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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「キサラギ」 寂しさをまぎらわす時に〔12〕

キサラギ」 オタクによる鬼気迫る論争劇
 


【公開年】2007年  【制作国】日本国  【時間】108分  【監督】佐藤祐市
【原作】古沢良太
【音楽】佐藤直紀
【脚本】古沢良太
【言語】日本語
【出演】小栗旬(家元)  ユースケ・サンタマリア(オダ・ユージ)  小出恵介(スネーク)  塚地武雅(安男)  香川照之(いちご娘)  酒井香奈子(如月ミキ)  宍戸錠(コンサート司会の男)
          
【成分】泣ける 笑える 楽しい 悲しい 不思議 パニック 知的 切ない コミカル オタク
      
【特徴】邦画には珍しいディスカッション劇の傑作。オタク同士の論争がリアル。香川照之氏の危ない怪演が光る。
 
【効能】寂しい夜もこれで楽しくなる。疲れた時に観ると元気がみなぎる。
 
【副作用】新機軸は無いので内容が予測でき退屈する。映画より舞台が映える。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。  
「五人の怒れるオタク」と思いきや・・。
 
 嬉しい誤算だった。邦画は欧米の映画に比べてディスカッション劇が不得手であると私は思っている。論争や弁論の文化が欧米ほど重要視されていなかった歴史もある。欧米の秀作なら次にどんな台詞で応酬するのかワクワクするものだが、邦画の討論劇はどこか予定調和的なので予測できてしまい、しかも論理よりも使い古された人情論で済まされることが多々ある。(余談1)
 この作品も実は場面一つ一つを切り取ってみれば、けっこう使い古されたどんでん返し(余談2)なのだが、機関銃のようにテンポ良く出てくるので飽きがこない。(余談3)ギャグ漫画でも、そこそこのギャグをこれでもかと繰り出されると全体の雰囲気で大笑いしてしまう事がある。

 ともかく、脚本と構成が良い。とあるビルの屋上倉庫を借りての男たちだけによる討論・口論・大喧嘩。前述の機関銃のように出てくるテンポの良いどんでん返し。物語の最重要ヒロインであるはずの如月ミキは節目節目の回想や推理場面で登場するが、顔は遠目であったり髪の毛で隠れたり後姿だったりと、敢えて素顔が判りにくいミステリアスな構図で魅せている。物語は20代から40代の男性5人による会話だけで物語が展開。壮大な舞台や潤沢な予算が無くても楽しめる作品の見本だ。(余談4)
 「十二人の怒れる男」レビューでも言及したように、この手の映画は脚本と構成がシッカリしていなければ、たちまち説得力が無くなる。事実上ヒロイン不在の登場人物、むさ苦しい一室に限定された舞台、子役や女優の魅力や美しい風景描写などで場をつなぐことができない。誤魔化しにくい題材なのである。

 ただ、連れ合いからしばしばオタクと批判されている私は、もう少し配役に工夫を入れるべきだったのではないかと思う。(余談5)小栗旬氏の「家元」・ユースケ=サンタマリア氏の「オダ・ユージ」・小出恵介の「スネーク」・塚地武雅の「安男」・香川照之の「いちご娘」、どれも素晴らしいし、キャラ設定もよくこなれている。
 しかし、小栗氏と小出氏の背格好と年齢がダブってしまっているのが少し残念である。それに清々しい若者である小栗氏がアイドルオタクというのも当たり前過ぎる。私が監督なら、ホンモノの織田裕二氏を「家元」に起用する。設定は警視庁の警視正クラスのエリート警察官僚で独身。職場のストレスを如月ミキへの応援で発散させているという格好が面白いと思う。
 もっとも織田裕二氏の志向を考えたら難しそうなので、いずれにせよ他の40歳前後の一見清潔そうな男優に「家元」を演じてもらう方がインパクトがあるし、オタクらしい。
 
(余談1)もちろん、キリスト教文化にどっぷり漬かっているハリウッド映画でも「神」に逃げることが多いが。

(余談2)一緒に観た連れ合いは途中からラストまでの展開やオチを全部見切ってしまった。
 
(余談3)配役表に主役たち以上のキャリアを持つ大物俳優・宍戸錠氏が出ていることになっていたが、どの場面に出てくるのか予想できなかった。彼の絡み方は意表を突く想定外だった。

(余談4)登場人物を五人にまとめたのは正解だった。これは持論だが、登場人物は5人から7人程度までに抑えるのがベスト、それ以上は観客が憶えきれないし物語のまとまりも欠く。
 名作「十二人の怒れる男」とて、陪審員制度の関係上12人になっているだけで、実際に台詞多く発言している人物は、無罪派で主役のヘンリー=フォンダ氏・スラム出身の若い紳士・移民の老紳士、有罪派の中心人物である頑固親父風紳士・暑い部屋で上着も脱がない理論派紳士・野球好きのいい加減なオッサン、そしてどっちつかずの眼鏡の男。
 12人全員を印象深く覚えている人は少ないと思う。大抵の人は以上あげた7人の人物に注目し記憶しているはずだ。特に主役格はフォンダ氏と頑固親父の2人に限定される。

(余談5)連れ合いは、サイクリングやキャンプをしたり環境保護運動や市民集会でスピーチする爽やかな?私を評価して付き合うようになったが、漫画・アニメ・映画・アダルトビデオを研究する?私の価値は認めず否定的だ。結婚前に「学生時代はアダルト漫画家やポルノ小説家を目指していた」と正直に言ったのだが。
 
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆ 良
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆☆ 名作

 
晴雨堂関連作品案内
サウンドシアター(声優ver)キサラギ
十二人の怒れる男 [DVD] シドニー・ルメット
12人の優しい日本人 [DVD] 中原俊
 
晴雨堂関連書籍案内
キサラギ (角川文庫) 古沢良太
シナリオ版 キサラギ 古沢良太
動物化するポストモダン―オタクから見た日本社会 (講談社現代新書) 東浩紀
 

 

 
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コメント

TBありがとうございました。

確かに小出恵介さんと小栗旬さんは背格好や年齢が近いので、他の3人と比べるとイメージがダブって相殺しているところもありましたよね。

でもホンモノの織田裕二さんをキャスティングしちゃうと、同じ『踊る大捜査線』出演者であるユースケ・サンタマリアさんの「オダ・ユージ」が霞んでしまいますからね。

ほんと、キャスティングって難しいんだなって改めて思いました。

Re: TBありがとうございました。

 いやいや、織田裕二氏のそっくりさんの警視庁幹部の「家元」という設定で、最初集まって来た人たちは「家元」を「オダ・ユージさんですか」と尋ね、 ユースケ・サンタマリアに向かっては「どうみても真下正義じゃないですか」という。
 そんな光景の方が面白いと思ったのですが。
 
 しかし、あとで考えると、著作権でややこしくなりそうですね。

> 確かに小出恵介さんと小栗旬さんは背格好や年齢が近いので、他の3人と比べるとイメージがダブって相殺しているところもありましたよね。
>
> でもホンモノの織田裕二さんをキャスティングしちゃうと、同じ『踊る大捜査線』出演者であるユースケ・サンタマリアさんの「オダ・ユージ」が霞んでしまいますからね。
>
> ほんと、キャスティングって難しいんだなって改めて思いました。

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『キサラギ』

な、なんじゃ~こりゃ!!なくらいに面白い、いや面白すぎる、そして巧すぎる脚本。2007年にこの映画を見逃してたことは改めて私の映画人生における最大の汚点であるということを再認識してしまうくらいに、凄く面白く巧い映画でした。あぁ~これを映画館で見れていたらなぁ...

★「キサラギ」

あんまり観る気がなかったけど、 今週のナイトショウ枠で観れるものがあまりなかったので、ついつい塚地に手を出してしまった。 内容は予告編見てて、大体把握してたので、期待しないで見てきました。

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