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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「ロビンとマリアン」 人生をふり返ろう〔6〕

ロビンとマリアン」 
晩年のロビンとマリアンを描く異色作

 


【原題】ROBIN AND MARIAN
【公開年】1976年  【制作国】英吉利  【時間】107分  
【監督】リチャード・レスター
【音楽】ジョン・バリー
【脚本】ジェームズ・ゴールドマン
【言語】イングランド語
【出演】ショーン・コネリーロビン・フッド)  オードリー・ヘプバーンマリアン)  リチャード・ハリス(獅子心王リチャード)  ロバート・ショウ(ノッチンガム代官)  ニコル・ウィリアムソン(リトル・ジョン)  イアン・ホルム(ジョン王)  ロニー・バーカー(-)  デンホルム・エリオット(-)  ケネス・ヘイ(-)  
             
【成分】泣ける 笑える 楽しい 悲しい ロマンチック 勇敢 切ない かっこいい 義賊 中世時代劇 12世紀末~13世紀初頭? 中世イングランド 
        
【特徴】晩年の老いたロビン・フッドマリアンの物語。悪徳代官と立ち向かうべく最期の戦いを描く。ロビン・フッドといえば弓の名手だが、本作では殆ど使わない。若い頃と変わらずロビンを愛するマリアンや、慕い従う老リトル・ジョン、そして多くの村民たちの姿が切ない。
 子育てのため映画出演のオファーを断り続けていたオードリーにとって、マリアン姫役は9年ぶりの復帰作。
  
【効能】人生を振り返るのに適した作品。仕事一筋・大義一筋で活躍してきた人は特に周囲の家族や仲間達の犠牲というものを認識するのに効果がある。
 
【副作用】ロビン・フッドが年寄りでドン臭く、マリアンもオバサン。かっこいいショーン・コネリーと天真爛漫な美少女オードリーが目当ての人はガッカリする。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。  
黄昏のカップル

 ビートルズファンにとっては、「A Hard Day's Night」や「Help!」を撮った監督というイメージが強い。1980年前後に思春期をおくった映画ファンにとってはクリストファ・リーブ氏の「スーパーマン」シリーズを担当した監督という認識かもしれない。いずれにせよ、軽い雰囲気のコメディータッチが得意な映画監督としての評判が大きいが、実はヨーロッパ中世のシリアスな時代劇も手掛けている。それが「ロビンとマリアン」だ。
 年老いたロビンを演じるのはショーン・コネリー氏、壮年の修道女となったマリアンにはオードリー・ヘップバーン氏。今にして思えば重量級キャストだ。

 さて、この映画を初めて観た時はまだ小学校を卒業するか中学に入った頃だったと思う。最初の印象は悪かった。
 というのも、子供の頃に抱いたロビン・フッドのイメージは、歳は30歳前後の若々しい大人で、大勢のならず者を従えてシャーウッドの森を根城に、山野を軽快に駆け巡り、百発百中の弓矢の腕で悪代官たちを懲らしめる義賊だった。(余談1)マリアン姫のイメージもハイティーンの乙女か、歳をとってもせいぜい20歳代前半のレディーでなくてはならない。ところが、この映画ときたらロビンは動くのも辛そうなお年寄りだし、マリアンも壮年のオバサンだ。一番気に入らなかったのは、ロビン・フッドなのに弓矢を使う場面が殆ど無かったこと、ラストになってやっと矢を射る場面が登場するが、子供にとっては「なんでやねん」と不満多々だった。

 しかし思春期は急速に価値観や美意識が変化する。大人になってから観ると、レスター監督や主演たちのリアリティーある構成と演技に心を動かされる。
 世間で広く浸透している弓の名人ロビンの活躍から20年近く経過した設定の物語だ。ロビンは老人になり軽快なアクションはできない。マリアンも乙女のままではいられない。この老いの演出と演技がリアルであるほど、実際の社会では奇蹟に近いエピソードが心に迫るのだ。それは、昔のシャーウッドの仲間が老いても気骨を失わず、若い頃と同じようにロビンを慕って一緒に戦ってくれる事、マリアンは他の男性のもとへ嫁いで当たり前なのに女性の盛りの時期を修道女として過ごす。ロビンは罪な男だ。

 時代劇を見慣れた子供の頃の私にとっては、佳境のロビンと代官の決闘はドン臭い。2人とも剣を棍棒のように振り回すだけ、しかも重たそうで辛そうな緩慢な動き。日本刀も重たいが、実際の居合抜きなどは俊敏で刀を軽そうに振り回す。
 しかし中世ヨーロッパの剣は見た目以上に重たく、しかも斬るよりも突くか棍棒のように叩く。甲冑も日本の鎧よりも重たいかもしれない。さらに対戦する代官は剣と斧の「二刀流」だ。そして2人ともいい歳をしている。実際の中世のチャンバラもこんな動きだったかもしれない。

 そしてラストだ。代官との決闘に勝つがロビンも深手を負う。シャーウッドの根城に戻りマリアンに毒を盛られ無理心中を仕掛けられる。マリアンの「犯行」は子供の頃は納得できなかった。しかし、大人になってから観るとマリアンに感情移入するようになった。
 ロビンを愛したがために普通の女性としての生き方を犠牲にしてしまった訳だ。やっと遅まきながら安穏とした幸せな日々がおくれると思ったら、ロビンは決闘で重傷を負う。現代医学では命にかかわる傷ではなくせいぜい全治数ヶ月、ところが不衛生な中世では瀕死の重傷、しかもロビンは老人だ。次第に弱って死んでいく様をマリアンは見ることになる。

 毒酒とは知らずに飲むロビン、「この酒はよく効く。すっかり痛みが無くなった」と喜ぶロビンを哀しげに見るマリアン。痩せたオードリーゆえに哀しみが強調される。毒と判ったロビンは最初は驚き、門前で胡座をかいて外を見張っていた老リトル・ジョンを呼ぶ。血相変えたジョンが部屋に入ると、命尽きようとしている2人が寝台に横たわっていた。「矢が飛んだところに俺たちを埋葬してくれ」と、ここでやっとロビンの象徴である弓矢が登場する。最期の力を振り絞って放たれた矢はロビンとマリアンの思いを乗せて空の彼方へ吸い込まれていく。
 リアルであり、なおかつロマンチックで切ない演出が光る作品、さすがレスター監督である。

(余談1)この映画が公開される数年前にTVドラマ「水滸伝」が放送されていた。西にシャーウッドの森あれば、東は梁山泊だ。中村敦夫氏が梁山泊に篭る義賊たちの若きリーダー林冲に扮し、宿敵宰相高俅には佐藤慶氏が扮した。
 中国の原版より日本人が親しみやすい内容に脚色編集されたドラマだ。例えば、原作の扈三娘は単なる男勝りの女性で殆ど活躍することなく下衆な男のもとへ嫁がされる。ドラマではまだ20歳代半ばの土田早苗氏が扮し林冲に次ぐ大活躍をしている。
 

  
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆ 良
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆☆ 名作

 
晴雨堂関連作品案内
ロビン・フッド [DVD] ケヴィン・レイノルズ監督 ケビン・コスナー主演
ロビン・フッドの冒険 特別版 [DVD] マイケル・カーティス監督 エロール・フリン主演
水滸伝 DVD-BOX 中村敦夫主演




 
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コメント

こんにちは

TB有り難うございます。

現在、当サイトとfc2の相性でTBが
お返し出来ません。

記事は大切に反映させて頂きます。
これからも宜しくお願い致します。

はじめまして。

この映画の存在は随分前から知っていました。
日野康一氏著「ショーン・コネリー」(芳賀書店)でストーリーや写真を見ていました。
だけど、あまり見たいと思いませんでした。
先日BS2から録画して見たら、なかなかどうして。
動きが鈍くなったショーン・コネリーのアクションがなぜかいいんですよね。40代50代になったリーマンが「昔ほど動けなくなった。」と言いながらも、草野球で頑張っているような。若者達から一目置かれるような。大人の余裕を感じます。
それとオードリー・ヘップバーン。40代後半女性ならではの美しさ。いいんじゃないんですか?僕が年を取ったからかも知れません。
コネリーの敵役ロバート・ショウもまたいい。「ロシアより愛をこめて」の時と違って澄んだ目をしている。ロビン・フッドは敵なんだけれど、でも親しみを感じているように思える。何だか嬉しかったです。
管理人さんがおっしゃるように重い剣を持った決闘って、あんなもんかも知れませんね。

それではまた。

Re: はじめまして。

蟷螂の斧氏へ
 
 子供のころに見たときは、正直ガッカリでつまらなかった。ラストも「なんでやねん!」でした。
 
 大人になってから、けっこう名作だなぁ、と思うようになり、40を過ぎた辺りからは涙が出る感動作に見えるようになりました。

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