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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「白い恐怖」 カップルで癒されたい時に〔12〕

白い恐怖
素敵な姉さん女房

 


【原題】SPELLBOUND
【公開年】1945年  【制作国】亜米利加  【時間】111分  
【監督】アルフレッド・ヒッチコック
【原作】フランシス・ビーディング
【音楽】ミクロス・ローザ
【脚本】ベン・ヘクト アンガス・マクファイル
【言語】イングランド語
【出演】イングリッド・バーグマン(コンスタンス・ピーターソン)  グレゴリー・ペック(J.B)  レオ・G・キャロル(-)  ジョン・エメリー[役者](-)  ウォーレス・フォード(-)  ロンダ・フレミング(-)  マイケル・チェコフ(-)       
 
【成分】ゴージャス ロマンチック パニック 不気味 知的 かっこいい 心理ミステリー 40年代
    
【特徴】ヒチコック監督には珍しい純愛ロマンス。
 まだスキャンダルに晒されていない頃の美貌と演技が充実したイングリット・バーグマン氏と映画デビューして間もないグレゴリー・ペック氏が主演。
 当時としては最新の心理学を扱ったサイコ・サスペンスであり、夢の世界のデザインをシュールリアリズム画家サルバドール・ダリ氏が担当したことでも知られている。。
 ただ、当時はまだ心理学が一般に普及認知されていなかったため、現代人の我々が観ると台詞に説明臭さを感じるかもしれない。
 
【効能】ラストで爽快感に包まれる。バーグマンの姉さん女房的キャラに甘えたくなる。
 
【副作用】サイコ物にしては捻りが無く拍子抜け。ヒチコックにしては薄味感。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。  
ヒッチコックらしくないラブロマンス。
 
 ヒッチコック監督といえば「サイコ」に代表されるようにサスペンスとホラーと猟奇が合わさった恐怖のイメージが強い。その象徴が金髪美人の絶叫である。ところが、この作品には珍しく絶叫したり取り乱したりする金髪美女は登場せず、非常に大人しい作品だ。しかも、ヒッチコック監督の作風としては異色のラブロマンスである。カップルで観に行ってもよい爽やかな作品だ。

 猟奇的で精神に異常をきたしていそうな人物を「ローマの休日」の頃よりも若いグレゴリー・ペック氏が演じているが、「アラビアのロレンス」「将軍たちの夜」のピーター・オトゥール氏ほど迫力が無い。落第点にはならない程度の演技に見えた。(余談1)
 対して、贔屓目かもしれないが「誰が為に鐘は鳴る」よりやや落ち着いた主役のイングリット・バーグマン氏の説得力には感動した。理知的で冷静な面もちの奥に激しく熱い情熱を閉じ込めたような精神科医師役を見事に好演。最初は眼鏡をかけた典型的なダサい秀才型キャリアウーマンタイプで登場させ、次第に華やかな容姿へと変化させる演出もスタンダードながら説得力がある。実年齢もバーグマン氏のほうがグレゴリー・ペック氏より上だが、役柄の性格も手伝って実に頼もしい姉さん女房のようなキャラ、私は「誰が為に・・」のマリア役よりも好感をもっている。

 グレゴリー・ペック氏は病院長殺しの容疑をかけら精神異常の兆候のある謎の人物を演じ、イングリット・バーグマン氏は恋人として医者として彼の無実を一貫して信じ続け、ついに病気を治し容疑も晴らし事件を解決して、2人は爽やかな笑顔で新婚旅行に出かけるという物語だ。(余談2)
 良質なラブストーリーだが、実にヒッチコック監督らしくない映画。監督本人もたしかラブロマンスはあまり好きではなかったと思うが。ただ、当時としては新機軸があった。それは第二次大戦中から研究が盛んになってきた心理学や精神分析の世界である。もっとも現代の我々にとっては素人でも知っているような一般常識と化したものばかりなので、古さと陳腐さを感じてしまう。また、当時はまだ専門的な知識だったためか、おそらく脚本家も苦労したとは思うが、現代の私たちなら説明の必要の無いところまで俳優に解説をやらして衒学的にテンポを悪くしている。また、当時の観客にはついてこれないと判断されてカットされた場面も多いと聞く。特にシュールレアリズム画家のサルバドール・ダリがデザインした夢の世界が大幅に犠牲になった。(余談3)

(余談1)顔立ちが骨太でシッカリしているので大人びて見えるが、まだ30前、映画俳優としては新人だ。バーグマン氏は彼より一つ歳上。

(余談2)この映画を観たとき子供心に後日談を想像した。確実にかかぁ天下になるだろう。手術中にペック氏がパニックになったらビンタして励ましたり、医療ミスで記者会見するときはペック氏は俯いて黙りこくり、隣でバーグマン氏が記者たちを論破する、そんな光景を想像した。

(余談3)高校時代はダリの絵が好きで、82年の大阪大丸百貨店で催されたダリ展には2回行った。当時、小遣いに余裕が無かったので画集を買えなかったのが惜しい。
 因みに同じ前衛画家とみられているピカソは左翼側・人民側の論調で、ダリは右翼側でヒトラーに好感を持っていた。ダリが書いた「天才の日記」には、ピカソの想像力を貧相と扱き下ろしている。

 

 
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆☆ 優
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆ 佳作

 
【受賞】アカデミー賞(劇・喜劇映画音楽賞)(1946年) NY批評家協会賞(女優賞)(1945年)
 
晴雨堂関連作品案内
白い恐怖 ~ミクロス・ローザ作品集 サントラ
 
晴雨堂関連書籍案内
ヒッチコックに進路を取れ 和田誠
天才の日記 (1971年) サルバドル・ダリ
ダリ―シュルレアリスムを超えて (「知の再発見」双書) ジャン=ルイ ガイユマン
魔夜峰央の「ダリ的魔法術」 魔夜峰央


 
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