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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「十戒」 美術鑑賞映画〔8〕

十戒」 大御所チャールトン・ヘストンの誕生。
 


【原題】THE TEN COMMANDMENTS
【公開年】1956年  【制作国】亜米利加  【時間】220分  
【監督】セシル・B・デミル
【原作】フレドリック・M・フランク
【音楽】エルマー・バーンスタイン
【脚本】 イーニアス・マッケンジー ジェシー・L・ラスキー・Jr ジャック・ガリス フレドリック・M・フランク
【言語】イングランド語
【出演】チャールトン・ヘストンモーゼ)  ユル・ブリンナー(ラメシス)  アン・バクスター(ネフレテリ)  エドワード・G・ロビンソン(デーサン)  イヴォンヌ・デ・カーロ(セフォラ)  デブラ・パジェット(-)  ジョン・デレク(-)  ニナ・フォック(-)  ヴィンセント・プライス(-)  セドリック・ハードウィック(-)  H・B・ワーナー(-)  ヘンリー・ウィルコクソン(-)  マーサ・スコット(-)  ジュディス・アンダーソン(-)  ジョン・キャラダイン(-)  ヘンリー・ブランドン(-)  タッチ・コナーズ(-)  オリーヴ・デアリング(-)  フレッド・コーラー・Jr(-)
          
【成分】悲しい ファンタジー スペクタクル ロマンチック パニック 勇敢 切ない 旧約聖書
        
【特徴】スペクタクルなエピソードとして有名で日本でも世界昔話として知られる旧約聖書の出エジプト記をベースに実写映画化。
 絢爛豪華趣味のセシル・B・デミル監督がメガホンを担当。主演は当時若手有力俳優のチャールトン・ヘストン氏、このモーゼ役によってスター俳優となり後の歴史大作「ベン・ハー」の主役となる。歴史超大作の主役はヘストンのイメージが定着する。
 
 神が石版に十戒を記す場面や、紅海が2つに裂けて海底を歩けるようになる場面などの特撮が当時評判になり、特殊効果でアカデミー賞を獲った。

 因みに神の声はヘストン氏自ら担当し、モーゼの赤ん坊時代は産まれたばかりのヘストン氏の長男フレイザー・ヘストン氏が扮している。
 
【効能】壮大なスケールにストレス解消。民族差別問題に明るくなる。キリスト教(あるいはユダヤ教イスラム教)に帰依するきっかけになる。無慈悲に直接責任の無いエジプト兵士が大量虐殺される場面に神の偽善を看破できる。
 
【副作用】宗教のもつ生臭さを知る。宗教を無批判に受け入れてしまう。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。  
キリスト教圏では壮大な感動傑作

 当時、ブロードウェイの若手俳優チャールトン・ヘストン氏を一躍大スターに押し上げ、後の「ベン・ハー」につなげた超大作である。まだ、30歳そこそこだったと思うが大変な貫禄だ。エジプトの王子時代は髭の無い顔だが、威風堂々として若者というより若々しい壮年といった趣だ。後半に髭面・爆発オールバックの行者のようなモーゼ・スタイルになるが、年齢不詳の老人のような落ち着きである。(余談1)

 聖書を読んだことが無い人でも、一種の「世界昔話」としては知れ渡っているエピソードだろう。旧約聖書「出エジプト記」(余談2)を映画化したもので、作中ではエジプトの奴隷として重労働に従事させられていたユダヤ民族をモーゼが率いて後の古代イスラエル王国が建国されるパレスチナへと脱出していく。エジプトのファラオはそれを許さず大軍を出撃させ紅海のほとりまで追い詰めるが、モーゼが神に祈ると紅海が割れて海底が表れ歩けるようになる。ユダヤ人全員が対岸に渡りきると海は元通りになり、後を追うエジプト軍は濁流にもまれて全滅する。この紅海の場面は映画史に残る特撮となった。(余談3)

 モーゼのライバルとなるファラオ・ラメセス役に名優ユル・ブリンナー氏、スキンヘッドがファラオにピッタリだ。エジプト軍の甲冑姿などはまさにファラオ。エジプト王子時代のモーゼの恋人で、モーゼが失脚追放された後にファラオの妃になるネフレテリ役にはアン・バクスター氏。
 ネフレテリの表情が素晴らしい。モーゼに恋する初々しい乙女から、不本意ながらラメセスの妻となり男の子をもうける。ユダヤの救世主として再び現れたモーゼと再会するが、かつての乙女だった頃の表情を取り戻すのも束の間、モーゼの変わりように戸惑い、「神」の災いによって息子が急死してからは母としてモーゼに激しい憎しみを抱き、嫡男を失った悲しみに弱気になったラメセスの尻を叩いてモーゼたちを追撃させる。紅海で軍勢を失ったラメセスが戻ってくると激しい語調で「モーゼの首は!」と怒鳴り、全てを悟った彼女はラメセスと並んで茫然と玉座にへたり込む。
 チャルトン・ヘストン氏やユル・ブリンナー氏だけなら単なる「大作」だが、アン・バクスター氏が良い演技をしてくれているので、聖書世界に感情移入しやすい。

(余談1)私が30歳前後の頃は、しばしば大学生と間違われた。40を過ぎた今でも30代半ばに見られる。逆に文章は年嵩に見られることが多い。昔、初老の市議と書簡で話し合いをやり、議論が煮詰まってきたので初顔合わせをしたら驚かれた。市議いわく「同い歳くらいと思っていた」

(余談2)意外に思うかもしれないが、回教徒も旧約聖書は読んでいる。キリストもイスラムもユダヤ教と関係が深い。回教徒にとってはモハメッドが最後に登場した預言者だ。

 むかし、ある集まりで知り合ったトルコ人から各種の豆で作ったデザートをご馳走になった。料理名はノアの箱舟に因んだもので、ノアたちが大洪水の後に食べていたモノに近いそうである。どうしてトルコのデザートに旧約聖書のノアが出てくるのか質問したら、「イスラム教にとっても旧約聖書は経典(けいてん)です。ユダヤ教もキリスト教も私たちと同じ神様を信仰しています。しかし、モーゼもイエスも神様の言葉を正確には聞いていないし伝えていない。モハメッドが正確に神様の言葉を聞き皆に伝えています」

 イスラム教は「十戒」と同じく偶像崇拝を厳しく禁じていたが、「親戚」であるユダヤ教やキリスト教には納税義務と「布教活動はしない」という条件付で信仰を認めていた。同じキリスト教内で異端審問や魔女狩りをしていたのとは大違いだ。ヨーロッパでは迫害されていたユダヤ人はサラセン帝国やオスマン・トルコ帝国内では比較的権利を認められイスラムとの関係は良好だったのである。
 しかし、第二次大戦後のイスラエル建国で千年単位の長きに渡って培ってきた友好関係は一気に崩壊する。キリスト教大国アメリカとユダヤ教のイスラエルが蜜月。歴史とは切ないものだ。

(余談3)実はこの作品はリメイク。映画黎明期の20年代に制作されている。監督は同じセシル・B・デミル氏。デミル監督は豪華志向の映像で客を集めて成功している。保守派からの批難をかわす目的で「十誡(じっかい)」を制作、ヒットする。
 この「十戒」にあるユダヤ人たちが戒律を破って金で偶像をつくり享楽に走る場面は、本来のデミル監督の趣味が出ていると噂されている。
 

 
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆☆☆ 秀
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆ 佳作

 
【受賞】アカデミー賞(特殊効果賞)(1956年)
 
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十戒 [DVD] ロジャー・ヤング
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