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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「東部戦線1944」 孤独を楽しむ時に〔35〕 

東部戦線1944」 
ロシアの「コンバット!」モノ佳作。

 


【原題】Звезда(ZVEZDA)
【英題】THE STAR
【公開年】2002年  【制作国】露西亜  【時間】94分  
【監督】ニコライ・レベデフ
【音楽】アレクセイ・ルィーブニコフ
【脚本】 ニコライ・レベデフ アレクサンドル・ボロジャンスキー エフゲニー・グレゴーリェフ
【言語】ロシア語 一部ドイツ語
【出演】イゴール・ペトレンコ(トラフキン中尉)  エカテリーナ・ヴリチェンコ(カーチャ通信兵)  アレクセイ・パーニン(マモチキン軍曹)  アレクセイ・クラチェンコ(アニカノフ軍曹)  アナトーリィ・グーシン(ブィコフ)  アンドレイ・イェゴーロフ(バラシキン)  ユーリィ・ラグタ(ブラジニコフ軍曹)  アマドゥ・ママダコフ(テムデコフ)  アルチョーム・セマキン(ヴォロビヨフ)  
             
【成分】スペクタクル パニック 勇敢 絶望的 切ない かっこいい 独ソ戦 戦争映画 1944年 ソ連
        
【特徴】政治色の薄い娯楽目的のエンタメ戦争活劇。ロシアでは大評判の作品だ。アメリカのようにむやみやたらと陽気に格好よく撃ちまくるのとは違い、主人公は日本の古武士の風格ただよう生真面目ストイックな若い将校なのが魅力。ヒロインも古く良き貞淑な女性像で、主人公とはプラトニックな関係、キスすらしないところが嫌味でなく、古く良き日本人の感性に合う。
 ドイツ軍はドイツ語を話すし、戦闘場面もリアル。ハリウッドのようなワザとらしい迫力が無いところが説得力ある。
 
【効能】娯楽活劇であるにも関わらず、戦争の残酷さや痛々しさを体感する不思議な効果がある。
 主人公のトラフキン中尉の寡黙でストイックな姿勢に古き良き時代の日本のヒーローを思い浮かべる。
 
【副作用】ハリウッド製戦争映画に比べ地味なので、物足りなさを感じる。アメリカ人のようなくだけた陽気さが無いので、全編陰気。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。  
ロシアでは大ヒット作

 公開が2002年とあるので最近の映画だ。旧ソ連時代と異なり、アメリカの戦争映画のように娯楽に徹する内容が制作できうる環境下にはある。共産党の宣伝工作が目的の内容ではなく単純に戦争活劇として楽しめるが、アメリカとの感性の違いを実感させるので興味深い。
 
 まず、映画音楽がロシア的だ。アメリカのような騒々しいバタ臭さは無い。またハリウッド映画にありがちな英語一色ではなく、「コンバット!」以上に徹底してドイツ兵はドイツ語を話す、当たり前のことだが。衣装考証は気になる箇所はあるが、ハリウッドよりはマシだ。(余談1)
 
 キャラ構成は、保阪尚希似の若い中尉(余談2)を隊長に、物静かな古参軍曹、お調子者の若い軍曹、モンゴル系の射撃の達人、ドイツ語が堪能な少年兵ら7名。アメリカのTVドラマ「コンバット!」と同じく分隊規模だ。ただ「コンバット!」に登場する主人公やレギュラーキャラは概ね陽気で、過酷な命令など出せば堂々と反抗するし愚痴や上官の悪口も言う。ところが映画の兵士たちはお調子者軍曹以外はみな真面目で口数が少ない。非常に厳しい任務を行なうわけだが、ほとんど愚痴も言わないし中尉の命令には素直だ。全員、若い中尉に対して畏敬の念を持っている。
 
 ヒロインの通信兵が中尉に一目惚れしても、部下たちは嫉妬せず遠くから微笑むだけだ。20歳代前半くらいに見える若い中尉は、まるで十字架を背負っているかの如くストイックな物腰であり、ヒロインからモーションを受けても遠慮がちに話すだけ、サヨナラも言わず出発する。ハリウッドなら中尉とヒロインが一夜をともにする場面も盛り込みそうなものだが、この作品は極めてプラトニック、好感が持てる。ヒロインはヒビアン・スー氏を白人顔にしたような感じで、清楚な可愛らしさがある。ハリウッド好みの派手な美人でないところが良い。

 時代は邦題にもあるように第二次大戦末期の1944年、場所はソ連とポーランドの国境付近。この時期になると西部戦線では連合軍がフランスに上陸し、東部戦線は総崩れでソ連領内のドイツ軍はほぼ駆逐されている。ドイツはジリ貧であり敗戦は確定なのだが、作品ではその背景はあまり出てこない。装甲車や短機銃など充実した装備の強力なドイツ軍が主人公たちに襲い掛かる。(余談3)
 主人公たちの任務は戦線を突破してドイツ占領地の斥候、地形や布陣の観測だけでなく敵の下士官や将校を拉致して情報を引き出しては殺す。中尉たちは緑の迷彩服を着ているのでドイツ兵の間で「グリーン・ゴースト」と恐れられている。捕虜をとり重要な情報を掴むごとに警戒が厳しくなり次第に追い詰められていく。
 
 殺戮場面と東ヨーロッパの長閑な森林の描写の対比がなかなか巧い。またヒロインがオペレーターを務める司令部へ定時連絡する様が、か細い命綱のような感があって切なさがある。また、前半の淡々とした展開から低予算映画と思いきや、後半でけっこう迫力ある戦闘場面を盛り込んでいてメリハリがある。
 
 古き良き時代の日本人が好みそうな戦争映画だ。

(余談1)特に好感をもったのは、ドイツ兵が史実どおり青々と短く刈上げにしている点だ。ハリウッド映画に登場するドイツ兵は髪が長すぎる。
 ただ、階級章や襟章の形が少し違うのと、この頃になると歩兵の多くは物資不足から短靴に切り替わっているのに、映画では七分長のジャックブーツを履いている。

(余談2)演じる俳優はイゴール・ペトロビッチ・ペトレンコ氏、本作出演時は24・5歳ごろ。ロシアの人気若手俳優のようだ。活躍の場はロシアに限定しているようだが、海外にも知られたロシアの娯楽作によく主演している。
 2013年ではロシアのTV局制作の「シャーロック・ホームズ」で主人公ホームズを演じている。う~ん、悪くはないがホームズを演じるには彼ではまだ少し若くて貫禄が無くて恰好が良すぎる気がする。(2013年12月14日記述)

(余談3)映画のラストではソ連の多大な犠牲でポーランド解放がなったと締めくくられているが、ポーランドのアンジェイ・ワイダ監督の作品にもあるように、ポーランド市民がドイツに対し戦いを挑んだ「ワルシャワ蜂起」は加勢することなく静観し見殺しにしている。もっともロシアの立場ではそれは口が裂けても言えないだろう。
 
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆ 良
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆☆ 名作

 

 
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