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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「アレキサンダー」 孤独を楽しむ時に〔37〕

アレキサンダー」 
社会派オリバー・ストーン監督が描く
アレキサンダーの陰の部分

 


【原題】ALEXANDER
【公開年】2004年  【制作国】亜米利加  【時間】173分  【監督】オリヴァー・ストーン
【音楽】ヴァンゲリス
【脚本】オリヴァー・ストーン クリストファー・カイル レータ・カログリディス
【出演】コリン・ファレルアレキサンダー大王)  アンジェリーナ・ジョリー(母后オリンピアス)  ヴァル・キルマー(父王フィリッポス)  アンソニー・ホプキンス(晩年のプトレマイオス)  ジャレッド・レトー(ヘファイスティオン)  ロザリオ・ドーソン(后ロクサネ)  ジョナサン・リス=マイヤーズ(カッサンドロス)  ゲイリー・ストレッチ(クレイトス)  クリストファー・プラマー(アリストテレス)  ジョセフ・モーガン(-)  ニール・ジャクソン(-)  ラズ・デガン(-)  ジョン・カヴァノー(-)  コナー・パオロ(-) 
  
【成分】悲しい スペクタクル 勇敢 切ない かっこいい 時代劇 古代ギリシア史劇 紀元前4世紀 ギリシア 中東
  
【特徴】社会派オリバー・ストーン監督がアレキサンダー大王の一生を壮大なスケールで描く。俯瞰から眺めたペルシアの大軍の中を突撃するアレキサンダー軍の合戦場面はリアル。CGで再現したメソポタミアの古都バビロニアの光景も煌びやかで感動である。
 社会派のオリバー・ストーン監督らしく、華々しい英雄として描かず、アレキサンダーの屈折した陰の部分を強調。
 
【効能】真夜中に鑑賞すると、孤高のアレキサンダーの孤独を体感する。
 
【副作用】ダイジェスト版的伝記映画で白ける。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。  
名監督でも得手不得手はあるか・・。

 社会派監督として名高いオリバー=ストーン氏が放つ歴史超大作だ。しかし名監督といえども向き不向きがある事を痛感する。
 
 アレキサンダーはヨーロッパ史上初のスーパーヒーローといっても良い。後のローマの独裁者カエサルやフランスの皇帝ナポレオンに匹敵するか、それ以上の大人物だ。何しろ、弱冠20歳でマケドニア王(余談1)に即位するや、精鋭3万の軍勢を率いて当時の超大国ペルシアに戦いを挑み連戦連勝を重ねペルシア丸ごと併呑しただけでなく、インドまで攻め入り領土を切り取った。まだまだ十分戦って征服できる力があるにも関わらず、部下のホームシックでやむなく撤退し、絶頂期のはずなのに突然30代前半(余談2)の若さで死去、帝国は瓦解分裂する。若いみそら志なかばにして斃れる物語は感動をよぶ。日本の源義経しかり沖田総司しかり。優秀な若者であればあるほど感動を誘う。

 ただ、この作品についてはアレキサンダーの良さはあまり出ていない。義経のように颯爽と崖を馬で駆け下りて平家の大軍を蹴散らす様はない。幕末の洛中で無敵の剣を誇った総司の鋭さも無い。絶頂期が光り輝けば輝くほど最期の無念さが引き立つのだが、このアレキサンダーは前編に渡って屈折した暗さがある。最初に父親が母親に対してDVまがいの男女の営みをする様を幼子のアレキサンダーが目撃する。父親との確執と母親との愛憎、それを埋めるように部下であり幼友達との同性愛。

 肝心のペルシア軍との合戦は、CGを駆使して俯瞰からのペルシアの大軍を映し、アレキサンダーの騎馬軍団が斬り込むように突撃する様が描写されて入るが、単に大勢のエキストラたちが蠢いているだけで、確かに実際の合戦の光景を考えたらストーン監督の描写通りかもしれないが、映画としては面白みが無い。戦術戦略の天才アレキサンダーがなぜペルシアの大軍に勝てたのかを表すシーンが少なすぎるのだ。ただ無茶な突撃をして、何となく勝っただけの印象だ。これではよく無茶な王に家来たちが付いていったものだと不思議に思う。とてもインド遠征まで部下の心はもたず、もっと早い時期に毒殺されたかもしれない。
 
 久々の古代ローマ史劇「グラディエーター」の成功によって、「トロイ」や「キングダム・オブ・ヘブン」そしてこの「アレキサンダー」と数年の間にハリウッドで2時間を越える大作史劇が続いた。その中で素材として最も有名なスーパーヒーローを主人公に据えながら、作品としては大味感は否めない。いくらアレキサンダー大王が短い人生だからといって、いくら3時間弱の時間をかけたからといって、幼少期から最期まで扱っては伝記映画にありがちなダイジェスト版的内容は避けられない。
 それに、英雄を描写するには光と影の両方を表現しなければ、エンタメとして成り立たない。影の部分だけで3時間は些か疲れる。

 ただ、アレキサンダーを演じた主演のコリン・ファレル氏とさほど歳が変わらないアンジェリーナ・ジョリー氏の母親ぶりは良かった。特に父親暗殺事件で魅せた死神のような目付きは素晴らしい。

(余談1)文化の世界的先進国であったギリシア都市国家アテネやテーベと違い、マケドニアはギリシア北方の後進国に過ぎなかった。民主政体をとっていたアテネなどの都市と違い王政で一夫多妻制など明らかに文化が異なっていたがギリシア人であることを主張し古代オリンピック競技会にも参加していた。が、紀元前5世紀のペルシア戦争ではペルシアについたりと、ギリシアらしからぬ姿勢もとった。
 アテネを中心とするギリシア勢の躍進により、マケドニアは完全にギリシア側につき、積極的にギリシアの先進文化を取り入れるようになる。(作中でも、アレクサンダーは著名な哲学者アリストテレスに師事する)ところが、アテネが他の同盟都市に対して権勢をふるいはじめ不満を持つ都市との間でペロポネソス戦争などを起こし疲弊していくとマケドニアは力をつけ、アレキサンダー大王の父フィリッポスの代にはギリシア全土の盟主となる。

(余談2)当時の30歳も現代の30歳も生理的には著しい差は無い。たとえば、私はいま42歳だが、アレキサンダー時代の42歳は白髪の老人というわけではない。平均寿命に対する大きな誤解である。
 ただ、現代なら数日入院するだけで治った病や怪我は当時では死に直結していた。現代ならまだ同窓会をやっても欠員は殆どいないし、いても交通事故などの死亡だろう。当時ではそろそろ病死する幼馴染も出始める。私は20年後の老後というものを当たり前のように考えることができるが、当時の42歳では10年後を確実におくることができる保証は無い。その違いはあるだろう。
 

  
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆ 良
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆ 佳作

 
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映画『アレキサンダー』

原題:Alexander アレキサンドリア、世界の歴史に燦然と輝く、その名を残したアレキサンダー大王。32歳で生涯を閉じるまでの彼の偽らざる苛酷な運命の物語・・。 アレキサンダー大王(コリン・ファレル)の死後40年、エジプト王となったプトレマイオス(アンソ...

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