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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「白バラの祈り ゾフィー・ショル、最期の日々」 家族と一緒に考えよう〔4〕 

白バラの祈り ゾフィー・ショル、最期の日々
できれば「前作」と一緒に。

  

 
【原題】Sophie Scholl – Die letzten Tage
【公開年】2005年  【制作国】独逸  【時間】121分  【監督】マルク・ローテムント
【音楽】ラインホルト・ハイル ジョニー・クリメック
【脚本】フレート・ブライナースドーファー
【言語】ドイツ語     
【出演】ユリア・イェンチゾフィー・ショル)  アレクサンダー・ヘルト(ロベルト・モーア尋問官)  ファビアン・ヒンリヒス(ハンス・ショル)  ヨハンナ・ガストドロフ(エルゼ・ゲーベル)  アンドレ・ヘンニック(ローラント・フライスラー裁判官)  フロリアン・シュテッター(クリストフ・プローブスト)  リリー・ユング(ギゼラ・シャーテリング)   ペトラ・ケリング(マグダレーナ・ショル)

【成分】悲しい 切ない 恐怖 法廷 ドイツ ミュンヘン 1943年 第二次大戦
 
【特徴】同様のテーマでゾフィー・ショルを主人公にした映画「白バラは死なず」が1982年に公開されているが、本作はそのリメイクではない。近年、ゾフィーの尋問記録が発見され、「白バラは死なず」では描かれなかった逮捕後のゾフィーが描かれている。

 「白バラは死なず」では実際のゾフィーより童顔の女優が演じていたが、本作は骨太さが似ている女優が演じている。
 
【効能】権力の暴走を看過する事への罪悪感を自覚する。
 
【副作用】権力の本当の姿を見て怖くなる。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。  
新たに発見された尋問記録によって映画化。

 この映画の噂を聞いたとき、私は1982年公開の「白バラは死なず」の事だと思った。ところがよくみると2005年制作なので、同じテーマの映画が最近になってまた創られていた事を知った。(余談1)
 
 前作では殆ど表現されていない逮捕後のゾフィーの場面を重点に描いている。これは尋問記録が近年になって発見されたためである事を知った。それから前作と違い、今回の主役は実際のゾフィーに容姿がよく似た俳優が起用されている。
 
 ゾフィーは大学に合格して地方から大都会ミュンヘンにやってくるのだが、同じ大学にいる兄や友人たちが反戦平和というナチ政権下では危険な活動をしている事を知り、たしか実際のゾフィーは当初反対していたと思う。リスクが大きすぎる割に効果がない、という現実的な考えからだった。しかし様々な出来事と葛藤の末、積極的に運動に参加するようになる。一度、決心してしまうと、ゾフィーは他のメンバーよりも強い活動家になる。
 
 当時の言論活動の窮屈さは大変なものだ。郵便局で大量の切手を買うだけでも足がつく。友人や恋人でも同志でなければ心を許せない。反骨の反ナチ教授も身を守るためにユダヤ人の悪口をナチ党員の学生の前で披露しなければならない。ゾフィーたち数人の学生にできるのはビラをまいたり、これとおもう有識者たちにDMを送る事ぐらいだ。しかし当局は共産主義者の大規模な組織的行動と疑う。
 
 今回の作品では尋問官の葛藤もよく現れている。ゾフイーと尋問官のやり取りのためにこの映画ができたようなものである。前作では、死刑を執行する中年女性の刑務官が、まるで気の毒な境遇の若者を哀れむような表情でゾフィーをいたわるしぐさで断頭台に寝かせる場面がある。あの場面と同じ表情を尋問官にも見た。
 そしてゾフィーを下劣な裏切り者として処断しようとする判事もまた尊大で冷酷なモンスターではなく葛藤を抱えた生身の小役人だ。
 
 私は不屈の精神をもった英雄ゾフィーとして観てほしくない。彼女は最初の頃は他のドイツの少女とそれほど変わりはない平凡な人間だったと思う。また尋問官も刑務官も判事も悪鬼のごとく血を啜る化物ではない。真面目な公務員である。すべて人間が手掛けた行為だ。悪魔でも神でもない。その点を欠落させると、いたずらに物事をステレオタイプに捉えて、世間に踊らされるだけである。(余談2)
 
 残念ながら、前作はビデオ化されていないようだ。もちろん、ドイツ本国にはあるだろうが日本では存在しない。できれば前作とあわせて見てほしい作品である。

(余談1)「白バラ」の意味は諸説あるが、純潔・純粋・秘匿を意図するらしいので、様々な政治勢力や思想などとは関係なく、ただ素朴に人間の良心に忠実でありたいというのがゾフィーたちの考えらしい。

 「白バラは死なず」も「白バラの祈り」も主演女優は実際のゾフィー・ショルに背格好が似ている者を起用しているが、雰囲気はそれぞれ特色がある。

 まずは実際のゾフィー・ショル

実際のゾフィー・ショル。
ミュンヘン大学に入学したころのゾフィー。21歳頃。

 写真うつりがイマイチ、おそらく実際に会うと可愛らしい女子大生だったろうと思う。もっと幼い時期に撮影されたと思われる横顔の写真は可憐なショートカットの美少女だった。

「白バラは死なず」のレナ・シュトルツェ。
白バラは死なず」でゾフィーを演じた頃のレナ・シュトルツェ。

 「白バラは死なず」でゾフィーを演じたレナ・シュトルツェ氏は童顔、若い頃の八千草薫氏にも雰囲気が似ている。上記写真と見比べると確かに面影が似てなくもないが、可愛らしすぎて骨太さに欠けるような気がする。

「白バラの祈り」のユリア・イェンチ
白バラの祈り」のユリア・イェンチ

 今回のゾフィー役のユリア・イェンチ氏はがっしりとした顎など実際のゾフィーの骨太さが似ている。尋問官や判事との鬼気迫る対決を演じるにうってつけだろう。
 
(余談2)「ヒトラー 最期の十二日間」で印象深い役を演じた俳優が、本作でも出演している。外交官ヘーヴェルを演じたアレクサンダー・ヘルト氏が本作では尋問官に、モーンケSS少将を演じたアンドレ・ヘンニッケ氏が判事役になっている。いずれもナチスに残っていた良心の欠片を滲ませている。


 
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆☆ 優
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆☆☆ 金字塔

  
晴雨堂の関連書籍案内
白バラは散らず 改訳版―ドイツの良心ショル兄妹
「白バラ」尋問調書―「白バラの祈り」資料集
「白バラ」―反ナチ抵抗運動の学生たち (CenturyBooks―人と思想)
白バラを生きる―ナチに抗った七人の生涯
 

 
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