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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

絶望から脱出しよう 9 「ラストキング・オブ・スコットランド」 

ラストキング・オブ・スコットランド
この映画こそ
アカデミー作品・監督賞となるべき映画だ。

 

 
【公開年】2006年  【制作国】米・英  【時間】125分  【監督】ケヴィン・マクドナルド
【原作】ジャイルズ・フォーデン     
【出演】フォレスト・ウィッテカーイディ・アミン大統領)  ジェームズ・マカヴォイ(ニコラス・ギャリガン)  ケリー・ワシントン(ケイ・アミン)  ジリアン・アンダーソン(サラ・メリット)  サイモン・マクバーニー(ストーン)     
 
【成分】悲しい パニック 絶望的 不気味 恐怖 独裁者 アフリカ 
 
【特徴】独裁者として知られるウガンダのアミン大統領が主人公。1人のノンポリ白人青年医師の視点から見たアミン大統領という構図で物語が展開している。興味本位な描き方ではなく、かなりリアリティを感じるアミン像だ。アミンに扮したフォレスト・ウィッテカー氏の演技が素晴らしい。
 なお、アミン大統領の遺族は、悪意ある映画だと非難している。
 
【効能】恐怖と絶望を目の当たりにした際の対処法のヒントになる。
 
【副作用】残酷場面でトラウマになるかもしれない。アミンの豹変過程で人間の怖い二面性を目にして人間不信になる可能性がある。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。


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独裁者を描くということは・・。
 
 アメリカ映画の底力を見せた作品。フォレスト・ウィッテカー氏の名演技が轟いた。本来ならこの作品がアカデミー賞の主要部門を独占するべきだと思う。ところが香港映画リメイクの「ディパーデット」がこの作品や「ドリームガールズ」を差し置いて受賞した。
 
 穿った見方かもしれないが、黒人やアジア人の台頭を嫌う保守派と映画を正当に評価していく公平派が対立して、黒人俳優個人に賞を与える代わりに目玉の作品賞と監督賞は白人のウレ筋監督とその作品にまわしてハリウッドの保守派との折り合いを付けたのではないか? R指定的表現が賞を逃したとの指摘もあるかもしれないが、だからといってリメイクに劣るとは思えない。
 
 アミン大統領というと奇行の多い独裁者という評判があり、大昔に「食人大統領」などとショッキングな内容というよりはエログロ・場末・興味本位な映画があった。B級というよりはD級といった方が良い。「ラストキング・オブ・スコットランド」もショッキングシーンはあるが、いまから観る人は「食人大統領」の先入観は捨ててほしい。(余談1)
 
 独裁者を主人公にした作品は描きやすいようで難しい。よく使われる方法はデフォルメを大きくして人格異常の「怪物」にしたほうが簡単でウケも良い。現実にヒトラーなどはそう描かれる事が多かった。独裁者に対する世間の偏見もあるが、なによりその独裁者によって弾圧された人々が「異常者」「怪物」でないと納得しないからである。少しでも「人間」として描こうとしたらたちまち「美化している!」と非難される。
 
 しかし、そうなると「異常者」「怪物」をなぜ民衆は支持してしまったのか、という疑問が残る。世論操作とか洗脳教育とか軍や警察の行使とかいろいろ理由付けはできるだろうが、それだけでは喜々として従う支持者たちの説明にはならない。何らかの人間的魅力・人間的カリスマがあるはずだ。単純な「異常者」「怪物」として描く事は、逆に独裁者という存在を安易に観てしまう危険がある。
 
 アミン大統領という素材はアメリカにとっては描きやすいかもしれない。これがヒトラーなら、アメリカの政財界に強い影響力があるユダヤ人に気兼ねしなければならないからだ。そしてアミンを主人公としながらも、語り部的役割を白人の側近にしたことも正解だ。欧米人にアフリカやアジアは理解しきれない。無理にアミンを直接描くよりも、白人側近の視点を経由した方がリアリティを損なわずに済む。またよしんばアフリカ人の感性に忠実だと、こんどはアメリカ観衆には感情移入できなくなる。「硫黄島」でも親米派で英語を解せる栗林中将というキャラをアメリカとの仲介的役割にすることでアメリカ観衆に感情移入しやすくしている。
 
 最後に素朴な疑問だが、もしウガンダの民衆が観たら、あるいは周辺諸国のアフリカ人が観たらどんな印象を持つだろうか? 「ラストエンペラー」のジョン・ローン氏演じる中国最後の皇帝溥儀はまるでヨーロッパの没落公国のプリンスみたいだったが、中国制作の「末代皇帝」で陳道明氏が演じる溥儀はワガママ粗暴のお坊ちゃんだった。つまり溥儀に対するイメージが欧米と現地中国とでは異なる。ウィッテカー氏のアミンもアフリカ人が観たら欧米的に見えるのだろうか?
 
(余談1)ウガンダのアミンが何故スコットランドにこだわったのか。大きな理由は、アフリカも長らくイギリス(イングランド)の植民地支配を受けてきた歴史があり、白人は敵だった。が、スコットランドも長らくイングランドの支配下にあり、同じ白人でも被支配者であるスコットランド人には親近感を持っていた。
 作中でも、アミンとジェームズ・マカヴォイ氏扮する青年医師ニコラスが出会った時、アミンは露骨に白人ニコラスに対して敵意を露わにするが、彼がスコットランド人であると知って急に警戒を解きフレンドリーになる場面がある。
 
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆☆ 優
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆☆☆ 金字塔

 
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映画「ラストキング・オブ・スコットランド」オリジナル・サウンドトラック
ホテル・ルワンダ プレミアム・エディション [DVD] テリー・ジョージ 
 
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アミン大統領 (1977年) エーリッヒ・ヴィーデマン
独裁者アミン―ウガンダの大虐殺 島田礼子
 

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ミハイル暁と申します、こちらからもTBさせて頂きますね。

民衆が熱狂的に支持されていたアミンが、徐々に狂っていった様子が良く分かったのが、この映画の成功ですね。もちろん、ウィッテカーの名演技あってこそだと思います。
それにしても、やはり「ディパーデット」の受賞は、功労賞にしか思えないですよね。。。
[ 2007/12/24 19:43 ] [ 編集 ]
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