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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「クレオパトラ」 美術鑑賞映画〔10〕

クレオパトラ」 
当時は大失敗作、今は伝説の大作。

 


【原題】CLEOPATRA
【公開年】1963年  【制作国】亜米利加  【時間】244分  
【監督】ジョセフ・L・マンキウィッツ
【音楽】アレックス・ノース
【脚本】ジョセフ・L・マンキウィッツ シドニー・バックマン ロナルド・マクドゥガル
【出演】エリザベス・テイラークレオパトラ)  レックス・ハリソン(シーザー)  リチャード・バートン(アントニー)  ケネス・ヘイグ(ブルータス)  パメラ・ブラウン['17](巫女)  フランチェスカ・アニス(侍女)  ジョン・カーニー(フォイブス)  ジョン・ドーセット(アキレス)  ハーバート・バーゴフ(テオドトス)  ヒューム・クローニン(ソシゲネス)  マーティン・ランドー(ルフィオ)  ジョージ・コール(フラウィウス)  チェザーレ・ダノーヴァ(アポロドロス)  アンドリュー・キア(アグリッパ)  ロディ・マクドウォール(アウグストゥス)  ロバート・スティーヴンス(ゲルマニカス)  グレゴワール・アスラン(ポティナス)  マーティン・ベンソン(ラモス)  ジョン・ホイト(-)  キャロル・オコナー(-)    
  
【成分】スペクタクル ゴージャス パニック 勇敢 知的 セクシー かっこいい ローマ史劇 ローマ時代 紀元前1世紀 エジプト 
   
【特徴】当時の特撮技術とエキストラ動員力など、湯水の如く資金を投下して制作された超贅沢映画。もし同じような条件で現代の映画界が制作したら、数カ国合作でないと追いつかない。
 公開当時は興行成績トップであったにも関わらず、投下資金は回収されず大赤字。フォックス社は一時存亡の危機を迎えただけでなく、「十戒」「ベン・ハー」「スパルタカス」など古代史劇の名作を発表し続けたハリウッド全体にも衝撃を与えてしまい、ローマ史劇は衰退する。
 若きマーティン・ランドー氏が出演、「スペース1999」「スパイ大作戦」などのファンにとっては感激。
 
【効能】豪華な気分に浸れる。
 
【副作用】知的なクレオパトラを期待していた古代史ファンには、エリザベスのクレオパトラは妖艶さが強調され過ぎて残念。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。  
興行成績トップだったのに大赤字
 
 「レッド・クリフ」が歴史超大作だ、100億の資本を投じているなどと大騒ぎになっているが、ハリウッド全盛時代は桁が違う。その象徴的な歴史超大作がこれだ。
 エジプト女王クレオパトラ役にエリザベス・テーラー氏、ローマの独裁者シーザーには「マイ・フェア・レディー」のレックス・ハリソン氏、シーザーの部下アントニウスには後にエリザベスと関係を持ってしまうリチャード・バートン氏。(クレオパトラの霊がエリザベスに憑いたのか?)当時の高額ギャラ俳優たちが出演している。

 世間では興行収入が得られなくて大赤字の大失敗作、20世紀フォックスが存続の危機に陥った(余談1)作品として評判になっている。そのため超駄作のイメージが付いているが、内容自体は決して悪くない。私個人は大味感を抱いたが、アカデミー賞の1・2部門程度獲得ぐらいはあってもおかしくない作品だと思う。
 また、大赤字が一人歩きして観客からソッポを向かれたかのような印象をもつ映画ファンも少なくないと思うが、実際は公開年の興行成績トップの映画であるので、非常に売れていた。あまりにも制作費が巨額だったために元が取れなかったのだ。

 では、どの程度の額だったのかというと、単純に考えても現在の3百数十億円になる。しかも今では俳優・エキストラ・スタッフの人件費も高騰している。契約の概念も複雑になっている。いま全く同じやり方でクレオパトラを制作したら、国家規模のプロジェクトで数カ国合作でなければならない。当時のハリウッドは、それをフォックス一社でやったのだから凄い。

 「レッド・クリフ」では中国お得意の人民解放軍を動員しての迫力ある合戦を描写しているが、それでもCGに頼る。「クレオパトラ」の60年代はCGが無いので、当然のことながら群集場面はエキストラが全て演じている。画面に数千人規模の群集が写っていたら実際はそれ以上の人々がエキストラとして参加しているのだ。ガレー船やギリシャ風建物も実際に建造している。それでもって、当時のカラーフィルムは現在に比べて高価であり、4時間強という長い作品だが予定では3時間2本組6時間だったのだ。(余談2)

 「レッド・クリフ」のように2本組にするはずだったのが、なぜ4時間の1本にしたのか経緯は知らない。ただ、結論からいうと初志貫徹すべきだった。いくら現代よりもノンビリした時代でも、4時間はあまりに長すぎる。観客の需要と映画会社の供給のバランスを考えたら、1回に観るのは2時間前後か長くても3時間だ。むしろ4時間という長尺でよくその年の興行記録トップになったものだと感心する。良い時代だ。

 内容は決して駄作ではないが、所々にハリウッド的成金趣味が滲んでいるのが残念だ。クレオパトラの侍女に金髪美女がいるのも違和感がある。
 しかし、冒頭で朽ちかけたフレスコ画が次第に再生されて実写へと変化する技術は綺麗だ。たぶんアニメや特撮の技術だろう。美術的センスも素晴らしいが技術にも感嘆する。
 また、シーザーたちがガレー船に乗ってアリキサンドリアに入港する場面は圧巻だ。よくもローマ時代のアレキサンドリアをCG無しで再現したものだ。港湾にある多くの船も本物だし、港にいる多勢の群集も本物だ。さすがに遠景に見える伝説の大灯台は特撮だろうが。
 エリザベスがクレオパトラを演じたのも適切だったと思う。プトレマイオス王朝はアレキサンダー大王の配下将軍が樹立した王朝で王族はギリシア系だ。エリザベスはギリシア的風貌でもありイメージに合う。妖艶な美貌と機知に富んだ女王を好演している。(余談3)

 当時は失敗作だったかもしれないが、美術的史料価値は抜群だ。
 
(余談1)その後、「サウンド・オブ・ミュージック」で立て直しに成功し、「猿の惑星」シリーズや「スター・ウォーズ」で経営を安定軌道に乗せる。

(余談2)エキストラの総数は20万人以上らしい。賃金もさることながら、ローマ史劇なので衣装代も莫大だろう。
 地中海やエジプトの風景をネバタの砂漠・ロスの海岸などで代用することが可能だが、本作の場合は地中海沿岸地方の雰囲気を求めてイタリアでロケーション。
 主役のエリザベス・テーラー氏はたびたび体調を崩していたらしいので、撮影期間は延びに延び、他の共演者の調整が難航してやむなく配役を代えるなどトラブルも多い。これも投下資本激増の要因である。

(余談3)ハリウッド的エンタメ脚色はされているが、概ねは史実に沿っている。エジプトとローマの文化の差も出ているのが嬉しい。
 


晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆☆ 優
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆ 佳作

 
【受賞】アカデミー賞(撮影賞カラー)(1963年)
 
晴雨堂関連作品案内
クレオパトラ [DVD] FRT-289 セシル・B・デミル 1934年公開 デミル監督の豪華絢爛趣味映画
虫プロ・アニメラマDVD 千夜一夜物語/クレオパトラ/哀しみのベラドンナ 手塚治虫 虫プロ制作の大人アニメ、クレオパトラ他2作収録
JOY[劇場版]クレオパトラの饗宴 ヘア無修正 [DVD] ジャン・ピエール・フローラン
  
晴雨堂関連書籍案内
クレオパトラ〈上〉 (新潮文庫) 宮尾登美子
クレオパトラ〈下〉 (新潮文庫) 宮尾登美子 朝日新聞日曜版に連載、けっこう面白かった。
アントニーとクレオパトラ (新潮文庫) ウィリアム・シェイクスピア
世界の「美女と悪女」がよくわかる本 (PHP文庫) 世界博学倶楽部
 

   

 
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コメント

超大作

こんばんは

マイブログへのご訪問ありがとうございました。

私、この作品見た事ないのですが4時間!
相当な覚悟で挑まねばなりませんね。

ただ、ミカエルさんの感想読んでると時間を感じさせない
ようで一気見出来そうな雰囲気がします。

FOXが危機に陥るくらい大金かけた作品とは
どんなモノか見たいような

ちなみに、私の愛するSWで持ち直して良かったFOX(∩.∩)
又伺いますね~。

Re: 超大作

アニー氏へ
 
 私は当初の計画通り、3時間映画を2本にするべきだったと思いますね。カエサル編とアントニウス編。いくら現代よりノンビリした60年代初頭でも、4時間はつらいですよ。それでも興行成績トップだったそうですから凄いですね。
 
 映像は素晴らしいですよ。現代ではCGで再現しますが、当時は殆ど実際に造っていますから。

> こんばんは
>
> マイブログへのご訪問ありがとうございました。
>
> 私、この作品見た事ないのですが4時間!
> 相当な覚悟で挑まねばなりませんね。
>
> ただ、ミカエルさんの感想読んでると時間を感じさせない
> ようで一気見出来そうな雰囲気がします。
>
> FOXが危機に陥るくらい大金かけた作品とは
> どんなモノか見たいような
>
> ちなみに、私の愛するSWで持ち直して良かったFOX(∩.∩)
> 又伺いますね~。

CG以前の時代

このころ 古代ローマもの 聖書もの ギリシャ・ローマ神話もの 色々製作されていました。「ベンハー」などを観ると 戦車シーンなどこういう作り方はもうできないなあと 贅沢なものを観た気がします。

真面目なものもあれば 最初からB級エンタ路線のものもあり 最後に神の怒りに触れて大地が揺れ 大理石の柱や彫像がどどどっと倒れてきて 人々が逃げ惑う そんなシーンとともに 宴会では金髪オネエサンが薄物ののひらひらをまとって踊る場面が必ずあったりして あれはお約束のサービスだったのでしょうか。

お約束ですね。

amaria氏へ

 金髪美女が登場するのは時代考証として不自然ですね。「クレオパトラ」では金髪美女の侍女がおりましたし、「ベン・ハー」の凱旋場面では花びらをまく金髪美女がいました。
 
 ゲルマン人の金髪を輸入してカツラを作って被っていたお洒落があったらしいですが、「ベン・ハー」や「クレオパトラ」の時代ではありえないでしょう。
 
 ハリウッドの伝統的趣味ですね。

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『クレオパトラ』(1934)豪華絢爛な衣装と舞台装置。デミル映画らしさが楽しめる!

 クレオパトラの映画化作品というと、一般的には20世紀フォックスを破滅させる寸前まで追いやったエリザベス・テイラー主演の『クレオパトラ』(1963)が有名であり、1934年度版のこの作品を知る人は少ないかもしれません。

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