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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「ビートルズ/レット・イット・ビー」 人生の教訓に〔2〕

ビートルズ/レット・イット・ビー」 
黄昏のビートルズ

 


【原題】LET IT BE
【公開年】1970年  【制作国】英吉利  【時間】80分  
【監督】マイケル・リンゼイ=ホッグ
【音楽】ザ・ビートルズ
【脚本】
【言語】イングランド語
【出演】ジョン・レノン(本人)  ポール・マッカートニー(本人)  ジョージ・ハリソン(本人)  リンゴ・スター(本人)  ヨーコ・オノ(本人)  ビリー・プレストン(本人)  
  
【成分】切ない イギリス 1960年代末 
  
【特徴】ビートルズが録音スタジオで曲づくりを行っている風景をドキュメントした作品。アルバム発表と呼応してドキュメント映画を公開する算段だったらしいが、メンバー間の険悪な雰囲気を露呈することになった。いわば、解散直前の黄昏ビートルズを克明に記録した映像といえる。
 最終的にビートルズ解散の引導を渡したのはポールだが、本作の時点ではまだビートルズ存続に執着するあまりに気合が入り過ぎてメンバーから煙たがれ浮いた存在になっている。
 
【効能】人生の壁にぶち当たって何をやっても事態が悪化してしまう時には嵐が過ぎるまで静観するのも有効であると学べる。
 調子にのっている時に鑑賞すると人生の戒めになる。
 
【副作用】気分が消沈する。不景気感が漂う。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。  
ポールの兄貴風がムカついた。

 本来の目的は、ライブやアルバム発表に向けて曲作りやリハーサル、メンバー同士の和気藹々とした談笑や熱い音楽論の展開などのビートルズの楽屋裏ドキュメントを撮ることだった。映画公開にあわせてアルバムの発表やライブの展開などを行う算段だったのではないかと思っている。

 噂ではバラバラになりかけているビートルズの結束を強めようとポールが頑張っていたらしいが、皮肉にも黄昏のビートルズを克明に記録する貴重映像となった。背広を着たマッシュルームカットの少年のようなビートルズは居ない。そこにいるのはビートルズでいることが疲れたような中年男性たちだ。(余談1)

 最初でこそ和気藹々とした和やかな雰囲気で映画が始まるのだが、険悪な空気が露呈する。その中で印象が悪かったのはポールだった。初期のビートルズの活気を取り戻そうと無理に元気を出していたようだが、傍目には偉そうに見えてしまう。いかにも御山の大将然として他の3人の尻を叩いているといった感じだった。

 ポールとジョージがなにやら議論しているが、仕事上の討論というよりは、ポールが歳下のジョージに兄貴風を吹かしているようにしか見えず、もはや仲が悪いのではないかと思った。リンゴとじゃれ合うジョージの楽しそうな顔とは全く異なる。
 ポールはジョンに様々な意見を並べているのだが、ジョンは返答するのもうんざりといった表情に見えた。
 映画の中でシンプルな伴奏の名曲「Two of Us」を歌う場面が二度出てくる。リハーサルはラフな格好のポールが、本番収録?になると突然ダークスーツに白のダブルカフスのワイシャツ(余談2)を着て登場する。(なにめかしこんでんだ?) 歌の冒頭はジョンと2人で歌うが、ポールがソロで歌うところはやたら腹に力が入っていそうな声になる。(なに張切ってんだ?)

 ラストのアップル・レコード社屋上でゲリラライブを行う有名な場面がある。ビートルズ最後の公式ライブだ。これ以降、ビートルズがライブをする事は無いし、もはや不可能である。そんな貴重映像だ。今でも「Get Back」を紹介する映像に一部よく使われる。(余談3)
 数年ぶりの生演奏、たちまち街は人だかりの騒然、ポールの甲高い声がビルの谷間中に響き渡る。これは映画を見ている側もまるで実際のコンサートを見ているかのような迫力がある。(少なくとも私は)
 
 ここでも意外な場面を目撃する。無許可コンサートで街が大騒ぎになったため、警官が踏み込んでくる。屋上に上がってきた警官たちに応対するのが何とジョンなのだ。普段は反骨姿勢を隠そうとしないジョンなのだが、演奏を止めて素直に警官の警告を聞いているように見えた。ところが、普段は体制迎合的ポールは、警官の姿を視認しているはずなのに伴奏が途切れた中で一層力を込めて歌を続けている。なんだか、「俺はまだ歌う。俺はビートルズをやめない」とでも言っているかのようだ。

 こうして、演奏するビートルズの姿は公から消えていく。ドキュメント映画としては平凡かもしれないが、変に綺麗に取り繕うことなくグループの末期を素直に記録し描写した点では良い意味で「演出無し」だ。
 この一年後か、ポールはキレたかのようにビートルズ解散を求める訴訟を起こす。
 
(余談1)まだ全員20歳代だ。今のスマップよりもはるかに若いのだが、歳上に見える。かりにスマップの面々が髭を生やしていても印象は同じだろう。

 Yahoo!映画の解説では演出無しとあるが、全く演出が無かったわけではないし、演出無しに映画は撮れない。
 たとえば、リハーサルや録音をしているスタジオは使い慣れたアビーロード・スタジオではない。撮影の都合で別のスタジオで行われている。ジョンのインタビュー本を読んだことがあるが、寒くてストレスがたまったそうだ。
 ラストはライブの生演奏場面にすることは決まっていたし、絵コンテは無かったかもしれないがシノプシス(粗筋)くらいはあったろう。
 何より、実際はもっと険悪な空気が流れていただろうが、観客が退いてしまいかねない深刻な口喧嘩の場面などはカットされているはずだ。

(余談2)「Two of Us」はショーン・ペン氏「アイアム・サム」で使われていなかったかな?

 ダブルカフスは、袖口が折り返されてカフスボタンで留めるタイプのワイシャツ。背広を着ていた時代のビートルズも、好んでダブルカフスのシャツを着ていたのはポールだ。ポールは背広が好きなんだなあと思った。

(余談3)この場面は後にU2も真似して、酒屋?の屋上で「Where The Streets Have No Name」をライブするPVを発表している。同じように警官がやってきてコンサートは中断されて終了。

 最近では映画「アクロス・ザ・ユニバース」のラストで純愛青春ドラマ的に再現されている。
 
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆ 良
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆☆ 名作

 
【受賞】アカデミー賞(音楽(編曲・歌曲)賞)(1970年)


 

 
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コメント

こんにちは☆
この映画、まだ見てません。汗
ビートルズの中では特にポールが好きな私には辛い映画かも知れませんね。

この頃のビートルズ雰囲気をなんとなくうちの父から聞いた時、
ポールかわいそうって凄く思ったのを思い出しました。
いろいろ問題があったんでしょうけれど…。

解散はヨーコのせいだ。とは思いませんが、
Get Back と The Long And Winding Road
を聴く度に
この頃必死で抵抗したポールを思い浮かべて悲しくなります。

Re: タイトルなし

こんにちは、お鈴氏。

> こんにちは☆
> この映画、まだ見てません。汗
> ビートルズの中では特にポールが好きな私には辛い映画かも知れませんね。

 それなら、たぶんポールに感情移入して、彼の焦りを体感することでしょう。

> 解散はヨーコのせいだ。とは思いませんが、
> Get Back と The Long And Winding Road
> を聴く度に
> この頃必死で抵抗したポールを思い浮かべて悲しくなります。
 
 リンダのせいとも言われている。ビートルズの妻たちはいろいろ批判されています。
 
 ポールのファーストソロアルバム「マッカートニー」に収録されている「Maybe I'm Amazed」を聞いていると、切ないですね。

>リンダのせいとも言われている。ビートルズの妻たちはいろいろ批判されています。
ビートルガールっていうんでしたっけ?
(彼女もそうだったかな。。)
私は、ジェーン・アッシャーとリンダとパティ・ボイドが好きです。
彼らの奥さんを務めるストレスは相当でしょうね。。

「Maybe I'm Amazed」はリンダのことを歌ってるんでしょうかね^^
ポールのまっすぐな歌、いいですよね^^

>ポールは背広が好きなんだなあと思った。
Beatlesのせいか、イギリス人=スーツになってる私です。
近年のPVでポールがスーツに黒のコンバースをはいてて、
とってもキュートで格好良かったです☆

>【効能】人生の壁にぶち当たって何をやっても事態が悪化してしまう時には
>嵐が過ぎるまで静観するのも有効であると学べる。
うわぁ。悪あがきしたりしてから回る私にはぴったりですね。苦笑
というか観たらますます悪あがきするポールに悲しくなりそうですね。。^^:

切ないですね。

お鈴氏、こんにちは。

> 私は、ジェーン・アッシャーとリンダとパティ・ボイドが好きです。
> 彼らの奥さんを務めるストレスは相当でしょうね。。
 
 ジェーン・アッシャーとは長い交際を経て婚約したのに、婚約直後に破局したようですね。なにがあっんでしょうね?
 たぶん、ジェーンの事を歌ったのだと思いますが、「I'm Looking Through You」が好きです。楽しそうな楽曲なのに歌詞は切ない。「Why, tell me why did you not treat me right」と歌う時のポールの声に気のせいか力が入っているように感じます。
 
 リンダのストレスは大変なものですよ。彼女はもともとプロカメラマンで、音楽なんかほとんどやったことがないのに無理やりキーボードやらされて。評論家やファンから「下手糞」と散々だったようです。

 パティは「ア・ハード・デイズ・ナイト」で女子高生役やってましたね。貨物列車で演奏する場面で、けっこう可愛らしく目立っていました。
 後にエリック・クラプトンに寝取られるなんて、しかもクラプトンは後に「DVをやった。性的虐待した」なんて自伝で書きよる。もともとクラプトンは気に入らん奴だと思っていて、レコードなんか一枚も買った事がありません。
 
 ホワイトアルバムでしたか、ハードロック調の「Birthday」でたしかリンダとパティとヨーコがコーラスやってましたね。ここ10年位前からお気に入りになってしまいました。子供の頃はヘビィな歌は好きでなかったのですが、ストレス社会のおかげで趣向の幅が広がります。

> 「Maybe I'm Amazed」はリンダのことを歌ってるんでしょうかね^^
> ポールのまっすぐな歌、いいですよね^^

 あのアルバムの中で唯一の名曲です。ベースのポールですが、ピアノの方が似合いますね。恋愛に悩んだ時期はいつもポールの歌が頭をよぎるんです。

> >ポールは背広が好きなんだなあと思った。
> Beatlesのせいか、イギリス人=スーツになってる私です。
> 近年のPVでポールがスーツに黒のコンバースをはいてて、
> とってもキュートで格好良かったです☆

 まだウイングス時代だったと思いますが、PVでバイオリンベースに初期のビートルズの格好をしていたのがありましたね。あれはなんていう曲でしたかな?

> >【効能】人生の壁にぶち当たって何をやっても事態が悪化してしまう時には
> >嵐が過ぎるまで静観するのも有効であると学べる。
> うわぁ。悪あがきしたりしてから回る私にはぴったりですね。苦笑
> というか観たらますます悪あがきするポールに悲しくなりそうですね。。^^:
 
 「Get Back」で伴奏が途切れても歌い続けるポールの姿は、けっこう辛いですね。

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