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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「エリザベス:ゴールデン・エイジ」 ストレス解消活劇〔45〕 

エリザベス:ゴールデン・エイジ
 

 
【原題】Elizabeth: The Golden Age
【公開年】2007年  【制作国】英吉利 仏蘭西  【時間】114分  
【監督】シェカール・カプール
【音楽】クレイグ・アームストロング アル・ラーマン
【脚本】ウィリアム・ニコルソン マイケル・ハースト
【言語】イングランド語 一部スペイン語 ドイツ語
【出演】ケイト・ブランシェットエリザベス女王1世)  ジェフリー・ラッシュ(フランシス・ウォルシンガム)  クライヴ・オーウェン(ウォルター・ローリー)  リス・エヴァンス(ロバート・レストン)  ジョルディ・モリャ(スペイン国王フェリペ2世)  アビー・コーニッシュ(ベス・スロックモートン)  サマンサ・モートン(スコットランド女王メアリー)    
      
【成分】悲しい スペクタクル ゴージャス 不気味 勇敢 知的 切ない セクシー かっこいい 女性ヒーロー イングランド 海戦 16世紀
      
【特徴】前作「エリザベス」の続編になる。主演は同じケイト・ブランシェット氏。
 政敵を粛清し、絶対君主として王権を確立したエリザベス1世が様々な葛藤を振り切り、当時超大国だったスペインの無敵艦隊を破って勝利者となるまでを描く。
 
 あくまで晴雨堂の個人的見解だが、前作に比べてやや大味感が否めない。この無敵艦隊撃破のエピソードは、2時間枠に収めるのは無理がある。
 
【効能】意気消沈したり様々な葛藤に苛まれたときに吹っ切れるきっかけになる。
 
【副作用】大味感に幻滅。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。  
好意的にいうとケイトの一人舞台。

 前作はエリザベスがロンドン塔に幽閉された不遇時代から女王に即位して反対勢力の粛清を断行する時期までを描いた。その時期のエリザベスに年齢が近く肖像画の容姿にも面影が似ているケイト・ブランシェット氏が熱演し大好評だった。前作はエリザベスの若い時代をドラマチックに無理なくまとめた秀作だった。女王を取り巻く状況や愛人との関係などエピソードの配分は計算されていて申し分ない。国際的に無名だった当時のケイト・ブランシェット氏を一躍大スターに押し上げた作品でもあった。
 あれから10年、青年から老年まで幅広く演じられる俳優として脂がのりきった歳頃になったケイト・ブランシェット氏にとってタイムリーな役柄がこの「ゴールデン・エイジ」である。(余談1)

 期待していた「ゴールデン・エイジ」だが、懸念材料はあった。今回はさらに大国スペインの無敵艦隊との決戦がある。これらを2時間弱の映画にまとめてしまったのは強引が過ぎると思う。
 物語の展開としては悪くない。下衆な解釈になるが、国家と結婚したはずのエリザベスが色男ローリー卿の登場で再び「君主の義務」と「女性の幸せ」の狭間で葛藤が生じ、国内の反抗勢力の旗頭にされるメアリーの処遇を先送りしようと悩める国家元首が、暗殺未遂事件とメアリーの処刑、忠実な侍女とローリー卿との結婚による失恋に、スペイン無敵艦隊の来襲、これら試練によってエリザベスの迷いが払拭され神々しい女王へと完全脱皮する。ドラマとして順当な進み方だ。

 しかしあまりにもケイト・ブランシェット氏の一人舞台にし過ぎたきらいがある。エリザベス以外のキャラ、ローリー卿や侍女ベスでさえも準主演や助演ではなく脇役だ。イングランドを襲うフェリペ2世に至っては単なる愚かな悪の帝王でしかない。(余談2)歴史超大作は様々な人間模様が描かれた優れた群衆劇でもあるのだが、この映画はエリザベス以外に魅力あるキャラを描ききれていないのが特徴の映画だ。
 なぜ2時間弱の映画にまとめてしまったのか不可解だ。ヨーロッパの島国から世界帝国へと膨張する礎を築いたスーパースターの物語、3時間以上の大作にしてじっくり丁寧に各々のキャラやエピソードを描写してもおかしくない素材だった。(余談3)

(余談1)実際のエリザベスはスペインの無敵艦隊を迎撃する頃50歳を過ぎていたと思う。当時としては老女の域だが若作りをして老いを国民には見せず、肖像画に皺を描くことを禁じていた。
 ケイト・ブランシェット氏はまだ30代後半だが、白塗りの顔に浮かび上がる陰影は若作りのエリザベスをよくあらわしている。わざと顔に陰影が出る照明にしているのだろう。前作ではツルツルのゴチック的白塗り仮面のような顔だったのが、今回では忍び寄る老いを健気に隠して変わらぬ若さをアピールする努力がよく滲み出ている。皺のある痩せたエリザベスとコラーゲンがはちきれそうなベスの対比は巧い。
 以上の背景を念頭に置けば、神聖ローマ帝国の若きプリンスとの見合い場面を興味深く観れるだろう。国の利益の為に必死になって覚えたての英語を並べて若い身体を捧げようとするプリンスの覚悟と、それをドイツ語でねぎらうエリザベス。エリザベスの聡明で優しいエピソードだ。

 因みに神聖ローマ帝国は古代ローマ帝国を意識した国ではあるがドイツ人の国である。多くの独立した君主国の連合帝国で、全盛期は現在のドイツがある地域のほか、イタリアの北部も勢力化だった。だから今も北イタリアはドイツ文化が残っている。

(余談2)スペインは当時全世界に植民地を持つ超大国ではあるが財政は破綻寸前。またフェリペ2世は家庭的に恵まれておらず、映画では幼い王女を溺愛する様で滲ませているつもりだが、史実を知らない人間には判らないだろう。さらにクライマックスの海戦では、フェリペ2世自身が病気で延期させているし、海軍の指揮をとるはずだった提督が病死して海戦の経験が無い貴族が後任になるなど、不安材料は沢山あった。これらも描写不十分。

(余談3)ほぼ同時代の女性を主人公にした邦画「茶々」、奇しくも「ゴールデン・エイジ」と同時期に公開された作品で、ともに大味な内容の作品、大軍を迎え撃つヒロインで甲冑を着て兵たちの前で鼓舞する場面と共通するキーワードをもっているが、エリザベスのほうが見栄えが良い。私は「茶々」の作品レビューで銀ピカの西洋甲冑を着るべきだったと苦言したが、このエリザベスは見事に私のイメージ通りの女傑ぶりを披露した。
 邦画は伝統的に大群衆場面と大軍勢を率いるヒーローを描写するのが下手糞だ。何故だろう。演出が悪いのか女優の発声が稚拙なのか? どうしてケイトのような演技ができないのだ?日本の女優は!
 

 
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆☆ 優
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆ 佳作

 
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映画「エリザベス ゴールデン・エイジ」オリジナル・サウンドトラック
エリザベス [DVD] シェカール・カプール
 
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7つの黄金郷(エルドラド) (2) (中公文庫―コミック版) 山本鈴美香
7つの黄金郷(エルドラド) (3) (中公文庫―コミック版) 山本鈴美香
7つの黄金郷(エルドラド) (4) (中公文庫―コミック版) 山本鈴美香
7つの黄金郷<5> (中公文庫C) 山本鈴美香<5> (中公文庫C)
7つの黄金郷 <6> 山本鈴美香<6>
七つの海七つの空 青池保子
 

 
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