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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

エヴァン・レイチェル・ウッド 「アクロス・ザ・ユニバース(2007)」 

エヴァン・レイチェル・ウッド 
アクロス・ザ・ユニバース(2007)」

 
 この映画でヒロイン・ルーシーを演じるエヴァン・レイチェル・ウッド氏は新進気鋭の女優でまだ20歳を過ぎたばかり、邦画女優では長澤まさみ氏や沢尻エリカ氏と同世代だ。私生活では19も歳上のミュージシャンと交際し、彼の影響なのか?金髪を黒く染め化粧も派手め・・。(余談1)
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。

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エヴァンの素直な演技が物語をリアルにする。

 作中のエヴァンは元の金髪で化粧けが無く、中流家庭の育ちの良い健康で真面目なお嬢さんを自然体で演じている。他の5人がみな個性の強いキャラを演じているだけに、逆に堅気然とした所作が物語全体の説得力を増す効果がある。

 物語はルーシーとジュードが出会いから別れを軸にして進められる。
 大学生の兄が連れてきた新しい友達、リバプール訛りの青年、母子家庭で造船所の労働者、母を捨てた父親に会うためにアメリカにやってきた、自分と同じような家庭環境で育った町のボーイフレンド達とは毛色の違うジュードに強い印象を持つ。
 恋人が戦死し、傷心のルーシーは兄に会いに行く事を口実に、過去を振り切り新しい展開を求めてニューヨークへ移り住む。ジュードと再会し一気に恋愛を開花させ、下宿の個性的な仲間達とともにカラフルな夢の日々をおくる。しかし兄も徴兵されベトナムへ、ルーシーは平和運動にのめり込み、ジュードは彼女の変化に寂しさと焦燥感をおぼえる。ルーシーが手の届かぬ所へ行ってしまうのではないかと。ルーシーは平和運動に関心を示そうとしないジュードに不満を募らせる。(余談2)

 私にも似たような体験がある。彼女をとられたくない、彼女を行かせたくない、そんな思いから彼女の主義主張を論破する事を試み、さらに彼女の拠り所を攻撃してしまう。彼女にしてみたら、一番に解ってほしい身近な人間が理解を拒み悪態をついてくる。一緒に闘ってくれとまでは言わない、せめて関心ぐらいは持ってほしいのに、そんな思いすら拒絶され失望を通り越して絶望する。そして私に関するモノ全てがおぞましく感じるようになり、理解者の体をとる遠くの「同志」へ心がなびく。

 ルーシーが感じたジュードの魅力が嫌悪へと変化していく。リバプール訛りのジュードは徴兵されない呑気な身分。彼の絵画の才能も、自分が必死になって仕事の合間に戦争に反対しているのに協力も関心も持たず呑気に絵を描いているように見えてしまう。
 そして、平和運動の団体事務所にジュードが乱入し、ベトナム戦争の現実を見ようともせずに運動を小バカにした歌(余談3)を歌い、尊敬するリーダーを殴る。ジュードの描く潰れた苺の絵は荒んで見え、もはや一緒の世界では住めないと涙する。

 ジュードとの出会いのトキメキ、夢のような恋愛、そして破局、そのプロセスを演じるエヴァンの表情が私にはリアル過ぎる。
 
 映画ではマックスという人間関係の潤滑役がいる。制作者側は最初から明るい未来が見えそうなシンプルな大団円にするつもりのように感じた。明るい未来が見えにくい21世紀だからだろう。意外にも反戦運動家のリーダーはルーシーを寝とる事は無かったし、同性愛者のプルーデンスが積極的にアタックする事も無かった。マックスが生還し正気に戻り、再び皆を元の鞘に戻す。

 実際は、マックスのような友人にはなかなか巡り合えない。破局すれば、もはやお互いに相手は過去の人間となる。

(余談1)エヴァン以外は未だメジャー俳優という訳ではない。邦画にたとえたら、沢尻エリカを主役に清純キャラを演じてもらい、共演者は新進の舞台俳優やインディーズ系ミュージシャンを起用するようなものか。

(余談2)兄マックスはジョー=アンダーソン氏が扮している。容姿がどことなくエヴァンに似ているため、兄役にピッタリだ。陽気で楽天家で少し捻くれてはいるが優しい坊ちゃんという役どころである。ムードメーカーで、皆を引っ張っていくリーダーではないが、居てくれないと全体の人間関係がギクシャクする潤滑剤タイプだ。
 マックスがベトナムへ出征してから、残った5人の間に不協和音が響く。

(余談3)平和運動家たちを些かマイナスイメージで描くきらいがある。たしかに市民運動家には自己中心的で偏狭過激な理想主義者は少なくないが、しかし安っぽいヒューマニズムや家族愛だけでやっているわけではない。
 1968年にアメリカ軍のカリー中尉率いる部隊がベトナム・ソンミ村で500人以上もの無抵抗の村民を虐殺するという事件が発生している。それでなくても米兵の傍若無人の悪評は大きい。
 愛する家族が、ベトナムの地で侵略者としてベトナム民衆を殺し、侵略者として死んでいく、良心の呵責から運動展開をするのは真っ当で自然な感情だ。

 ジュードが歌う「Revolution」、私が初めて聞いた時まさに運動を小バカにした歌だと思った。中高生時代は左翼運動に敵意を持っていたので、歌詞は我が意を得たりと思った。
 
 


 
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[ 2009/08/27 20:09 ] 映画・・女優評 | TB(0) | CM(0)
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