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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「アメリカン・ギャングスター」 自分に喝を入れたい時に〔25〕 

アメリカン・ギャングスター
知性と凶暴性のデンゼル

 


【原題】American Gangster
【公開年】2007年  【制作国】亜米利加  【時間】157分  
【監督】リドリー・スコット
【音楽】マルク・ストライテンフェルト
【脚本】スティーヴン・ザイリアン
【言語】イングランド語
【出演】デンゼル・ワシントンフランク・ルーカス)  ラッセル・クロウ(リッチー・ロバーツ)  キウェテル・イジョフォー(ヒューイ・ルーカス)  キューバ・グッディング・Jr(ニッキー・バーンズ)  ジョシュ・ブローリン(トルーポ刑事)  テッド・レヴィン(ルー・トバック地方検事)  アーマンド・アサンテ(ドミニク・カッターノ)  ジョン・オーティス(ジェイ・リヴェラ)  ジョン・ホークス(フレディ・スピアマン)  カーラ・グギーノ(ローリー・ロバーツ)  RZA(モーゼス・ジョーンズ)  ルビー・ディー(ママ・ルーカス)  コモン(ターナー・ルーカス)  ライマリ・ナダル(エヴァ)  ロジャー・グーンヴァー・スミス(ネイト)    
      
【成分】勇敢 知的 切ない かっこいい ギャング 60年代末
      
【特徴】暑苦しくて汗臭い70年前後の風俗を忠実に再現。デンゼル・ワシントン氏が冷徹で完全主義者のフランク・ルーカスを好演。ラッセル・クロウ氏の少しくたびれた中年刑事も味がある。2時間半の大作だが、長さを感じさせない。
 
【効能】善い悪いは別にして、異なる2人の主人公からビジネスの基本精神を学べる事ができる。
 
【副作用】暑苦しい、汗臭い。名作「ゴッドファーザー」より軽めに感じる。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。  
大作のようで大作でない不思議な映画。
 
 不思議な映画だった。2時間半強の長編映画、伝説の麻薬王フランク・ルーカス(余談1)の半生、デンゼル・ワシントン氏とラッセル・クロウ氏の大物俳優を主役に起用、監督はリドリー・スコット氏、一見すると重厚な超大作を連想してしまう。具体的にいえば「ゴッド・ファーザー」のような重厚さだ。

 ところが蓋を開けて観ると、軽快なテンポで話が展開するので長編映画とは思わせない。同監督が数年前に手掛けた「キングダム・オブ・ヘブン」のほうが長編大作にみえる。しかもこの作品は今回のよりも10分ほど短い。また作品の重みというか手応えでいえば2時間弱の「エイリアン」や「ブレードランナー」のほうが強烈だ。

 原因として好意的に言えば監督の優秀な構成力のおかげだろう。
 軸としては、デンゼル扮する麻薬王の物語にやや重心を置きながら、ラッセル扮する不器用でクソ真面目な刑事の物語を同時進行させる。そして2人の共通の敵としてジョシュ・ブローリン氏扮する野卑な悪徳警官トルーポを絡め三竦みの対立構造で輪郭を形作っているのが良い。デンゼルとラッセルが相対するのはラストの残り半時間弱、大半は交互に場面が切り替わりながら別々に物語が進行し、その橋渡し的存在として悪徳警官トルーポを置くのが巧い。

 3人の風体も印象的だ。デンゼルはいつも小奇麗な身なりで隙が無く、ダブルカフスのワイシャツを好んで着る、いかにも全ての物事に完璧を要求しそうな感じだ。ラッセルも三つ揃いの背広を着るときがあるが、普段は御洒落に気を遣わない、身体の線が崩れ始めた中年の仕事人間。ジョシュは口髭を生やしオールバックで高級スーツを着込み、いつも風を切って歩く強面のチンピラ風。

 3人の身なりがステレオタイプにならない程度に性格をあらわしているのが面白い。案の定、デンゼルは部屋も清潔整頓、悪事に手を染めているが身内の結束を大事にする。母親や妻には孝行をし、弟たちには一家の家長として絶対的な統率力を発揮する。まるで織田信長そのもののような性格だ。
 ラッセルは正義感が強く仕事はできるが他は無神経・無頓着のキャラと思ったら、やはり妻と離婚し息子の親権をめぐって法廷闘争、下半身もだらしない。しかし能力と正義感を買われて新たなチームのリーダーに抜擢されたり、司法試験に合格して弁護士の資格も持つ。
 ジョシュは終始一貫して卑しくて野蛮な悪徳警官として、デンゼルたちマフィアを恐喝したり、ラッセルの捜査を邪魔したり恫喝したりとやりたい放題だが、予想通りラストで内面の脆さを見せる。

 史実は一応知っているので、3人の俳優が与えられたキャラをどのように演じきるかが楽しみだった。私は総合的にみて佳作だと思っている。
 ただ、「ゴットファーザー」のようなインパクトは無い。「アンタッチャブル」ほどのエンタメ性も薄い。ハーレムの風土人情を強く出せば「ゴットファーザー」的に重厚感が生まれただろうし、捜査官をもっと格好良くしてフランク・ルーカスとの鬼気迫る論戦をセットすれば「アンタッチャブル」的になったかもしれない。
 低予算映画なら私は手放しで傑作と評価するだろうが、絶賛するには銭がかかりすぎている。
 
 最後に一番気に入った場面は、ラストでもサクセスストーリーでもなく、自慢の息子の成功を喜んでいた母親が、息子の本当の仕事を知り、拳銃を持って出かけようとするデンゼルに平手打ちするところだ。こんな母親なら嫁との関係は良好だろう。

(余談1)この麻薬王の存在を最初に知ったのは中高生頃だった。日教組系の社会科教師が東南アジアの地理を授業する際に、教科書から脱線してベトナム戦争の解説を始めアメリカ批判をやった。教師はアメリカという国がいかに腐っているかを言いたかったのだろう、アメリカ軍の戦死者を運ぶ棺桶に麻薬を隠して「輸入」する手口を話した。
 後にフランク・ルーカス氏本人や麻薬捜査官たち関係者は、棺桶輸送は作り話だと否定している。

 当時のニューヨーク・ハーレムの様子は、報道写真家の吉田ルイ子氏のルポに詳しく出ている。彼女は実際にハーレムに居を構えて仕事をしていた。
 コミュニティにすっかり入り込んで「仲間」になってしまうと「三丁目の夕日」的な住み良さらしい。彼女はそこでは凶悪な犯罪に遭ったことは無く、むしろ高級住宅街で強盗にあっている。また、ハーレムでは一度カメラを盗まれたことがあったが、子供も含む隣近所の人々が総がかりで中古屋に流れていないかあたってくれたらしい。
 学生の頃は写真に興味をもち、ロバート・キャパ氏やエルスケン氏に始まり、ユージン・スミス氏・吉田ルイ子氏・石川文洋氏の写真ルポをよく読んだ。
 
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆☆ 優
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆ 佳作

 
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オリジナル・サウンドトラック「アメリカン・ギャングスター」


 
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2008年46本目映画「アメリカン・ギャングスター」暗黒街のカリスマと、正義をつらぬく刑事。その道を進むのなら、俺を倒してから行け。ストーリー誰かに使われる人生から抜け出そうと誓い、麻薬の新しいビジネス・モデルを気付き上げることで、暗黒街のアメリカンドリーム...
[2009/06/28 20:42] 腹黒い白猫は見た!!
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[2009/06/29 01:26] cocowacoco
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