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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「ブレイブハート」 感動からエナジーを得よう〔3〕 

ブレイブハート
久しぶりの感動歴史超大作
メル・ギブソンの目の演技に注目。

 

ブレイブハート [DVD]
ブレイブハート(2枚組) [Blu-ray]
 
【原題】BRAVEHEART
【公開年】1995年  【制作国】亜米利加  【時間】177分  
【監督】 メル・ギブソン
【音楽】ジェームズ・ホーナー
【脚本】ランドール・ウォレス
【言語】イングランド語 一部フランス語 ラテン語  
【出演】メル・ギブソン(ウィリアム・ウォレス)  ソフィー・マルソー(イザベラ王女)  パトリック・マクグーハン(エドワードI世)  キャサリン・マコーマック(ミューロン)  ブレンダン・グリーソン(ハミッシュ)  アンガス・マクファーデン(ロバート・ザ・ブルース)     
 
【成分】悲しい 泣ける スペクタクル 勇敢 スコットランド 13世紀
 
【特徴】13世紀、スコットランド独立戦争の英雄ウィリアム・ウォレスを主人公にした久々の重厚かつ感動の歴史超大作。メル・ギブソン氏の初監督にしてホームラン作である。映画音楽も秀逸。
 時代考証は作品のためにかなり改編されているが、作品の質を落とすほどの影響は無く、むしろスコットランドのナショナリズムを煽るほどの政治的影響力を発揮する。
 
【効能】主人公の純粋さ直向さ情熱に感涙する。
 
【副作用】時代考証が不正確なので、こだわる人は不快感。血と汗の臭いが漂いそうな映画なので、癒し系志向には不快感。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。  
時代考証無視だが
スコットランド人まで感動させる作品。


 メル・ギブソン氏が監督主演の二足のわらじで放つ名作。ハリウッドは制作者としての彼を大絶賛したが、観客はぜひ彼の演技も賞賛してほしい。
 大筋では史実に沿っているものの、時代考証はかなり無視している。どのくらいかを日本を舞台にしたハリウッド映画に例えれば「ラストサムライ」程度である。にも関わらず、スコットランドではかなり支持されていて、近年のイギリスからの分離独立を目指すスコットランド国民党躍進に寄与したともいわれている。
 
 13世紀のスコットランドが舞台で、隣国イングランドの侵略と植民地化への抵抗に立ち上がった実在の英雄物語である。ストーリー展開はカーク・ダグラス氏主演の「スパルタカス」とダブる部分が多い。メル・ギブソン氏は少年時代に「スパルタカス」を観て感動し、本作品制作にあたっては随分参考にしたとインタビューで語った。
 私も「スパルタカス」に感涙した一人であり、スコットランドの歴史を知っているので、観る前から展開と結末が予想できる。にも関わらず泣いてしまう場面が多すぎた。これはメル・ギブソン氏らの演出と演技の賜物である。
 
 まず、子役の使い方が旨いし子役もそれに応えて良い演技をしている。主人公ウイリアム・ウォレスは最初10歳くらいの少年で登場する。大好きだった父親を殺されて茫然となり、涙も流さず父親の遺体の胸の辺りを触りすぐに手を離すのは効果的だ。死を思い知らされる雄弁な場面である。また、人間は大きな悲しみに押し潰されると逆に泣いたり騒いだりはできないものである。むしろ喜怒哀楽が顔から消える。
 
 父親たちの葬式の時もウォレス少年は黙ったまま、親友が慰めても反応は無い。そこへ6つか7つくらいの幼馴染みの少女が小さな手で花を一輪手渡す。この少女の表情も幼子とは思えない良い演技だった。このとき少年は緊張が解けたのか我に返ったのか、目からにわかに涙が滲み流れ出す。
 
 親兄弟を失った少年を突然現れた伯父が引き取る。初対面の伯父に戸惑うも、「お前のお祖父さんが殺された時も見送った」との台詞で、二人の間の垣根は取り払われるともに、観客にはイングランドとスコットランドの関係も雄弁に表す。
 成人したウォレスをメル・ギブソン氏が演じるのだが、最初観た時は「えらく老けた青年だ」と思った。この時の設定年齢は20歳代と思う。しかし当時の衛生状態と栄養状態を考えれば、20歳を過ぎれば急速に老けてくる。現在より10歳以上は加算したほうが良いので、それならギブソン氏で妥当なのだろう。
 
 ギブソン氏の演技で特筆なのは瞳である。紹介したい場面は無数にあるが、中でもウォレスの良き理解者であり盟友でもあったブルース伯爵の裏切りの時の表情である。
 物語の展開上、大事な決戦の時にブルース伯爵が現実に妥協して敵側に寝返る事は多くの観客が予想できたであろう。そんなありふれた場面をギブソン氏の演技で壮絶な場面にしている。私は映画館で泣いてしまった。本来はスコットランド軍を率いるべきブルース伯爵がイングランド王の従騎士として戦に参加していた。
 この平凡な場面で、ギブソン氏は非常に痛々しい表情を見せる。ブルース伯爵を怒り露に罵るでなく、睨み付けるのでもなく、ただ定まらない視点、声を発しようにも出ず、やがて瞬きしながら半泣きのような顔でへたり込む。まさに絶望と無力感にうちひしがれた顔である。
 
 ギブソン氏の演出も光ったものは数多くあったが、中でも効果的なのはシンプルでも印象深い剣の描写である。ウォレスを象徴するあの長剣、あれはクレイモアと呼ばれていてスコットランド勇士の象徴である。聞くところによると、重くて長いため大男の手練でないと使いこなせず、中国三国志の関羽が持つ青龍刀のような存在かもしれない。クレイモアはスコッチウイスキーの銘柄にもなっている。
 
 ウォレスがスターリングの戦で大勝して戦友等に向かってクレイモアを片手に高々とあげて雄叫びを発し、力強く地面に突き刺してから戦友らのもとへ歩み出す。画面には血染めのクレイモアだけが青空を背景に揺らいでいる。
 
 ラストの場面では、ウォレスの遺志を継ぎかつての盟友ブルースがイングランド軍に対して突撃を行おうとする。従軍していたウォレスの親友がウォレスの形見のクレイモアを投げ、草原に突き刺さったところでブルースが剣を抜き、ウォレスの戦友たちが「ウォレス!」と合唱し突撃する。最後に誰も居ない草原に突き刺さったままのクレイモアが風に吹かれている様が映ってエンドへと流れる。ヒロイックファンタジーでもなかなか剣をここまで印象的に描写できない。
 是非、皆さんも観てほしい。
 
 余談だが、この映画で素晴らしい脚本を書いたランドール・ウォレス氏は珍作「パールハーバー」の脚本も担当している。
 エキストラの数は「青き狼・・」よりもずっと少ないが、はるかに迫力がある。

【注目点】現在の吹き替え版は改善されたかもしれないが、英語と日本語のニュアンスの違いで苦慮の跡がある。

 ラスト前の処刑のシーンで、ウォレスは最後の叫びをあげる。その台詞が一言「Freedom!」だ。字幕では「自由万歳!」、吹き替えでは「我に自由を!」になるが、両方ともしっくりこない。
 日本語化した「フリー」や「フリーダム」は単なる「自由」「勝手気まま」の意味でしか使われないが、イングランド語の「free」「Freedom」には「解放」の意味がある。より具体的に言えば「拘束から解放された」というニュアンス。もちろん翻訳者もそれは判っていて、ウォレスが捕虜を解放するときの台詞「Scotland free!」を「スコットランドは独立した」と意訳している。
 ウォレス最期の叫びを日本人の感性に沿った意訳をするならば、「スコットランド万歳!」の方がイメージを掴みやすいかもしれない。少なくとも「我に自由よ」とか「自由万歳」よりはウォレスの心情に近い。日本語が解かるスコットランド人が聞いたら「ぜんぜん違う」と言うだろうが。

 次にラストシーンでウォレスの盟友ロバート・ザ・ブルースが兵士たちの前で短いスピーチをする。翻訳者は字幕も吹き替えも原版台詞通りに「ウォレスと流した血を今度は私と流さないか」と訳したが、字幕はともかくとして日本語だと活舌が悪く長ったらしく聞こえる。実際にこんな日本語で兵士に呼びかけたらよく聞き取れない。
 意訳すればやはり「ウォレスの戦友たちよ! 俺と一緒に戦わないか!」だろう。


 
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆☆☆ 秀
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆☆☆ 金字塔


【受賞】アカデミー賞(作品賞)(1995年) ゴールデン・グローブ(監督賞)(1995年)

晴雨堂関連作品案内
ブレイブハート ― オリジナル・サウンドトラック
スパルタカス スペシャル・エディション 【プレミアム・ベスト・コレクション\1800】 [DVD] スタンリー・キューブリック
 
晴雨堂の関連書籍案内
ブレイブハート (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション) ランダル・ウォレス
スコットランド 歴史を歩く (岩波新書)
図説 スコットランドの歴史


 

 
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