎ捨て、全世界の観客に向け自分の声で反戦を訴える。
  
【効能】絶望的な時代でも明るく生きる力が沸いてくる。反戦平和の教材になる。
 
【副作用】喜劇として笑いを楽しめない。今までの明るいチャップリンではなく退屈。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。  
ついにチャップリン、トーキー映画に出演
 
 「モダンタイムズ」に続くチャップリン氏の体制批判色濃厚作品である。今回の批判対象は当時のヒトラー政権、結果的に興行的大成功を収め、後年の「ライムライト」とともにチャップリン氏の映画人生を代表する大作である。
 ただし後で述べる事情によりアメリカの保守派層からは嫌悪され、作品やチャップリン氏の考え方への非難は少なからずあった。今でこそヒューマンな大作として評価が固定されているが、当時は賛否あったのである。

 チャップリン氏はれいによって監督・制作・脚本・主演の4役を兼務し、いつもの山高帽にステッキのホームレス紳士スタイルで登場する。(余談1)ヒロインには「モダンタイムス」でも共演した内縁関係のポーレット・ゴダート氏が務める。チャップリン氏はサイレント映画にこだわり前作「モダンタイムス」でもトーキーは部分的に取り入れただけだった。ところがこの「独裁者」は初めて積極的に自分の肉声を披露した映画であり、ラストで聴衆に自由・平等・平和をを訴える長い演説は映画史に残る名演説である。
 この作品をもってチャップリン氏はホームレス紳士スタイルをやめ、体制批判色の傾向をさらに強めていく。


 予備知識無しで観ても十分面白い作品なのだが、やはり以下のことは把握したほうがチャップリン監督の意気込みが伝わって良いだろう。

・当時のドイツは破竹の勢いでポーランド・フランス・北欧を勢力下に収めていった。チャップリンの生まれ故郷である島国イギリスは占領を免れたがドイツ空軍の大規模な空襲を受けていた。空軍兵力だけによるドイツ軍の攻撃は結果的に失敗するが、イギリスの市民に与えた恐怖は大きい。

・当時はまだ「大量虐殺」は無かったが、ドイツ国内やドイツ占領地でのユダヤ人に対する迫害が顕著になっていた。このあたりの描写を詳しく描いている映画で最近ではロマン・ポランスキー監督「戦場のピアニスト」が有名。
 因みにチャップリン氏は、撮影開始当初ではユダヤ系の友人から迫害のことは知っていたが、その酷さがどの程度のものかはまだ知らなかった。撮影も佳境に入ってきた頃に「けっこうヒドイ事になっているらしい」と知ると急遽ラストシーンをオチャラケた大団円から有名な演説に差し替えたらしい。さらにホロコーストを戦後になって知り、知っていたら映画にはできなかった旨の発言をしている。

・「独裁者」公開の時点ではアメリカはまだドイツに宣戦布告はしておらず、ヨーロッパの戦火を対岸の火事のように静観していた。それどころか保守系はナチスドイツよりもソ連の台頭の方が脅威だった。このあたりはロバート・ダウニー氏主演「チャーリー」にも出ている。兄がチャップリンの映画企画に対して「誰がヒトラーの映画なんて観るんだ!」と罵ると、チャップリン氏は「俺が観たいんだ!」と怒鳴る場面は有名だ。

・チャップリン氏とヒトラーは誕生日が4日ほどしか違わない同い歳・同世代人である。(余談2)
 ヒトラーは映画好きで当然のことながらチャップリン氏の喜劇も観ていた。一説によると大衆に人気のある放浪者チャップリンのイメージを意識して親しみやすいチョビ髭政治家スタイルを確立したとも言われている。(余談3)
 一方、チャップリン氏の「独裁者」ぶりも、後に数多く制作された戦争映画に登場するヒトラー像に強い影響を与えた。

 以上のことを踏まえて映画を観れば、チャップリン氏の思い入れと気迫が伝わってくるだろう。現職の国家元首であるヒトラーを徹底的に茶化し非難している事が明々白々で解りやすい映画である。
 チャップリン氏の喜劇全体に言えることだが、実際の日常であれば堪らなく惨めで悲惨なのに、彼の手にかかれば深刻な状況から悲壮感が無くなるのである。そしてチャップリン氏は悲壮感を知り尽くしているからこそ悲劇を喜劇に描き換える事ができるのだ。これが彼の喜劇の優れたところだろう。

 ラストの演説場面は現在もなお賛否ある。それは彼が敢えて喜劇役者の仮面をはずしてマジで演説したからだ。私は「喜劇役者」「喜劇」の枠から逸脱してまでも語りたかった事に耳を傾けてほしい。語りかける口調から盛り上がる過程はリズムよく、さすが作曲家でもあるチャップリン氏、名演説だ。

(余談1)ただし、今回は多忙で作曲は別の人に任せている。

(余談2)聞くところによると、ヒトラー本人も「独裁者」を鑑賞したそうである。反応は不明だが。

(余談3)第一次大戦時は左右にピンと尖ったカイゼル髭を蓄えていたが、終戦後に軍の職員として乱立する新党の調査をしているときに、黎明期の某ナチス党員の髭を真似たともいわれている。こういう「歴史的事実」は幾つも解釈と説があるものだ。
 

 
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆☆☆ 秀
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆☆☆ 金字塔

 
【受賞】NY批評家協会賞(男優賞)(1940年)


   

 
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