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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

青春回帰 「GSワンダーランド」 

GSワンダーランド」 
幻想のお祭り60年代、コメディー佳作。

 


【公開年】2008年  【制作国】日本  【時間】100分  【監督】本田隆一
【音楽】 サリー久保田
【脚本】本田隆一 永森裕二
【出演】栗山千明(大野ミク(ザ・タイツメン))  石田卓也(紀川マサオ(ザ・タイツメン))  水嶋ヒロ(正巳屋シュン(ザ・タイツメン))  浅利陽介(柏原ケンタ(ザ・タイツメン))  温水洋一(大河内宗雄)  三倉茉奈(石貫妙子)  三倉佳奈(石貫明美)  ケンドーコバヤシ(熊田恭一)  森田順平(-)  山崎一(-)  片桐仁(-)  佐藤二朗(-)  湯原昌幸(-)  大堀こういち(-)  緋田康人(-)  村松利史(-)  大杉漣(鎌田兼一)  高岡蒼甫(長谷川タツオ)  武田真治(梶井良介)  杉本哲太(佐々木智典)  岸部一徳(松田重吉)  
  
【成分】笑える 楽しい ファンタジー 切ない コミカル 1960年代末 東京
  
【特徴】幻想の60年代を舞台に繰り広げるロックバンドの短い青春の日々を面白おかしく、または切なく描写。
 男役の栗山千明氏が美青年の振りをするところが萌え。
 
【効能】お祭り気分を味わえる。青春の黄昏の切なさが甦る。
 
【副作用】本田隆一監督ファンの中には毒の少ない本作にがっかり。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。  
70年代生まれの青年監督から見た
幻想の60年代


 男装の栗山千明氏を目当てに観に行った。巧くまとめた作品だ。エンディングで私も何だか祭りが終わったなぁ、明日も仕事だなぁ、日常に戻らなければいかんなぁ、と感じた。この感じは監督ら制作者の意図した通りのものだろう。私という観客に対してはこの映画は成功だった。

 作品の舞台は60年代末の東京、スターになる事を夢見て上京し縁あってバンドを組むことになった4人の若者とそれを取り巻くプロダクションやライバルグループで物語は展開していく。
 この時代、私は田舎の山村に住んでいて近所の保育園に通う幼児だった。自宅と保育園を結ぶ地域だけが世界で、「赤影」や「ウルトラセブン」「謎の円盤UFO」などの子供向けTVドラマで育った。だから60年代の香りを自覚するには至っていない。大きくなってから、「・・セブン」や「謎の円盤・・」に70年前後の時代背景があることを知ったくらいだ。

 監督は私よりもさらに10年若いようなので完全に60年代の臭いを体験していない。だが時代の雰囲気は良く出ていると思う。たぶん、実際に当時タイガース(プロ野球じゃないよ、GSだよ)で活躍した岸部一徳氏らが出演しながら助言しただろうし、予算と技術とスタッフがしっかりしていれば過去の時代を再現する事は十分可能だ。

 問題は当時の若者の価値観や発想を脚本も担当している本田監督が理解しているかだが、これも実は問題ない。ビックになりたい、一旗あげたい、スターになりたい、と思うノンポリの若者に今も昔も変わりはないのだ。(余談1)
 音楽路線について主人公たちが言い争う場面がしばしばあるが、これはけっこう説得力がある。私も若い頃に同様の経験があるし、監督も似た様な議論を学生の頃にやったのではないか? 

 メンバーの中で最もロック音楽にこだわりをもっているシュン(水嶋ヒロ氏)が作詞作曲した歌、マサオ(石田卓也氏)がさっそく「ビートルズの『抱きしめたい』じゃないか」と突っ込む。
 プロダクションの強い意向で女性ミック(栗山千明氏)を男装させて加入する際、もともとソロで歌謡曲を歌う目的のミックと本格ロックを目指すシュンが対立するが、これまたマサオが間に入り巧く利害調整をする。マサオからどんなロックを目指しているのかと突っ込まれて答えに窮するシュン、とりあえずスターになる、その象徴である日劇の舞台にあがる事が共通の目的、それまでは協力し合うことで合意する。

 ライバルグループが本格ロックを気取ってスーツからヒッピースタイルになり、プロダクションの言われるままにバンド名を変え売れ筋スタイルで歌う主人公たちをけなす。痛いところを突かれて暗い表情になる男3人、しかしミックはライバルがアメリカのジミ=ヘンドリックス氏(余談2)の受け売りであるのを見破る。

 主人公たち「ザ・タイツメン」の人気はうなぎのぼり、特にミックは美青年として人気が集中し、まるでビートルズのようにファンから逃げ惑う過酷な毎日をおくるが、やがてミックが女性である事がバレ呆気なく終焉を迎える。
 バンド解散後、なんとかソロデビューしたミックをマサオはテレビで見守りながら、クローゼットから学生服を取り出し、長く伸ばした髪を切り始める。楽しいお祭りは終わった。

 たぶん、マサオは普通に学校を出て就職し、調整能力を買われて良き営業マンとなり、定年間近になった頃に同世代の友人と趣味でバンドを組むか、あるいは昔の仲間と再び意気投合して行きつけのショットバーやレストランでコンサートをやるだろう、そのときベテラン歌手となったミックもバンドに参加している、そうあってほしい。

(余談1)「ノンポリ」とは、特に政治的スタンスを定めていない人々の事。

 安保闘争時に労組運動をしていた先輩が吐き捨てるように言った事がある。「学生の連中は偉そうに革命とか言いながら卒業すると髪切って背広着やがって、仲間と思った俺が馬鹿やった」
 現在もなお平和的な手法に変えて運動を継続している人々は少なくないが、多くはユーミンが作詞作曲しフォークのバンバン歌った「『いちご白書』をもう一度」の歌詞にあるように運動から卒業した。あの頃の学生が全員当時のスタンスのままいたら、うんざりするくらい失策失態続きの自民党はとっくに下野しているはずだ。

 当時の多くの学生たちにとっても、やはり祭りのようなものだった。マルクス・レーニン・毛沢東の受け売りで怪気炎をあげ、具体的に日本をどうするかについては漠然としていた。ちょうど本作のシュンのように。

(余談2)日本では通称「ジミヘン」と呼ばれる。天才ギターリストで、彼の音は再現不能とさえいわれる。ギターをぶち壊すパフォーマンスで有名。
 
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆ 良
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆☆ 名作

 
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海岸線のホテル(DVD付) ザ・タイツメン
GSワンダーランド・オリジナル・サウンド・トラック
アクロス・ザ・ユニバース デラックス・コレクターズ・エディション [DVD] ジュリー・テイモア
 
晴雨堂関連書籍案内
GSワンダーランド (竹書房文庫) 本田隆一
 

 
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[ 2009/09/07 23:17 ] 映画・・青春回帰 | TB(2) | CM(1)
こんにちは~♪
私もGS全盛期のことはうっすらと覚えているだけです。
友人のお姉ちゃんが熱狂していたのを不思議な気持ちで傍観していた感じです。
「失神」なんていうことが本当にあったんですね~。
[ 2009/09/08 21:44 ] [ 編集 ]
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