fc2ブログ

ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「イントゥ・ザ・ワイルド」 青春回帰〔35〕 

イントゥ・ザ・ワイルド」 
チェ・ゲバラと共通する出発点

 


【原題】INTO THE WILD
【公開年】2007年  【制作国】亜米利加  【時間】148分  
【監督】ショーン・ペン
【原作】ジョン・クラカワー
【音楽】マイケル・ブルック カーキ・キング エディ・ヴェダー
【脚本】ショーン・ペン
【言語】イングランド語
【出演】エミール・ハーシュ(クリストファー・マッカンドレス)  マーシャ・ゲイ・ハーデン(ビリー・マッカンドレス)  ウィリアム・ハート(ウォルト・マッカンドレス)  ジェナ・マローン(カリーン・マッカンドレス)  キャサリン・キーナー(ジャン・バレス)  ヴィンス・ヴォーン(ウェイン・ウェスターバーグ)  クリステン・スチュワート(トレイシー)  ハル・ホルブルック(ロン・フランツ)  ブライアン・ディアカー(-)  ザック・ガリフィアナキス(-)  
  
【成分】泣ける 悲しい ロマンチック 知的 切ない アメリカ アラスカ 90年代
  
【特徴】裕福な家庭で育ち名門大学を卒業した若者が、突然家を飛び出し放浪の旅に出る物語。放浪の果てにアラスカで餓死した青年の実話をもとに制作された。
 ショーン・ペン監督の青年への温かい眼差しが感じられる。
 
【効能】青春時代を思い出してしまう。アウトドアに関心を持つ。
 
【副作用】青年の親不孝に激怒。青年の両親の胸中を思うとやりきれない思いになる。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。
青春に憑かれた若者。

 この映画を観ると私は若い頃を思い出す。

 10代後半から20代半ばまで、私はよくチャリンコ旅行をやった。学校とバイト先と自宅を往復する日常から脱出したかった。違う世界を見たかった。自分はどこまで行けるのか試したかった。いろいろ理由はあるが、結局は無邪気な旅への憧憬からだった。

 作中の主人公クリス青年のように親とはもめなかった。高校生の頃までは何かと煩かったが、大学生になってからは放任同然。特に父は私の旅を応援してくれた。だから主人公のように反抗する理由がなく、旅に出ても必ず家に帰る事が前提だった。

 最初の頃は、旅先で知り合う個性的な人々との出会いや会話が楽しかった。何となく自分が自由人になったような気がして、旅の若者たちと意気投合して飲んだ安酒が非常に旨く感じた。
 ところが、程なく自分の旅のスケールが狭い事に気が付く。知り合った人々の大半が東京圏・大阪圏在住の若者逹、他の地方出身者でも東京や大阪の大学に通っているか、そこを卒業してそのまま都会で就職した者逹ばかり。
 旅をする人たちの多くは、シッカリした親の下でさほど不自由なく育った高学歴の若者たちだ。ちょうど、作中のクリスのように。

 旅の初心者だった頃は、無銭旅行の精神で食糧はパン屋からもらったパンの耳だけで済ましてきた。馬鹿げた事と思うだろうが、それが当時の私の美徳だった。が、走行中に低血糖症で倒れてからは考えを若干修正した。
 目の前が真っ暗になり転倒した。幸い早朝の国道の広い歩道だったので他に車や人が無かった。トラックでも走っていたら轢かれていたかもしれない。路肩に避難してへたり込んだ。いくら休んでも気分が良くならない。そんな時、近くに住んでいるオバサンに助けられた。家に上がらせてもらい美味い粥を御馳走になった。
 それ以来、米と味噌は必ず携行するようになった。調理のために、キャンプ用品も購入した。

 馬鹿げた失敗を何度も繰り返しながらも、一通り旅のノウハウを得ていき、初心者らしい旅人にベテラン面してアドバイスするようになった頃、山間部を走っていたら山奥の小さな集落を通りかかった。そこの橋のたもとで猟師らしき人が包丁を使って慣れた手付きで猪をテキパキとさばいていた。あっというまに腸が飛び出し、皮が剥け、猪は肉になっていく。
 自分だったら、あんなに手早くできるだろうか? チャリンコ旅行は基本的には道路を走り人が住んでいる所を頼りに進む。基本的な食事は米味噌とインスタント・レトルト・罐詰だ。たまに人様の家に厄介になり、御馳走を貪る。
 クリスと違い、私ならもっと小さな獲物でも解体に躊躇したり手間取ったりで、むざむざ蝿の餌にしてしまうだろう。(余談2)大自然の中で生きるノウハウが無い。父母の生活技術のかなりの部分を受け継いでいない事を痛感した。

 放浪の旅といえば、政治的に真っ白だった頃の青年ゲバラの南米放浪を描いた「モーターサイクル・ダイアリーズ」がある。ゲバラもクリスも私も、出発点自体に大きな差があるとは思えない。3者ともそれなりに決意をもって旅立ったが、食うや食わずの生活をしている人々から見れば呑気な身分だ。
 私は軟弱ゆえに旅を止めて元の日常生活に戻り所帯を持ち平凡な生活をしている。ゲバラはもっと大きな「世界革命」という旅に出発し敵国アメリカだけでなく友軍であるソ連にも批判の矛を向け政治の荒野でもがいた末にボリビア軍によって処刑された。クリス青年は各地を転々とし興味深い出会いを繰り返しながら別れ、独り厳しいアラスカの大自然に身を投じ野倒死ぬ。
 ゲバラとクリスの違いは政治的背景の有無だけで、ベースとなっている心情は共通しているように思える。志云々ではなく「冒険」の魔力といえよう。ショーン・ペン監督はよくクリスを取り上げリアルな物語にしてくれた。

 アラスカの描写はDVDよりも映画館のスクリーンが映える。

(余談1)夏の北海道の斜里方面を走っていたときだった。峠で便意をもよおし路肩で野糞をした。バナナの様な大きな便が出たが、たちまち無数の蝿がたかり白い米粒のような卵にまみれた。蛆が蠢く様を想像するとゾッとした。
 アラスカを旅した人の話によると、蝿や蚊が物凄かったらしい。

晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆☆☆ 秀
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆☆☆ 金字塔

 
【受賞】ゴールデン・グローブ(歌曲賞)(2007年)
 
晴雨堂関連作品案内
オリジナル・サウンドトラック“イントゥ・ザ・ワイルド” エディ・ヴェダー
モーターサイクル・ダイアリーズ コレクターズ・エディション [DVD] ウォルター・サレス
  

 
 blogram投票ボタン にほんブログ村 映画ブログへ
ブログランキングに参加しています。
関連記事
スポンサーサイト



[ 2009/09/10 12:47 ] 映画・・青春回帰 | TB(1) | CM(0)
コメントの投稿













管理者にだけ表示を許可する
この記事のトラックバックURL
http://seiudomichael.blog103.fc2.com/tb.php/785-2c9b4dd1

若者は荒野で何を見た「イントゥ・ザ・ワイルド」 まあ、なんてことない映画ですよ。 なんだろね、親にうんざりし、金にうんざりし、都市生活にうんざりし、 精神的に疲れ果てた若者が、荒野で暮らすのが一番だ、 そうだアラスカに行こうと親を捨て家族を捨てて旅..
[2009/09/12 07:13] カフェビショップ
映画処方箋一覧
晴雨堂が独断と偏見で処方した映画作品。
下段「日誌」項目は晴雨堂の日常雑感です。
メールフォーム
晴雨堂ミカエルに直接ご意見を仰せになりたい方は、このメールフォームを利用してください。晴雨堂のメールアドレスに送信されます。

名前:
メール:
件名:
本文:

プロフィール
↓私の愛車と野営道具を入れたリュックです。

晴雨堂ミカエル

Author:晴雨堂ミカエル
 執筆者兼管理人の詳しいプロフィールは下記の「晴雨堂ミカエルのプロフ」をクリックしてください。

晴雨堂ミカエルのプロフ

FC2カウンター
2007年10月29日設置
当ブログ注目記事ランキング
当ブログで閲覧数の多い順ランキングです。
設置2013年6月13日
ブログランキング
下記のランキングにも参加しております。ご声援ありがとうございます。
  にほんブログ村 映画ブログへblogram投票ボタン
アクセスランキング
[ジャンルランキング]
映画
80位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
レビュー
43位
アクセスランキングを見る>>
タグランキング
晴雨堂の関心度が反映されています。当ブログ開設当初は「黒澤明」が一位だったのに、今は・・。
訪問者閲覧記事
最近のアクセス者が閲覧した記事を表示しています。
月別アーカイブ
ブロとも申請フォーム
リンク