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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「容疑者Xの献身」 

容疑者Xの献身」 
サスペンスの見本のような佳作。

 


【公開年】2008年  【制作国】日本  【時間】128分  【監督】西谷弘
【原作】東野圭吾
【音楽】福山雅治 菅野祐悟
【脚本】福田靖
【出演】福山雅治(湯川学)  柴咲コウ(内海薫)  北村一輝(草薙俊平)  松雪泰子(花岡靖子)  堤真一(石神哲哉)  ダンカン(工藤邦明)  長塚圭史(富樫慎二)  金澤美穂(花岡美里)  益岡徹(葛城修二郎)  林泰文(柿本純一)  渡辺いっけい(栗林宏美)  品川祐(弓削志郎)  真矢みき(城ノ内桜子)  鈴木卓爾(-)  東根作寿英(-)  三浦誠己(-)  海老原敬介(-)  青木一(-)  福井裕子(-)  小松彩夏(-)  リリー・フランキー(-)  八木亜希子(-)  石坂浩二(-)  林剛史(-)  葵(-)  福井博章(-)  高山都(-)  伊藤隆大(-)  
  
【成分】泣ける 笑える 悲しい パニック 知的 切ない かわいい
  
【特徴】人気TVドラマの映画化成功作。近年話題作を次々と提供する人気推理小説家東野圭吾氏が原作。
 「鈴木オート」の親父など体育会系の役柄が続いた堤真一氏のネクラ数学オタクぶりに感動。警察の捜査を二手三手先を読む隠蔽工作や意表を突くトリックに中弛み感は全く無く、最後まで緊張感とワクワク感をもって楽しめる。
 ヒロインの娘役金澤美穂ちゃんは玄人肌の演技、これからが楽しみだ。
 
【効能】意表を突くトリックで次々と警察の追及を回避する妙技に爽快感。
 
【副作用】面白いトリックだけに、不自然な展開が逆に目立って気になる。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。  
福山雅治以外は全員演技達者な玄人俳優。

 2008年、ノーベル物理学賞に日本人学者3名が独占した。理論は全く解らないが、原子と分子よりも小さい単位である素粒子を発見し素粒子学を確立した方々らしい。その一人益川敏英氏が受賞のインタビューで、「今のお気持ちを」との質問に対して印象深い返答をした。

 「選考委員会の立場に立ち、これまでの受賞者の顔ぶれを時系列で並べていけば、そろそろ(私たちの)順番だというのは推測できるので特に驚いていません。それより尊敬する南部先生が受賞された事は嬉しい」

 おそらくインタビュアーは「ビックリした」「光栄です」などの言葉がくるものと思い込んでいただろうから、少し面食らったに違いない。益川氏は些かひょうきんで朗らかな語調で語っていたが、これを淡々とホームズやスポックのような語調にすると作中の主人公湯川学になる。

 さて、私にしては珍しく原作の小説も原版のTVドラマも見ていない。全くの予備知識なしで映画館に行ったのだが、そんな人間でも物語世界へ入り込めるよう無理のない構成になっている。
 冒頭、船舶火災事故を伝えるニュース映像が流れ、テロか事故かの問いに対しスタジオのコメンテーターはテロはありえないと発言する。そのニュース映像を見ながら湯川は「運動量保存の法則」を某所で淡々と解説したかと思ったら、いきなり巨大な実験装置の前に立つ。そしてこの法則と巨大磁石を利用すれば「大砲」ができる事を実証してみせる。小さな鉄球を装置へ転がすと加速されて標的に命中し大爆発、湯川は表情を変えずにきびすを返す。(余談1)
 事実を検証し答えを導くためには時間と労力と資金を惜しまない湯川の性格を端的に説明する場面だ。また警察関係者も立ち会っている事から、警察との友好な協力関係にあることも示している。

 さて物語は最初から誰が犯人であるかが判った上で展開する。薄幸なヒロイン役は松雪泰子氏、凶暴な夫と別れて中学生の娘と2人で安いアパートに暮らしているが、元夫が嗅ぎ付けて家に上がり込みDVをはたらく。母娘は抵抗のはずみでDV男を殺害してしまう。(余談2)
 そこへ隣に住んでいる数学教師が騒ぎに気がつき訪ねる。騒ぎ方から事情を察し、ヒロインは藁にもすがる思いで数学教師を家にあげる。この根暗で表情を表に出さない数学教師役には、鈴木オートや悠木デスクなど若々しくて熱い体育会系キャラが続いた堤真一氏が見事に好演した。髪の分目に頭皮が目立つようにしたり、俯き加減にして顎の皺や弛みを強調するなど、老け込んだ雰囲気をよく出している。

 物語は、ヒロインたちが犯してしまった殺人事件と、それを献身的に隠蔽工作する数学教師の3人によって展開していく。醍醐味は犯人たちが如何に警察の追及をかわせるかのスリルだ。数学教師は様々なトリックを駆使して捜査員たちより二手三手先を読み筋書き通りにコントロールする。この戦術が面白い。

 ところが、自分と対等な会話ができる湯川が警察側の人間として出現した事で計画が脅かされる。私見だが、もし湯川がいなかったら、数学教師の計画は初歩的な段階で済ます事ができ、最後の手段は用いることなくヒロインたちの前から姿を消していたかもしれない。一段落つくと数学教師は転居先も伝えずに引越し、通りすがりの救いの神様としてヒロインたちの記憶に残る。ヒロインたちはさほど罪悪感を感じる事はなく、新しい人生を歩む事ができたかもしれない。
 湯川の出現によって、数学教師は鑑賞者が予想できるドンデン返しと予想が難しい意表を突くドンデン返しを仕掛ける。これら戦術だけに限っていえば、完全に湯川の敗北だった。しかし最後の最後で、大きなどんでん返しがあり、そこで初めて無表情な数学教師の感情が爆発する。良い演技だ。

 久しぶりの面白いサスペンスである。ドラマから映画化あるいは原作小説からの映画化は失敗が少なくないが、これは成功していると思う。ファンから反発をくうかもしれないが、福山雅治氏以外の俳優達の演技は子役からチョイ役にいたるまで全て玄人だ。けっして福山氏はダイコンではないのだが、他の俳優たちに比べると「素人」臭さが微かに感じられ、惜しい。(余談3)

(余談1)コメンテーター役は石坂浩二氏が扮していた。わずか数十秒の出演という贅沢なチョイ役。
 運動量保存の法則、高校2年生の時に習った記憶がある。因みに私は高2の2学期中間テストで数学と物理が0点だった。

(余談2)DV夫は長塚圭史氏、知性派俳優長塚京三氏の息子で劇作家・演出家・俳優の肩書きをもつ。
 早稲田大時代から劇団を立ち上げて脚本や演出などを行い、最近では「世にも不思議な物語」の脚本も担当しているとか。父親譲りの知性と才能の持ち主、作中では見事に中学生の娘や元妻へDVをはたらくチンピラを演じていた。
 
(余談3)それともう一つ、ホームレスの越冬を支援する友人を怒らせる内容があった。これは作者や制作陳の思慮の無さと批判する事もできるが、同時に主人公湯川も内海刑事も薄幸の花岡母娘ですら顧みられない、あるいは省みない、ホームレスが置かれている社会的ポジションの残酷さを雄弁に物語っていると解釈する事も可能だ。
 
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☆☆☆☆ 優
 
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☆☆☆ 佳作

 
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