FC2ブログ

ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「太平洋ひとりぼっち」 青春回帰〔26〕 

太平洋ひとりぼっち
石原裕次郎一人芝居の異色作

 


【公開年】1963年  【制作国】日本国  【時間】97分  【監督】市川崑
【原作】堀江謙一
【音楽】芥川也寸志 武満徹
【脚本】 和田夏十
【言語】日本語(関西方言) 一部イングランド語
【出演】石原裕次郎堀江謙一)  森雅之(父)  田中絹代(母)  浅丘ルリ子(妹)  ハナ肇(男A)  神山勝(男B)  芦屋雁之助(造船所の船大工)  大坂志郎(造船所の主人)  草薙幸二郎(航海課の職員)    
      
【成分】笑える 楽しい ロマンチック コミカル 海洋冒険 60年代
      
【特徴】ヨットで冒険する堀江謙一氏の手記をもとに映画化。自身もヨットが趣味という石原裕次郎氏が堀江謙一氏に扮する。やや肥えて顔が大きくなってきた感じがするが、ヨットの内での一人芝居は青春そのものである。
 オープニングテロップを全て英字にしたり、映画会社から独立して石原プロ主導による制作など、日本芸能界にとって画期的な試みがなされている。
 因みに、実際の堀江謙一氏が太平洋横断という偉業を成し遂げた時、石原慎太郎氏は堀江氏を嫌っているのではと思えるほど批判的だった。それを弟裕次郎氏が堀江氏に扮して映画を作るとは興味深い。
 
【効能】特に若い頃に登山や旅をやっていた人には青春の感覚を取り戻せるかもしれない。

【副作用】冒険をリアルに描いているので活劇ではない。退屈する場合がある。

下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。  
市川崑監督異色作
 
 市川崑監督は長い映画人生で実に多くの映画を製作している。多くの映画ファンが思い浮かべるのは、「犬神家の一族」に代表される娯楽サスペンスか、あるいは「ビルマの竪琴」といった文藝作品だろう。少しマニアックなファンならTV時代劇「木枯らし紋次郎」を連想されるかもしれない。(余談1)
 実は、市川監督が手掛ける映画は多岐に渡っている。文藝作・娯楽サスペンス・時代劇だけでなく、記録映画・SF映画・アニメーションといった具合だ。黒澤監督とともに日本を代表する知名度を誇る存在になっているにも関わらず、ジャンルを問わない積極的な創作意欲は映画界やTV界に強い影響力を与え続けた。(余談2)

 その中で特に私が興味を引いたのは「太平洋ひとりぼっち」だ。当時、設立して間もない石原プロの記念すべき第1作目映画であり、格好いいヒーロー役ばかりだった石原裕次郎氏が関西弁を喋る楽天的なヨット青年を演じる。物語が小形ヨット無帰港太平洋横断をした堀江謙一氏の実話に基づいているので、大半の場面が狭いヨットの中での1人芝居、石原氏の演技力が試される。(余談3)オープニングで紹介されるキャストやスタッフは全て英語表記なのも新鮮だった。

 結論をいうと、やはり石原裕次郎氏には違和感がある。石原氏は堀江氏はともに関西出身で歳も近い、だから言葉の違和感は無いはずだが。それにどこかヒーロー的な格好良いカメラ目線をするクセがあるように感じた。また、堀江氏がどうして冒険の魔力にとり憑かれたのか、その描写が不十分だった。(余談4)
 しかし、原作に極力忠実で安易なデフォルメは無かったのが好感を持つ。嵐で沈没しかけて全身濡れ鼠になり青白い顔になった場面や、積んでいた飲料水が腐ったのでビールで飯を炊いたら爆発して大慌てしたり、バターに砂糖を混ぜてショートケーキに見立てて食べたり、無精髭を和ハサミで切ったりと、共感できる場面が多い。格好いい青年裕次郎やゴージャス中年裕次郎しか知らないファンにとって新鮮な映画だと思う。
 ラストの、長髪無精髭の貧乏学生のような風貌でサンフランシスコの金門橋を眺める裕次郎氏の顔が好きだ。

(余談1)私が最も好きな時代劇である。圧倒的に侍が主役となることが多い時代劇で、住所不定無職のアウトローをニヒルなヒーローにした毛色の違う作品だ。しかも華やかな殺陣はなく、全速で走りながらドスを棍棒のように振り回す喧嘩チャンバラはリアリティーがある。今ではCGを使わなければ再現が難しい、山深い林道を独り歩く紋次郎(中村敦夫氏)を俯瞰からズームインする場面は美しい。
 主題歌は、これもまた当時の時代劇では珍しくギター演奏をバックにウエスタン調、「だれかが風の中で」は中高生時代よくサイクリング中に口ずさんでいた。

(余談2)「竹取物語」レビューで述べたが、ハリウッドもビックリの大群衆場面を入れるべきところを入れなかった。「火の鳥」で神武天皇?率いる騎馬軍団と邪馬台国との合戦はイマイチだった。記録映画「東京オリンピック」を観れば群衆場面の重要性は解っているはずなのに、何故だろう? 日本映画ではやはり黒澤監督だけが群衆を使いこなせた。

(余談3)堀江氏の冒険は欧米では画期的と大絶賛され英雄扱いだった。ところが日本での反応は冷淡で「アメリカに不法入国したから強制送還、日本に帰ったら不法出国だから即逮捕」だった。特に石原慎太郎氏は堀江氏の快挙を認めず批難していた。ところが、弟裕次郎氏は映画で堀江謙一を演じたから興味深い。兄は捻くれていて弟は性格いいのだろう。
 察しのとおり、冷淡だった日本の論調はアメリカでの好評に迎合して、掌かえして堀江氏を好意的に迎える。日本らしい変わり身だ。

(余談4)母親の表情は良かった。まさに不本意ながら息子を冒険に送り出す苦渋の顔だった。

晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆ 良

晴雨堂マニアック評価
☆☆☆☆☆ 金字塔
 

晴雨堂関連作品案内
植村直己物語 [DVD] 佐藤純彌 

晴雨堂関連書籍案内
太平洋ひとりぼっち (福武文庫) 堀江謙一
ひとりぼっちの世界一周航海記 堀江謙一
太陽に賭ける―「太平洋ひとりぼっち」、ふたたび 堀江謙一
海を歩いて渡りたい―ペダルを踏んで太平洋ひとりぼっち 堀江謙一


 
 blogram投票ボタン にほんブログ村 映画ブログへ
ブログランキングに参加しています。
関連記事
スポンサーサイト



[ 2009/07/01 19:41 ] 映画・・青春回帰 | TB(0) | CM(2)
石原裕次郎さん の映画ですね。この映画 テレビで見ました。面白かったです。
[ 2012/04/09 18:19 ] [ 編集 ]
村石太レディ氏へ

 裕次郎の一人芝居、これまでのチョイ悪ツッパリ兄貴のイメージから逸脱したエポックメーキング作品です。
実兄の慎太郎は堀江謙一に嫉妬が入り混じった悪意を持っていましたが、その弟が堀江を演ずるのは面白いことです。

> 石原裕次郎さん の映画ですね。この映画 テレビで見ました。面白かったです。
[ 2012/04/15 05:49 ] [ 編集 ]
コメントの投稿













管理者にだけ表示を許可する
映画処方箋一覧
晴雨堂が独断と偏見で処方した映画作品。
下段「日誌」項目は晴雨堂の日常雑感です。
メールフォーム
晴雨堂ミカエルに直接ご意見を仰せになりたい方は、このメールフォームを利用してください。晴雨堂のメールアドレスに送信されます。

名前:
メール:
件名:
本文:

プロフィール
↓私の愛車と野営道具を入れたリュックです。

晴雨堂ミカエル

Author:晴雨堂ミカエル
 執筆者兼管理人の詳しいプロフィールは下記の「晴雨堂ミカエルのプロフ」をクリックしてください。

晴雨堂ミカエルのプロフ

FC2カウンター
2007年10月29日設置
当ブログ注目記事ランキング
当ブログで閲覧数の多い順ランキングです。
設置2013年6月13日
ブログランキング
下記のランキングにも参加しております。ご声援ありがとうございます。
  にほんブログ村 映画ブログへblogram投票ボタン
アクセスランキング
[ジャンルランキング]
映画
124位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
レビュー
64位
アクセスランキングを見る>>
タグランキング
晴雨堂の関心度が反映されています。当ブログ開設当初は「黒澤明」が一位だったのに、今は・・。
訪問者閲覧記事
最近のアクセス者が閲覧した記事を表示しています。
月別アーカイブ
ブロとも申請フォーム
リンク