「ゴッドファーザーPART II」
ヤクザ映画の金字塔 【原題】The Godfather Part
II【公開年】1974年
【制作国】亜米利加
【時間】200分
【監督】フランシス・フォード・コッポラ【原作】マリオ・プーゾ
【音楽】カーマイン・コッポラ
ニーノ・ロータ 【脚本】フランシス・フォード・コッポラ マリオ・プーゾ
【言語】イングランド語 イタリア語 一部スペイン語
【出演】アル・パチーノ(ドン・マイケル・コルレオーネ)
ロバート・デュヴァル(トム・ヘイゲン)
ダイアン・キートン(ケイ・アダムス・コルレオーネ)
ロバート・デ・ニーロ(若き日のドン・ヴィトー・コルレオーネ)
ジョン・カザール(フレデリコ・“フレド”・コルレオーネ)
タリア・シャイア(コニー・コルレオーネ・リッジ) リー・ストラスバーグ(ハイマン・ロス) マイケル・V・ガッツォ(フランキー・ペンタンジェリ) マリアンナ・ヒル(フレドの妻) ハリー・ディーン・スタントン(FBI捜査官) ダニー・アイエロ(トニー) ジェームズ・カーン(サンティノ・“ソニー”・コルレオーネ) トロイ・ドナヒュー(ジョンソン) ジョー・スピネル(ウィリー)
【成分】泣ける 悲しい ゴージャス 不気味 知的 切ない かっこいい イタリア系移民 ギャング 20世紀初頭~20年代 50年代末
【特徴】二代目の若きドンとなったマイケルの息が詰まりそうな暗い物語と、初代ビトーの前途明るい立身出世物語の交錯が美しい。
ビトーの物語はまるでイタリア映画と間違えるほど台詞はイタリア語一色。普通、時系列を捻ると物語の筋が判りづらくなるものだが、この作品は見事美しく構成している。
ロバート・デ・ニーロ氏のシャガレ声と猛特訓した流暢なイタリア語は必見。
「ターミネーター2」と並んで「続編の金字塔」だ。
【効能】父親ビトーの物語で自分の下積み時代の青春を思い出し、息子マイケルの姿に仕事中毒・家庭を顧みない自分の姿を見るかもしれない。仕事人間が鑑賞すると効果あり。
【副作用】全体に窮屈で暗い映画なので、観ていると息がつまり痛々しくなる。
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これもまた続編の金字塔 まさに最高峰といっても良いデキだ。前作と続けて観る事を薦める。舞台となるコルレオーネ家の大河ドラマを堪能してほしい。
ふつう、続編というのは不評作が多い。それは1作目で思わぬ人気が出たため映画会社が2匹目の泥鰌を狙って制作者たちに創らした結果だが、無理に続編を創ると1作目の作品世界のバランスを壊す。さらに観客は無意識に一作目以上の完成度を期待してしまうので、同等程度の水準でも辛目の評価になる。このマイナス方向の相乗効果で続編は往々にして駄作の烙印を押されるのである。
もちろん例外もある。「ターミネーター2」のように1作目の成功によって得た名声と集金力と主演俳優たちとの同志的関係(余談1)が功を奏した結果もあるし、「ロード・オブ・ザ・リング」のように長大な作品を1作にまとめるのを無理と判断して最初から3部に構成する方法が受け入れられた例もある。「ゴッド・ファーザー」の場合、1作目と2作目の構想は最初からまとまっていたのではないかと思うくらい完成度が高い。
この作品でまず目を引くのは構成力だろう。青年時代の父親ビトー(
ロバート・デ・ニーロ氏)の物語とファミリーを背負う羽目になったマイケル(
アル・パチーノ氏)の現在、2つの物語を1つの映画作品にまとめたのはさすがである。2つの物語は互いに対立しあいながら引き立て合い物語全体に強力な説得力を生み出す。
ビトーの物語はまるでイタリア映画と間違うほど台詞はイタリア語一色だ。デニーロ氏は1作目のマーロン・ブランド氏に驚くほど似たシャガレ発声でイタリア語を話す。(余談2)20世紀初頭のシチリア島でのエピソードから始まり、アメリカへ逃げてニューヨークのイタリア人街での下積時代を描写する。若い頃のビトーはまるで三國志や水滸伝に出てきそうな義侠の世界だ。我がもの顔でのさばる悪党を倒し弱い老婦人の苦境を助ける。次第に仲間や家族が増え住民の信頼も得ていく。
対してマイケルの物語は、使用言語は殆ど英語、最初から組織の頂点に君臨し、青年時代の父親のような「ひと旗揚げたる」といった意気込みや溌剌さは無く、悠然とした物腰ではあるが表情は痛々しく心に余裕が無い。次第に家族や仲間が増えていく父親の物語とは逆に、マイケルの物語は最愛の家族や仲間が離反していく。
もともとマイケルは父親のようなヤクザが嫌いで「堅気のアメリカ人」として生きていこうとした。ところが組織を引き継がざるを得なくなり、堅気として生きていこうとするマイケルを支持してくれた妻とは訣別し、同じく良き理解者だった優しい次兄を殺す。(余談3)これは1作目を観なくても解るようラストの象徴的な一場面で説明しているところが巧い。
立身と復讐だけを考えていれば良かった父と、生真面目で責任感の強い性格ゆえにファミリーを守るため望んでいなかった人生をおくるマイケル、イタリア人街の顔役として競争相手や仇だけに注意していれば良かった父親と、国家とも相対しなければならないマイケル。この対立関係が3時間以上に渡って観客を釘付けにする。
1作目ではどこか影があるが好青年だった
アル・パチーノ氏が、ここでは目の周りに小皺をつくり眉間に盾ジワをよせた近寄りがたい壮年に変化しているところが見どころだ。
(余談1)当時、キャメロン監督とリンダ・ハミルトン氏はできていた。
(余談2)
ロバート・デ・ニーロ氏はイタリア系なので元々流暢にイタリア語ができるバイリンガルと思い込んでいたら、実は役作りのためシチリアにホームスティして猛特訓したらしい。
デ・ニーロ氏は役柄が決まると撮影の前に下調べをし、実際に体験学習をして役づくりを行なうことで有名である。
(余談3)妻が中絶したことにマイケルは怒るのだが、このときの
アル・パチーノ氏の演技が良い。最高レベルの怒りの顔だ。そして妻も恐怖に引きつったような顔で声も出ない様も迫力ある。
カトリックでは中絶はできない。カトリックの価値観をもつマイケルにとって、妻の行動は神への冒涜である。もはや妻は愛すべき女性ではなく忌むべき存在であり、妻にとってもマイケルはかつての愛すべき優しい青年ではなく恐怖のモンスターである。
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆☆☆ 秀
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆☆☆ 金字塔 【受賞】アカデミー賞(作品賞)(1975年)
晴雨堂関連作品案内ゴッドファーザーPARTII ― オリジナル・サウンドトラック
ゴッドファーザー PartI <デジタル・リストア版> [DVD] フランシス・フォード・コッポラ<デジタル・リストア版> [DVD]
ゴッドファーザー PartIII <デジタル・リマスター版> [DVD] フランシス・フォード・コッポラ<デジタル・リマスター版> [DVD]
晴雨堂関連書籍案内ゴッドファーザー〈上〉 (ハヤカワ文庫NV) マリオ・プーヅォ
ゴッドファーザー〈下〉 (ハヤカワ文庫NV) マリオ・プーヅォ
フランシス・F・コッポラ ~Francis Ford Coppola & His World 小出幸子
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これもまた続編の金字塔 まさに最高峰といっても良いデキだ。前作と続けて観る事を薦める。舞台となるコルレオーネ家の大河ドラマを堪能してほしい。
ふつう、続編というのは不評作が多い。それは1作目で思わぬ人気が出たため映画会社が2匹目の泥鰌を狙って制作者たちに創らした結果だが、無理に続編を創ると1作目の作品世界のバランスを壊す。さらに観客は無意識に一作目以上の完成度を期待してしまうので、同等程度の水準でも辛目の評価になる。このマイナス方向の相乗効果で続編は往々にして駄作の烙印を押されるのである。
もちろん例外もある。「ターミネーター2」のように1作目の成功によって得た名声と集金力と主演俳優たちとの同志的関係(余談1)が功を奏した結果もあるし、「ロード・オブ・ザ・リング」のように長大な作品を1作にまとめるのを無理と判断して最初から3部に構成する方法が受け入れられた例もある。「ゴッド・ファーザー」の場合、1作目と2作目の構想は最初からまとまっていたのではないかと思うくらい完成度が高い。
この作品でまず目を引くのは構成力だろう。青年時代の父親ビトー(
ロバート・デ・ニーロ氏)の物語とファミリーを背負う羽目になったマイケル(
アル・パチーノ氏)の現在、2つの物語を1つの映画作品にまとめたのはさすがである。2つの物語は互いに対立しあいながら引き立て合い物語全体に強力な説得力を生み出す。
ビトーの物語はまるでイタリア映画と間違うほど台詞はイタリア語一色だ。デニーロ氏は1作目のマーロン・ブランド氏に驚くほど似たシャガレ発声でイタリア語を話す。(余談2)20世紀初頭のシチリア島でのエピソードから始まり、アメリカへ逃げてニューヨークのイタリア人街での下積時代を描写する。若い頃のビトーはまるで三國志や水滸伝に出てきそうな義侠の世界だ。我がもの顔でのさばる悪党を倒し弱い老婦人の苦境を助ける。次第に仲間や家族が増え住民の信頼も得ていく。
対してマイケルの物語は、使用言語は殆ど英語、最初から組織の頂点に君臨し、青年時代の父親のような「ひと旗揚げたる」といった意気込みや溌剌さは無く、悠然とした物腰ではあるが表情は痛々しく心に余裕が無い。次第に家族や仲間が増えていく父親の物語とは逆に、マイケルの物語は最愛の家族や仲間が離反していく。
もともとマイケルは父親のようなヤクザが嫌いで「堅気のアメリカ人」として生きていこうとした。ところが組織を引き継がざるを得なくなり、堅気として生きていこうとするマイケルを支持してくれた妻とは訣別し、同じく良き理解者だった優しい次兄を殺す。(余談3)これは1作目を観なくても解るようラストの象徴的な一場面で説明しているところが巧い。
立身と復讐だけを考えていれば良かった父と、生真面目で責任感の強い性格ゆえにファミリーを守るため望んでいなかった人生をおくるマイケル、イタリア人街の顔役として競争相手や仇だけに注意していれば良かった父親と、国家とも相対しなければならないマイケル。この対立関係が3時間以上に渡って観客を釘付けにする。
1作目ではどこか影があるが好青年だった
アル・パチーノ氏が、ここでは目の周りに小皺をつくり眉間に盾ジワをよせた近寄りがたい壮年に変化しているところが見どころだ。
(余談1)当時、キャメロン監督とリンダ・ハミルトン氏はできていた。
(余談2)
ロバート・デ・ニーロ氏はイタリア系なので元々流暢にイタリア語ができるバイリンガルと思い込んでいたら、実は役作りのためシチリアにホームスティして猛特訓したらしい。
デ・ニーロ氏は役柄が決まると撮影の前に下調べをし、実際に体験学習をして役づくりを行なうことで有名である。
(余談3)妻が中絶したことにマイケルは怒るのだが、このときの
アル・パチーノ氏の演技が良い。最高レベルの怒りの顔だ。そして妻も恐怖に引きつったような顔で声も出ない様も迫力ある。
カトリックでは中絶はできない。カトリックの価値観をもつマイケルにとって、妻の行動は神への冒涜である。もはや妻は愛すべき女性ではなく忌むべき存在であり、妻にとってもマイケルはかつての愛すべき優しい青年ではなく恐怖のモンスターである。
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆☆☆ 秀
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆☆☆ 金字塔 【受賞】アカデミー賞(作品賞)(1975年)
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フランシス・F・コッポラ ~Francis Ford Coppola & His World 小出幸子
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