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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「死霊のはらわたⅢ キャプテン・スーパーマーケット」 寂しさをまぎらわす時に〔17〕 

キャプテン・スーパーマーケット」 
奇才のジョーク

 


【原題】ARMY OF DARKNESS
【公開年】1993年  【制作国】亜米利加  【時間】89分  
【監督】サム・ライミ
【制作】ルース・キャンベル ロバート・G・タパート サム・ライミ
【音楽】ジョセフ・ロドゥカ
【脚本】サム・ライミ アイヴァン・ライミ
【言語】イングランド語
【出演】ルース・キャンベル(アッシュ/アシュレイ・J・ウィリアムズ 死霊アッシュ二役)  エンベス・デイヴィッツ(シーラ)  マーカス・ギルバート(アーサー王)  イアン・アバークロンビー(-)  リチャード・グローヴ(ヘンリー公)  ブリジット・フォンダ(リンダ)  パトリシア・トールマン(-)  テッド・ライミ(-) 
  
【成分】笑える ファンタジー スペクタクル パニック 不気味 勇敢 セクシー コミカル ホラー 中世ヨーロッパ?
  
【特徴】一応、「死霊のはらわた」1・2の続編なのだが、作品内容はホラーから完全にコメディになっている。主人公アッシュは悲劇のヒーローから自己中のコメディアンに変質、一人芝居で笑わしてくれる。
 骸骨の群が拉致した全裸美女を慰み者にしようと墓場に引っ立てたり、拉致したヒロインをゾンビ・アッシュが衣服をひん剥いて手篭めにして死霊に染め上げてしまうなど、ライミ監督の悪趣味が光る。
 
【効能】アッシュの自己中ドタバタ喜劇に寂しさが吹き飛ぶ。怪談を観た後の夜の恐怖を吹き飛ばす。
 
【副作用】一作目のコンセプトからの逸脱に不快感。ライミ監督の悪趣味に嫌悪感。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。  
ホラーで遊ぶライミとキャンベル。

 前作で主人公は中世ヨーロッパ風の幻想世界に放り出されるという意表を突くラストとなった。本作はその後日談のような体をとっている。
 タイトルは「死霊のはらわた3」となるべきなのだが、原題も邦題も前2作とは異なる。原題では悪霊・邪悪などを意味する「EVIL」がはずされ、邦題では「キャプテン・スーパーマーケット」などとタイトルだけでは前2作を連想することはできない。

 さて、今回の原題と邦題、なかなか体を表している。「死霊のはらわた」のシリーズなのは間違いないのだが、もはや内容は前2作とは大きく趣旨が異なっているからだ。ヤフーのデータでは原題「ARMY OF DARKNESS(暗黒軍団)」となっているが、作中では「キャンベルVS暗黒軍団」になっていたと思う。もはやライミ監督は役名のアッシュではなく、怪優となった盟友キャンベル氏を「主役」ではなく「主人公」と捉えているようだ。
 邦題は劇場公開版のラストを尊重して「キャプテン・スーパーマーケット」とした。「スーパーの店長」というより「スーパーのヒーロー」と解したのだろう。1作目の血まみれオドロオドロしい恐怖は無く、颯爽と歌舞伎や戦隊ヒーローのようにポーズをキメるコミカルな青年になった。

 内容は完全に開き直ったかのようなブルース・キャンベル氏の1人芝居的コメディーだ。1作目では控え目な優男的普通の若者だったのだが、ここでは我がまま言い放題の濃い顔の自己中人間。とにかく周囲の迷惑を考えずに勝手放題やりたい放題である。おまけに親切に教えてもらった呪文を偉そうに受け答えしながら結局憶えず、誤った呪文を唱えて無数の死霊を解き放ってしまうドジまでやらかす。
 前作では片腕が主人公に叛乱を起こすが、今回は主人公から分離したキャンベル氏が本家を殺して取って代わろうとする。キャンベル小人が大勢襲ってきたり、ゾンビと化した分身キャンベルがゾンビ笑いしながら骸骨軍団を率いて戦いを挑んできたり。このゾンビ・キャンベルは本人をさらにデフォルメした悪漢。(余談1)
 
 第1作ではライミ監督もキャンベル氏も映画人的野心のハングリー精神でシビアにメガホンを取ったり演じたりしていただろう。もしかしたら俳優を雇う銭が無かったから盟友キャンベル氏を主役にしたのかもしれない。しかしこの3作目では1作目のシビアさのかけらも感じさせない。余裕なのか徹底的にアッシュことキャンベル氏を縦横無尽に活躍させて楽しんでいる。
 ラストは劇場公開版のハッピーエンドバージョンと、ライミ監督オリジナルのブラックユーモアバージョンの2パターンがある。私はどちらかといえば劇場公開版のほうが気に入っている。無事に現代に戻りスーパーの店員に落ち着くのだが、脈絡もなく死霊が襲い掛かってきて難なく蹴散らし撃ち倒し、恋人の前でキメポーズをする。石原良純的濃い顔でキメられると微笑ましい。まさに「キャプテン・スーパーマーケット」に相応しい庶民のヒーローだからだ。
 オリジナル版は爆笑モノなのだが、2人の藤子不二雄氏や永井豪氏らが同様パターンのドンデン返しの伝奇モノをよく描いていたので私にとっては当たり前すぎていた。

(余談1)2作目では成りを潜めたお色気場面が再び強いインパクトで復活する。今度は木の枝が襲ってくるのではなく、死霊たちは人間との決戦を前に景気づけに若い容姿端麗の美女を複数名拉致して慰みモノにする。死霊によって拉致されたヒロインもソンビの首領となったクサヤ的キャンベルの前に立たされ服を剥ぎ取られ手込めにされてしまう。次の場面ではヒロインもゾンビ化して登場する。

 そういえば、本作の数年前に「スタートレック」のチェコフ少尉ことウォルター・コーニッグ氏主演の「ムーントラップ」という作品がある。アポロ11号月面到達20周年記念と大層に謳われた映画だが内容は極めてB級、それにブルース・キャンベル氏は主人公の相棒役として出演している。
 月面で謎の生物によって殺され遺体を乗っ取られてゾンビと化したキャンベル氏は、ゾンビ笑いをしながら主人公たちに襲い掛かるのである。しかもそのシチュエーションたるや、月面に簡易テントを張って主人公とヒロインが愛し合っているところを窓から覗き見るというキャンベル氏の個性を最大限に活かしている。
 ライミ監督はこの場面を見てイメージを膨らませたのか?
 
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆ 良
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆☆ 名作

 
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