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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「モロッコ」 ゴージャス気分を楽しむ時に〔2〕

モロッコ」 外人部隊モノの元祖。



【原題】MOROCCO
【公開年】1930年  【制作国】亜米利加  【時間】92分  
【監督】ジョセフ・フォン・スタンバーグ
【原作】ベノ・ヴィグニー
【音楽】
【脚本】ジュールス・ファースマン
【言語】イングランド語
【出演】ゲイリー・クーパー(トム・ブラウン)  アドルフ・マンジュー(ラ・ベシュール)  マレーネ・ディートリッヒ(エイミー・ジョリー)  ウルリッヒ・ハウプト(-)  ジュリエット・コンプトン(アンナ・ドロレス)  フランシス・マクドナルド(伍長)  アルバート・コンティ(大佐)  
  
【成分】ゴージャス ロマンチック セクシー 外人部隊 ドイツ モロッコ 1930年代
  
【特徴】言わずと知れた外人部隊モノの古典的名作。モロッコへ派遣された外人部隊のアメリカ人兵士トムと外人部隊相手のドイツ人歌手エイミーとの恋の駆け引きがスタイリッシュ。後々の恋愛モノや外人部隊モノに強い影響を与えた。
 当時20代のゲイリー・クーパー氏の出世作、男装のマレーネ・ディートリッヒ氏が妖艶、日本公開時に初の日本語字幕スーパーを取り入れた作品としても有名。
 
【効能】ゴージャスな気分に浸れる。
 
【副作用】安っぽいラブストーリーに退屈感。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。  
大人の御伽噺に
もてあそばれたラ・ベシュールに同情する。


 「モロッコ」、フランス外人部隊を舞台にした作品で真っ先にこの作品をあげるファンは少なくないと思う。それ以前にも有ったかもしれないが、この「モロッコ」はあまりにも有名だからだ。後に同じくクーパー氏主演の「ボー・ジェスト」やジーン・ハックマン氏の「フォスター少佐の栄光」、それから「ハムナプトラ」の一作目も一応該当するかもしれないが、これら作品に埋もれることなく「名作」の地位を維持している。(余談1)

 なぜ後の作品に埋もれず輝きを失っていないのか? それは外人部隊モノの元祖、ラブロマンスの名作、若きゲイリー・クーパー氏と伝説の美女マレーネ・ディートリッヒ氏の共演、日本公開時に初めて日本語字幕が付いた作品、「活動寫眞」の終焉と「映画」の時代への移行を象徴する作品、といった具合に様々な意味に於いて記念すべき「名作」であるからだ。
 1930年代は不朽の名作が綺羅星の如く誕生した時代だ。前述したように映画のありようが劇的に変わった時代である。この30年代は現代の映画に通ずるエンタメ映画の基礎技術が確立したといっても良いだろう。この作品はその典型例だ。

 それほどの映画なのだが、初めて観た印象は良く無かった。単に薄っぺらく現実離れした男女の色恋沙汰をエエ格好しながら表現しているだけ、なんでこんなモノが当時大好評を得、現在もなお名作と評価され続けるのかが不思議でならなかった。むしろ内容として優れているのは、ほぼ同時期に公開されたドイツの「制服の処女」だろう。(余談2)
 しかし「制服の処女」は余程の映画通でないと知らないくらいに映画史の中へ埋もれつつあるのに対し、「モロッコ」は依然として年輩の映画ファンだけでなく若い人でも知名度があり、1コインDVDのコーナーでもすぐに見つけられる位置に陳列されている。

 なにが違うのか? 「モロッコ」の出演者がハリウッド俳優で世界的に超有名であることが第一の理由だが、やはり物語が明るくシンプルでお洒落だからだろう。
 「制服の処女」は閉鎖的な女学校が舞台で、そこで囚人のような息苦しい生活と、女性同士の恋愛、そして最後は権力者の学長に対し生徒たちが団結して勝利する、物語としては社会的なテーマがハッキリとあり展開や構成も優れているし、万人が共感できる要素もあるのだが暗い話だ。ひと時の息抜きに映画を観る人には向かない。

 その点「モロッコ」は、新進の二枚目俳優とメジャー女優の共演、当時のクーパー氏は新進だが今では名優の評価が定まっているため往年の二枚目クーパー氏の20歳代の演技が観れるという付加価値がある。そして異国情緒を満足させる沙漠のモロッコが舞台、そこで展開される束の間の恋と三角関係、そして別れ。観客が楽しめる要素が揃っている。
 
 異国の酒場、気だるい表情のディートリッヒが燕尾服姿で煙草を燻らせながら舞台に上がり少しハスキーがかった大人の魅力の美声で歌をうたう。
 次に林檎売りにコスプレして観客に林檎を売り歩き、ケピ帽に軍服姿のクーパーが林檎を買い、ディートリッヒは「お釣りよ」と自分の部屋の鍵を渡す、このスタイリッシュなアバンチュール。
 物語の後半、クーパーは部隊を脱走してディートリッヒと駆け落ちすることを考えるのだが、彼女の鏡台には大富豪からの高価な贈り物を見て考えを改め、口紅で鏡台に別れのメッセージを書く。
 ラスト、異国情緒あふれる軍楽の音色に合わせてクーパーたちが沙漠のかなたへと出発、ディートリッヒはクーパーたちを追いかける。美脚が熱い沙漠の上を歩き、ハイヒールが脱ぎ捨てられる。

 大人の御伽噺だ。面白いが、私はあまり好きではない。それにディートリッヒは私のタイプではない。(余談3)女に捨てられた大富豪が可哀想だ、つくしても報われないとは。
 
(余談1)私はむしろ「ボー・ジュスト」のほうが外人部隊らしくて印象に残っていた。初めて観たときは「ボー・ジュスト」が「モロッコ」と勘違いしてしまったほどである。
 撮影は、もちろん「モロッコ」では行われていない。カリフォルニアやメキシコの沙漠をサハラ砂漠に見立てている。

(余談2)実際、ヒロインのディートリッヒ氏は原作を「気の抜けたラムネ(レモネード)」と扱き下ろしていた。映画のほうは原作をさらにシンプルで万人ウケするように作られているから、観る人によっては気の抜けた感は強いだろうと思う。

(余談3)ところで、ゲイリー・クーパー氏は長身の渋い二枚目、演じる役柄も正統派の折目正しいヒーローが多く、ハリウッドでは珍しく離婚経験も無い。だから下半身も堅いと思われがちだが、けっこう共演者キラーでもある。実際にディートリッヒと仲が良かったようだし、後に「誰がために鐘が鳴る」で共演したイングリット・バーグマン氏とも噂になっている。
 

 
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆ 良
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆ 佳作



 
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