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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「積木の箱」 突っ込みどころを楽しもう〔14〕

積木の箱」 
主人公の少年に立ち塞がる教諭、緒形拳

 


【公開年】1968年  【制作国】日本国  【時間】84分  【監督】増村保造
【原作】三浦綾子
【音楽】山内正
【脚本】池田一朗 増村保造
【出演】若尾文子(川上久代)  内田喜郎(佐々林一郎)  緒形拳(杉浦悠二教諭)  松尾嘉代(佐々林奈美恵)  梓英子(佐々林みどり)  南美川洋子(津島百合)  島田博(川上和夫)  荒木道子(佐々林トキ)  内田朝雄(佐々林豪一)    
  
【成分】笑える パニック 知的 反抗期
   
【特徴】思春期の少年の危うい気持ちを、崩れ易い積木に例えて描写する事がテーマ。複雑な家庭に育った少年が、清楚な大人の女性に憧れると同時にイチモツが反り返る発情期の本能にも目覚める様が面白い。
 若き日の緒形拳氏が主人公の少年を立ち直らせようと面倒をみる良心的な教師を貫禄たっぷりに演じる。武田鉄矢氏の金八先生は常に必死になって汗をかきながら教師を務めるのに対し、この緒形氏の杉浦先生は初期の金八と歳は変わらないはずなのに、余裕綽々の大きな「大人」。これがまた面白い。
 
【効能】若き若尾文子氏と松尾嘉代氏の姿に、主人公と同じく萌え。
 
【副作用】平均的な日本人家庭からは隔たっているので感情移入が難しい。登場人物たちのステレオタイプぶりに違和感。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。  
喜劇見えるドロドロ家族

 緒形拳氏が出演した映画で私が初めて観た作品がこれである。主人公は複雑な家庭に育つ多感な高校生、緒形氏はその担任の教師役に扮する。

 これも子供の頃に観たきりなのだが、どういう訳か内容は比較的よく憶えている。地元の経済を牛耳る名士の息子が主人公、父親は財界や政界に顔がきく大物であると同時に、若い頃から精力絶倫で大勢の女性を妾にし秘書なども手ごめにしてきた。しかも歳をとってからも性欲は衰えないスケベ爺さんだ。

 そんな生臭親父の息子なのに、どういう訳か高校生の頃まで純心で素直な少年に育っているのが逆に面白い。(余談1)学校では快活で勉学とスポーツは優秀、清清しい男の子だ。
 ところが、父親と長女が抱き合っている光景を偶然目撃してから少年は次第に荒み始める。姉と思っていたのは実は父親の妾だったのだ。少女時代に拾われそのまま男と女の関係になり、主人公に対しては長姉として振舞っていた。しかもその事実は「次女」や母親も知っていて、当たり前のように受け入れていた。(余談2)
 これに憤慨する少年は自暴自棄ぎみの危うい精神状態に陥る。緒形拳氏扮する担任教諭は少年の変化に気付き立ち直らせようと心を砕くが、少年にとっては余計なお世話で鬱陶しがる。

 そんな少年の心の拠り所は近所の雑貨屋のオバサンだった。若尾文子氏が扮する物語のヒロインである。年のころ30代前半くらいの清楚な感じの良妻賢母型女性で、女手一つで息子を育てている。この健気な姿に恋愛感情をいだくようになる。しかも強烈な性愛の情、なにしろ庭に干してある彼女の白い下着に顔をうずめ擦り付けたりするのだ。
 ところが、少年にとって安息の地が脅かされる。鬱陶しく思っていた担任が、件のオバサンにラブコールを送っていたからだ。少年にとっては恋敵、教師に敵意を抱くようになる。さらにトドメは敬愛していたオバサンが実は若い頃に父親の秘書をして手ごめにされていたのだ。清楚な女性と思っていたオバサンが父親の汚い精を受け、彼女の息子は腹違の忌まわしい弟。

 少年はあまりにも単純にオバサンに対して暴言を吐き、父親の権威と教師の立場を失墜させるため、教師が宿直している日を選んで学校に放火する。なんと短絡的なクソガキ。
 次姉に「ウジウジしとらんで、家から自立せんかい」という趣旨の説教を受け、教師からは自身の良心と責任を諭され、少年は自首を決意する。

 この作品に出演していた当時、緒形氏は30そこそこの青年だったように思うが、貫禄ある大人の先生を演じていた。私は40を過ぎて久しいが、未だに学生時代を引きずっている。あのような渋い大人にはなれない。
 私だけでない。現在の30前後の俳優で「大人」を演じられる者、あるいは「大人」が似合う者はいるだろうか? 御子息の緒形直人氏は私と世代が近いが、当時の教師役緒形拳氏よりも子供に見えてしまう。
 残念ながらビデオソフト化されていないようだが、もし今みてもその印象は変わらないと思う。

(余談1)原作では中学三年生なので、映画も中学生だったかもしれない。

(余談2)父親役は悪代官・悪徳商人役で有名な内田朝雄氏。「長女」役は若き日の松尾嘉代氏、この時代から淫靡な魅力を漂わせていたとは。

 ところで、子供心に疑問に思ったことがある。少年だけ異なる育てられ方だったのだろうか? 家族が公認しており、それで調和がとれているのであれば騒ぐ必要も無いし今さら驚く事ではない。むしろ少年の立場であれば、そんな「異常な家族」を「平凡な家庭」と思って育つのではないか。さらに大人になれば、妾を家族の一員に受け入れる父親の甲斐性と母親と次女の大らかさに感動するようになるだろう。設定と展開が不自然である。

 私が物語を創るとしたら、問題の少年は世間から見て「異常な家族」を普通だと思って育ち、学校の級友や教師らの影響で世間の常識を知り、反抗期になっていくのと人権感覚に目覚めるのが同時期に重なったために父親の生き方に疑問と敵意を持ち、教師を味方として頼る、ところがその教師は憧れの雑貨屋のオバサンに懸想していて教師を逆恨みし人間不信になる。そんな筋書きにするしそのほうがナチュラルと思う。
 映画や原作の展開では「今さらなにをカマトトしとんねん」と物語の不自然さに嘲う。原作は三浦綾子氏の小説でけっこう有名らしい、女性が描く男性像は違和感を感じる事が殆どないのだが、これは不自然に思った。あまりにも「男」をステレオタイプにし過ぎだし、少年を純心で単純に描きすぎ。
 
 むしろ、こんな家庭なら近親相姦を罪悪感なしにやってしまう可能性もある。変にドロドロで妙なところでマトモ。
 
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆ 良
 
晴道マニアック評価
☆☆☆ 佳作

 
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コメント

初めまして

こんにちは、TB&コメントありがとうございました。
いつもTBでお世話になっております。こちらからの挨拶が遅れ、申し訳ありませんでした。
春雨堂さんは、こちら昔にご覧になったのですね!
確かにステレオタイプすぎるとも言えますよね。

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