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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「アクロス・ザ・ユニバース」 青春回帰〔30〕

アクロス・ザ・ユニバース」 
新機軸ミュージカルの傑作。




【原題】ACROSS THE UNIVERSE
【公開年】2007年  【制作国】亜米利加  【時間】131分  
【監督】ジュリー・テイモア
【音楽】エリオット・ゴールデンサール
【脚本】ディック・クレメント イアン・ラ・フレネ
【出演】エヴァン・レイチェル・ウッド(ルーシー)  ジム・スタージェス(ジュード)  ジョー・アンダーソン[俳優](マックス)  デイナ・ヒュークス(セディ)  マーティン・ルーサー・マッコイ(ジョジョ)  T・V・カーピオ(プルーデンス)  ジョー・コッカー(-)  ボノ(-)  エディ・イザード(-)  サルマ・ハエック(-)  ロバート・クロヘシー(-)  ディラン・ベイカー(-)  リンダ・エモンド(-)  リン・コーエン(-)  ビル・アーウィン(-)  ハリー・レニックス(-)  ローガン・マーシャル=グリーン(-)  
  
【成分】泣ける 笑える 楽しい 悲しい ファンタジー ロマンチック 不思議 勇敢 知的 切ない セクシー コミカル イギリス アメリカ ベトナム戦争 1960年代末 ミュージカル 
  
【特徴】ビートルズの楽曲だけでなく、ビートルズという存在・ビートルズが活躍した時代全てを分解して全く別の男女6人激動60年代恋物語に組み立てなおしたミュージカル。
 
【効能】観終わると心が晴れ晴れして明日への希望に満ち溢れる。1970年前後で青春時代を過ごした人には強い郷愁を感じる。
 
【副作用】ビートルズマニアにウケるだけの一種のオタク映画にしか見えない。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。  
U2のボノがカメオ出演。

 他の作品レビューでも書いた事があるが、私はミュージカルが苦手である。名作「ウエストサイド物語」をコメディーと勘違いしたほどだ。しかもビートルズの楽曲をミュージカルにするとの前評判、半信半疑だった。駄作を覚悟した。(余談1)

 他の作品レビューでも書いたように、私は小6の頃からビートルズが好きで、特にジョン=レノン氏には崇拝に近い感情を持っている。映画タイトルになっているジョンの歌「Across the Universe」(余談2)はお気に入りの楽曲、ゆえに迷わず映画館へ行った。そして苦手なミュージカルであるにも関わらず、作品世界にのめり込み、主人公たちに感情移入し、観終わった後は「DVDが発売されたら絶対に買うぞ」と心に決めた。

 冒頭、恋煩いのような顔つきの主人公ジュードが浜辺で「Girl」を歌い出す。年恰好は「Hey Jude」を歌っていた1968年当時のポール=マッカートニー氏に似ている。
 そこへイキナリ爆発音のような大音響、主人公の1人である女性歌手セディがヘビメタ調の「Helter Skelter」を吼え、ベトナム戦争を暗示するような映像が飛び出す。(余談3)掴みはOKといった感じだ。(少なくとも私は)

 ふとした事がきっかけでニューヨークの下町の一つ屋根の下で暮らす事になった男3人女3人の若者の恋愛模様をベトナム戦争・反戦運動の大きなうねりを背景に描いている。
 主人公の名前でお判りのように、この作品はビートルズの歌を歌うだけのミュージカルではない。登場人物の名前・台詞・エピソード・映像、全てビートルズの歌詞・エピソード・映画・プロモーションビデオがベースになっているといっても良いほどだ。お気に入りレビュアー諸氏の中には「ビートルズ洪水」と表現したが、その通りだろう。(余談4)
 単にビートルズの歌を挿入するだけの作品と思いきや、ビートルズという存在・ビートルズが活躍した時代全てを分解して全く別の男女6人激動60年代恋物語に組み立てなおしたミュージカルである。その構成力と映像センスは抜群だ。(余談5)

 一つだけ残念なのは、同性愛問題を担当するはずだった3番目のヒロイン・プルーデンスが完全に脇役となっていた。しかも個性的な脇役というよりは、申し訳程度の役柄だった。
 ジュードの恋人でヒロインのルーシーは兄が徴兵された事をキッカケに反戦運動にのめり込み、ジュードとの関係がギクシャクするのだが、私が制作者なら、ルーシーの心の隙間に反戦運動のリーダーとプルーデンスの2人が入り込み関係を持ってしまいそうになる場面を想定する。ところが意外に素直な大団円ハッピーエンドになった。

(余談1)突然、歌い出したり、長い足を振り回して踊り出したり、私には脈絡も意味も無い奇怪な動作にしか見えず、大笑いして周囲の顰蹙をかったことがある。

 昔、武田鉄也氏が坂本龍馬に扮したTVドラマがあった。BGMは全曲ビートルズとジョンの「イマジン」。龍馬の盟友武市半平太が切腹する場面で「イマジン」が使われていた。残念ながら、幕末勤皇の志士にビートルズは似合わない。少なくとも私は大いに違和感を持った。

(余談2)名義はポールとの合作だが、実質的にはジョンの作品。

(余談3)「Girl」は歌詞もメロディも恋煩い調だ。

 年恰好だけでなく話し方も似ていた。私は英会話が不得手だが、話し声とイントネーションがポールに似ているように聞こえた。
 作中で、ジュードがリバプールからアメリカへ渡り親友になるアメリカ人マックスから「訛りきついね」と言われる場面がある。なるほど、だからリバプール出身のポールに似ていると感じたのか。ということは、ジュード役のジム=スタージェス氏はロンドン出身だから、リバプール訛りを演じている訳だ。

 「Helter Skelter」はビートルズの楽曲の中で最も激しいと思う。

(余談4)「Strawberry Fields Forever」のPVやTVドラマ「Magical Mystery Tour」の映像を意識した場面が登場する。

(余談5)実は、ジュードのルーシーには感情移入してしまう。実際、私は女友達が運動にのめり込んでいく様を見て動揺しジュードのように悪態をついたことがあったし、後に私自身が運動に深入りした時は無理解の友人達にイラつきムカつき癇癪を起こしたことがある。その時、脳裏に浮かんだ曲は作中と同じだった。いや、作中の楽曲は面白いくらい私の思い出とも共通項があった。

 作中でU2のボーカル・ボノ氏が如何わしい役で登場する。「I Am The Walrus」と「Lucy In The Sky With Diamonds」を歌うが、どこで歌うかはお楽しみ。

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