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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「王妃の紋章」 

王妃の紋章」 
唐滅亡後の絢爛豪華な血生臭い王朝絵巻

 
 
 
【原題】満城尽帯黄金甲
【公開年】2006年  【制作国】中・香  【時間】114分  【監督】張藝謀
【音楽】梅林茂
【脚本】張藝謀 曹禺
【出演】周潤發(国王)  鞏俐(王妃)  周杰倫(次男・元傑王子)  劉(長男・元祥王子)  李曼(蒋嬋)  倪大紅(蒋医師)  陳謹(蒋氏)  秦俊杰(三男・元成王子)
          
【成分】悲しい スペクタクル ゴージャス ロマンチック パニック 不気味 勇敢 セクシー 時代劇 10世紀 中国
        
【特徴】悲劇の国王には周潤發氏(チョウ・ユンファ)が、愛憎の渦中に置かれる王妃には張藝謀監督初期作からお馴染みの鞏俐氏(コン・リー)が扮する。周潤發氏は王様が似合う貫録俳優になった。鞏俐氏が若々しいのにビックリする。
 絢爛豪華な王朝絵巻の裏の血生臭さは、中国宮廷劇の真骨頂。
 
【効能】ゴージャスな映像で心が豊かになる。有史以来続いている人間社会の暗部を学べる。
 
【副作用】人間不信になる。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。


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なぜ、日本では評価イマイチか?
 
 張藝謀監督(チャン・イーモウ)が放つエンタメ豪華絢爛スペクタクル大作。
 彼の作品を初めて観たのは学生の頃だった。当時、張藝謀氏は監督デビューしておらず、陳凱歌監督(チェン・カイコー)の下でカメラマンを担当していた。その作品は「黄色い大地」「大閲兵」で、一言でいえば「人民中国」の古き良き清貧さが表れた名作である。後にハリウッドもビックリのゴージャス映画を連作する巨匠へと大躍進するとは、少し寂しさを感じる。同じ思いを抱く古くからのファンは少なくないと思う。

 作品としては、さすが完成度・充実度はともに高い。前半は中国のエンタメ時代劇らしく王宮内の冷戦を描く。ドロドロとした身内同士の愛憎劇や権力闘争、別に中国の王朝モノに限ったことではなく万国共通のエピソード(余談1)なのだが中国独特の体臭がある。ハリウッドの万人ウケ映画に馴染んでいる方には後味が悪くなるかもしれない。
 そして後半のスペクタクル合戦描写、よく訓練されたエキストラによる合戦場面は中国映画の得意とするところ、不意に大軍が攻囲し襲ってくる様は中国らしいクーデター描写である。

 さて、日本ではイマイチ反応がよくなく、Yahoo!映画サイトのレビューに至ってはイマイチどころか非常に辛い評価になっている。
 原因として、1つは前述したように古くからのファンは、贅を尽くしたゴージャスな映画を張藝謀監督に求めていないという事である。
 2つ目は中国独特の権力闘争や人間模様の描写だ。中国が制作した「三國志」を観て劉備玄徳が些か狡猾な悪党なのに違和感をもった方もいるだろう。なにしろ日本では潔くて品行方正な人物として描かれることが多いからだ。
 3つ目は、時代劇として日本では馴染みがない。中国の時代劇と聞いて多くの日本人が連想するのは、古い順から列挙すると始皇帝・項羽と劉邦・三國志・西遊記・楊貴妃・水滸伝・清朝の黄飛鴻などだろう。吉川英治氏・司馬遼太郎氏・横山光輝氏がヒット小説を創り出し、夏目雅子氏が三蔵法師に扮し、ゲームメーカー光栄が戦争シミュレーションゲーム化し、辮髪の李連杰氏(ジェット・リー)が映画で華麗な拳法を披露してきたおかげだ。

 で、映画の舞台となった時代だが、楊貴妃より後で水滸伝より前の時代だ。日本では陰陽帥安部晴明が活躍した頃あたりか。中国史に詳しい方でも殆どがノーマークだろう。事前の宣伝効果などを考えたら、ほぼ同様の物語展開で制作可能な楊貴妃を主人公にしたほうが、まだ日本ウケしたかもしれない。なにしろ楊貴妃は世界的にも広く知れ渡っていて、日本では小説に少女漫画に宝塚歌劇にカクテルの名前と素晴らしい知名度だ。(余談2)

 という訳で、日本での反応が今ひとつというのは、仕方が無いかなと思う。

(余談1)ヨーロッパの王宮モノではピーター・オトゥール氏主演の「冬のライオン」が名作だ。勧善懲悪・善悪二元論の構成に慣れ親しんでいる方が観ると、誰が味方なのか、主人公は善か悪か混乱してしまうだろう。
 ビスコンティ監督「山猫」は王宮モノではないが、没落する大貴族を描いた「美術作品」として名高い。

(余談2)もともと楊貴妃は唐の某親王の妃だったのを父帝玄宗が横取りし、愛欲の日々をおくるうちに楊貴妃の従兄楊国忠が立場を利用して専横を欲しいままにし唐の衰亡が始まる。楊国忠と対立していた安禄山は身の危険を感じ反乱を起す。
 いっそ安禄山も従兄も楊貴妃と関係をもっていた事にし、1人の女性をめぐって英雄たちがドロドロの政治抗争に明け暮れ、ラストは兵馬を動員しての大合戦、とすれば話題性は抜群となって面白いかなと思うのだが。それに豪華絢爛な舞台は楊貴妃にこそ似合う。そして楊貴妃に玄宗と安禄山ならスケールも大きくなった。

 ところで、息子から妻を横取りした時点の玄宗皇帝は、すでにけっこうなお歳だった。愛欲場面を描きすぎると、なかなかマニア好みの興味深いポルノになってしまいそうだ。

 当時の長安ファッションは現代でいえばパリかニューヨーク、日本の奈良の都も長安ファッションを真似た。
 中でも権勢を誇った藤原仲麻呂は大の唐好みで、官職名を唐風に改めたり、生活様式もテーブルにグラスで酒を呑むといった感じだったらしい。
 
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆☆ 優
 
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☆☆☆ 佳作

 
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