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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち)」 社会問題を考えたい時に〔12〕 

実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち)」 
壊れゆく人々を描いた秀作。

 

実録・連合赤軍 あさま山荘への道程 [Blu-ray]
実録・連合赤軍 あさま山荘への道程 [DVD]

【公開年】2007年  【制作国】日本国  【時間】190分  
【監督】若松孝二
【原作】掛川正幸
【音楽】ジム・オルーク
【脚本】若松孝二 掛川正幸 大友麻子
【言語】日本語
【出演】坂井真紀遠山美枝子)  ARATA(坂口弘)  並木愛枝(永田洋子)  地曵豪(森恒夫)  伴杏里重信房子)  大西信満(坂東國男)  中泉英雄(植垣康博)  伊達建士(青砥幹夫)  日下部千太郎(山田孝)  椋田涼(山崎順)  粕谷佳五(進藤隆三郎)  川淳平(行方正時)  桃生亜希子(持原好子)  本多章一(田宮高磨)  笠原紳司(高原浩之)  渋川清彦(梅内恒夫)  RIKIYA(金廣志)  坂口拓(塩見孝也)  玉一敦也(奥沢修一)  菟田高城(吉野雅邦)  佐生有語(寺岡恒一)  奥田恵梨華(杉崎ミサ子)  高野八誠(加藤能敬)  小木戸利光(加藤倫教)  タモト清嵐(加藤元久)  佐野史郎(さらぎ徳二)  倉崎青児(松本礼二)  奥貫薫(あさま山荘管理人)
          
【成分】悲しい パニック 絶望的 切ない 革命 学生運動 赤軍派 70年代初頭 
      
【特徴】学生運動史にとって大きな転換期にあたる大事件「あさま山荘」を、連合関軍の若者たちの視点で本格映画化。
 崇高な理想を抱いて権力に抵抗し日本革命を目指していたはずの若者たちが、如何に本来の目標から脱線していき、内輪で殺し合いをするだけの狂気の集団へと成り下がったのかを精密描写。連合赤軍の事件を正面から実写映画化した初の本格作品である。
 
【効能】当時の学生運動の息遣いが感じられる。風通しの悪い組織や集団の危険性を学ぶ事ができる。人民大衆の利益に貢献する運動と、人民大衆より優越感を感じるための運動との見分け方を知るヒントになり、カルトに引っかからないための教訓になる。
 「突入せよ!『あさま山荘』事件」で抱えた欲求不満を解消できる。
 
【副作用】全体に陰鬱で息がつまる。学生運動や市民運動に対して必要以上の偏見を持つ恐れがある。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。  
連合赤軍を初めてメジャー俳優で
実写映画化した作品


 3時間以上に及ぶ長編映画だが、私はちょうど良いと思う。崇高な志をもっていたはずの若者たちの集団が瓦解しただけでなく、一人一人の人格が醜く変形し潰れていく。これを描写するに、2時間程度では足りない。

 低予算で雑な感じを抱く方々も多いと思うが、むしろ連合赤軍がジリ貧になっていく様を具現化しているようで説得力がある。低予算ゆえに攻囲する大規模な警官隊の描写が無いが、行き詰まって窒息しそうな赤軍派の若者たちの臨場感溢れる虚しい喘ぎが描写されていて、潤沢な予算で制作された警官側視点の「突入せよ! あさま山荘事件」よりも好感が持てる。(余談1)

 制作者側の意気込みなのか、21世紀の若者である役者たちも70年代初頭の連合赤軍になりきっていたのではないかと思う。赤軍とは直接関係は無いが当時の学生運動に関わっていた友人がいたので雰囲気は推察できる。台詞回しも特に違和感は無かった。
 出演者の中ではメジャー俳優の坂井真紀氏も良い演技をしていたと思う。なんだか立派な俳優になったなぁ、と感慨深い。原田芳雄氏のナレーションも良い。(余談2)若者に安易な迎合を試みた「明日への遺言」のナレーター氏より遥かに素晴らしい。 

 作品とは直接関係は無いが思い出した事がある。10年程前(1999年夏)、実家にたまたまいたときTVのニュースで日の丸を国旗として定める法案の是非をめぐって議会が紛糾している様が報道されていた。主に社民党の議員が声高に反対し、市井では日の丸法案に抗議する小規模デモ。たぶん、殆どの国民は日の丸がまだ「正式な国旗」でなかったことに驚いただろう。
 
 その時、隣で座っていた父が呟いた。「日の丸を国旗として認めんやと? まったく最近の若い者はケッタイな事かんがえるなぁ」
「えっ?!」私は些か驚き、父の誤った認識を正す気すら吹き飛んだ。
 日の丸に敵意を抱き声高に反対している中心世代は、60年安保当時に学生運動や労組運動に関わった若者、「最近の若い者」というよりは父の世代に近い。最近の若い者は否定の意志を示すほど日の丸には関心ないか、むしろ積極的支持だ。
 父はちょうど長嶋茂雄氏や加山雄三氏と同じ世代で高度経済成長の担い手だった。高卒の土木技師として田舎を飛び出し、公共事業ラッシュの上昇気流に乗って実積をあげ、準大手ゼネコンの課長職で定年を迎えた。幹部社員の多くが大卒であるのを考慮すれば、いかに大変だったか。学生運動に関われた者は父より恵まれていたかもしれない。
 
 広範囲な労組も参加した60年安保でさえ、果たして日本人民の支持を得ていたのか? 岸総理を退陣に追い込んだ騒動も、別世界の出来事と一瞥しただけで、ひたすら仕事に打ち込み生活と地位の向上に励んだ父のような市民が圧倒的大多数だった。でなけれは、岸総理退陣だけでは済まず、革命となって自民党は解党していただろう。
 派手な学生運動だったが、実は日本人民の大海では孤立傾向にあったのではないか? そして赤軍派に至ってはますます「カルト化」様相を強めていく。

 連合赤軍の軍規に「三大規律 六大原則」がある。毛沢東の紅軍軍規「三大規律 八項注意」に音韻が似ているが内容は真逆だ。紅軍は人民の支持を得るための掟だが、赤軍は仲間を縛り、ダメ人間を抹殺するだけの規則だ。この段階で権力に負けてしまっている。
 あさま山荘事件から遡ること10数年前のキューバ革命時、カストロとゲバラたち革命軍は政府軍の攻撃で人員が10数名に減った。国情の差はあるだろうが、カストロたち革命軍よりは「大部隊」だった赤軍派が内輪で貴重な戦力を減らし、カストロたちは支持者を増やし革命を成功させる。ゲバラは冷酷に軍規違反を処罰したが、人民に狼藉をはたらいた者に限られていた。赤軍派は些細なことでミスをあげつらい得がたい仲間を殺す。
 心の奥底では国家権力と闘う気など無い。我ら愚鈍な日本人民や社会的弱者に奉仕することなど考えてなかったと私は断定している。
 
(余談1)今まで連合赤軍を実写映画化した作品で思いつくのは、80年代にFAプロが制作したアダルトビデオ「東日赤軍・・」だった。タイトルは正確には憶えていない。80年代初めから90年代初めかけて活躍したポルノ女優秋本ちえみ氏が赤軍メンバー№2の雌彪のような女性リーダーを演じていた。まったく学生運動とは縁の無さそうなキャラだった彼女が昔の学生運動用語を並べ、「反革命だ!」と叫んで同志部下を撲殺するところに迫力ある。
 FAプロはリアリズムポルノで頭角を現したメーカーで、作品作りはビデオというより映画である。けっこう政治的な題材を作品に取り入れる事が多い。

 60年安保時はまだ全学連(全日本学生自治会総連合)が強い指導力を発揮していたが、様々な分派に分かれ、60年代末に全共闘(全学共闘会議)が代わりに仕切り役になるが、これも潰れる。そうした過程で武装闘争を標榜する赤軍派が誕生。
 一口に赤軍派といってもいろいろなグループに分かれている。あるグループは旅客機をハイジャックして北朝鮮に亡命、あるグループは中東に拠点を移しテロ活動。日本に残ったグループは映画のとおり内輪でリンチ虐殺を行なって自滅。
 
(余談2)中東で「活躍」した日本赤軍の重信房子伴杏里氏が扮した。私好みの美形だ。若い頃の重信房子は長い髪に迷彩服に自動小銃(カラシニコフか?)、非常に格好いい。実は彼女の著作は2冊読んでいる。因みに娘さんの著作も読んでいる。
 
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆ 良
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆☆☆ 金字塔

 
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実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち)オリジナル・サウンドトラック
突入せよ!「あさま山荘」事件 [DVD] 原田眞人
 
晴雨堂関連書籍案内
若松孝二 実録・連合赤軍 あさま山荘への道程 「実録・連合赤軍」編集委員会+掛川正幸
死へのイデオロギー―日本赤軍派― (岩波現代文庫―社会) P・スタインホフ
優しさをください―連合赤軍女性兵士の日記 大槻節子
わが思想の革命―ピョンヤン18年の手記 田宮高麿
大地に耳をつければ日本の音がする―日本共産主義運動の教訓 (1984年) 重信房子
赤軍―1969→2001 (KAWADE夢ムック)
連合赤軍「あさま山荘」事件 佐々 淳行
連合赤軍「あさま山荘」事件―実戦「危機管理」 (文春文庫) 佐々 淳行
わが上司 後藤田正晴―決断するペシミスト (文春文庫) 佐々 淳行
 

 
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