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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「レッドクリフ Part II ―未来への最終決戦―」 ストレス解消活劇〔63〕

レッドクリフ Part II ―未来への最終決戦―」 
久しぶりの正統派スペクタクル時代劇。

 


【原題】赤壁下 決戰天下
【英題】RED CLIFF: PART II
【公開年】2009年  
【制作国】亜米利加 中華人民共和国 中華台北 日本国 大韓民国  
【時間】144分  
【監督】呉宇森
【音楽】岩代太郎
【脚本】呉宇森 陳汗 郭筝 盛和
【言語】中国語
【出演】梁朝偉周瑜)  金城武孔明)  張豊毅(曹操)  張震(孫権)  趙薇(尚香)  胡軍(趙雲)  中村獅童(甘興)  林志玲(小喬)  尤勇(劉備)  侯勇[俳優](魯粛)  バーサンジャプ(関羽)  臧金生(張飛)  佟大為(孫叔材)  宋佳(驪姫)  張山(黄蓋)    
  
【成分】スペクタクル パニック 勇敢 知的 セクシー かわいい かっこいい 時代劇 3世紀初頭 中国 三國志 
   
【特徴】三國志で名高い赤壁の戦いを実写映画化。中国映画界空前の制作費100億円を投じた超大作の後編。前編とうって変わって第二次大戦のような戦争スペクタクルに描き、なおかつラストはヒロイックファンタジーに仕上げている。
 周夫人小喬と孫権の妹尚香が大活躍。金城孔明が飄々とした軍師ぶりを発揮。中村甘興がまるでノルマンディー上陸作戦のような奮闘を魅せる。
 
【効能】血わき肉おどりストレス解消。イケメン武者たちの活躍に萌え。白く輝く林志玲に萌え。ヴィッキー・チャオの可愛らしさに萌え。
 
【副作用】三国志ファンの中には、三国志を薄っぺらい男の友情活劇にされて憤懣。曹操を色ボケ爺にされて激怒。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。  
まるでノルマンディ上陸作戦

 第2部になると面白くなってきた。「三国志」ファンの中には嫌悪感を感じる方が当然多いと思うが。本作のために創作された武将が登場して華々しく散っていく。まるで劇的な演出のために創作されたキャラであるのがまるみえなのでワザとらしい。
 基本的には演義(余談1)に沿ったキャラ設定だが人物相関はまるで違う。誰が善玉か訳が解らないドロドロとした雰囲気を連想するのだが、これはスポ根のようで清々しい。周瑜孔明の間に熱い友情が芽生えるなんて、最初は「なんじゃこりゃ!」と思った。
 政略結婚ながら劉備に敬慕の情を抱くはずの尚香が、本作では曹操軍の下級指揮官と淡い恋をする。小喬にいたっては曹操の陣に乗り込んで直談判までやってしまう。

 もちろん、史実を面白おかしく作り替えるのが時代劇であって、今はそれを許容できるようになった。少年時代の私なら「忠臣蔵」は史実に沿ったリアルな政治戦と謀略と地味な討ち入りでなければ気が済まなかったが、今なら歌舞伎様式の派手な火事場装束で騒々しく陣太鼓を叩いて突撃する子供だましも味わいがあると感じる。加齢とともに食の幅が広がるものである。(余談2)

 CG技術が躍進しているとはいえ、今でも壮大なスペクタクルロマンを描くには相当な体力がいる。それもハリウッドなら手慣れているが、アジアではなかなか少ない。特に時代劇はメイクや衣装代がかさむので余計に銭がかかる。本作は果敢な意欲作だ。
 第一部では序章らしく各キャラの性格を紹介し各々の個人技を魅せ場とするチャンバラ劇が主流だったが、佳境である本作は群集劇だ。私は群集劇のほうが好きである。

 この映画はスペクタクル時代劇の王道だ。空前の大軍を率いて津波のように迫る悪の帝王はそこそこ狡猾で作戦に明るく貫禄があり冷酷で色好み、そして意外にも人心掌握に長けている一面も示す。対する正義の王国は兵力乏しく敗戦は明らか。しかし正義の志士たちは団結して悪と徹底抗戦。
 曹操軍は突出した第一人者が支配する。臣下は失敗したり背信を疑われると殺される。対する孫権と劉備の連合軍は参謀長のイケメン周瑜が仕切る自由な雰囲気の軍議、さらに曹操軍の女性は遊女だが孫権軍では女たちも軍議に加わって意見したり、敵陣へ特使として乗り込んだりと大活躍。このコントラストは観ていて気持ち良い。

 通常の戦争活劇なら大砲・機関銃などを登場させて迫力ある絵が描けるが、3世紀の中国ではチャンバラが基本。なのに当時の戦い方で近代戦のような大迫力を演出する。(余談3)映画館で観るために制作された画面一杯のスペクタクルだ。
 それでもって主人公たちが敵将曹操の首をとらんと敵陣奥深く分け入り激しい殺陣をこなし、同時に敵陣で軟禁状態にある小喬を救い出そうとする。まるで往年のハリウッド映画に登場するラブロマンスのようだ。命の危険もしくは貞操の危機が迫っているお姫様を救い出す物語は無数にあり、それは全世界で支持されている。
 
 この映画は、東アジアを代表する映画人やスター俳優たちが一堂に会して奏でた正統派スーパーエンタメ・スペクタクル・ヒロイックファンタジーである。もし「三国志」を忠実に映画化したら、たぶん多くの「世界人民」は共感しないだろう。何故なら登場キャラみんな狡猾な悪役に見えてしまうだろうから。
 美味くハリウッド風味のロマンに作り変えたものだ。

 私が最も気に入った場面は、孔明の策で曹操軍から矢を10万本調達する場面だ。酒を飲みながら飄々と作戦を実行する金城武氏の所作がカッコ良い。

(余談1)「演義」とは通俗小説の意味、ここでは「三国志演義」を指す。
 ファンなら御存知だろうが、「三国志」には様々なバリエーションがある。正式な歴史書である正史と、明代に成立した演義がある。さらにそれらを基にした小説や漫画は無数にある。日本では演義をベースにした吉川英治の小説と横山光輝の漫画、正史をベースにした李學仁・王欣太の「蒼天航路」が有名。

(余談2)忠臣蔵の吉良上野介は、浅野内匠頭を苛めたり、討ち入りの時は浪士たちの前で悪態をつく悪役老人として描かれている。実際は名君であり、討手の浪士たちに向かって武士らしく果敢に鍔迫り合いをやっていた。

(余談3)近代戦のような描写に不快感を持つ方もいるだろうが、当時の戦で死亡する原因の多くは弓矢によるもので、TV時代劇のようなチャンバラは主流ではない。それから、もっと地味でテンポがゆっくりしていただろう。
 
 「三国志」ファンの中には憤懣を持つ方がいるだろうが、私は扱き下ろす気にはならない。そもそも「三国志演義」はデタラメだし、本作が駄作なら過去のハリウッド映画も観れたものではないし、原典の三国志でも怪しいものである。

 ただ、「未来への最終決戦」という副題は余計だ。エンタメに必要以上の綺麗言を並べてはワザとらしい。

晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆☆ 優
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆☆ 名作

 
【受賞】第三回アジア・フィルム・アワード視覚効果賞
  
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レッドクリフ オリジナル・サウンドトラック コンプリート・アルバム
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コメント

英雄列伝

いや~三国志としても映画としても十分面白いのですが、最後はジョン・ウーらしく英雄揃い踏みって感じになってましたね。
思わず仮面ライダー全員集合を思い出してしまいましたよ。

そうなんですか・・

こんにちは、晴雨堂ミカエルさん。
私は恥ずかしながら、ほとんど三国志のことを知らずに、この映画を見たんです。
とはいえ、三国志ってどうやら色々と事実とは違っているんですね。
長い間に、何度となく本や映画やドラマにされる度に、色々付け加えたり、変えられ、脚色されたりして来たんでしょうかね。

こんにちは~♪
★YUKAの気ままな有閑日記★の由香です。
先日はPart1の方にコメント頂き、どうもありがとうございました。

晴雨堂ミカエルさんは2もお好きだったようですね。
私は1で燃えに燃えましたが(笑)、2には少々引き気味になってしまいました。
余計かな?って思えるエピソード(尚香が男装して敵地に乗り込むところなど)が多かったように思えて退屈してしまいました。
少し短くして、一気に一本の映画で観たかったです。

Re: 英雄列伝

 私も同じ事を考えていました。あんなラストもありでしょう。昔の私なら激怒したかもしれませんが。

> いや~三国志としても映画としても十分面白いのですが、最後はジョン・ウーらしく英雄揃い踏みって感じになってましたね。
> 思わず仮面ライダー全員集合を思い出してしまいましたよ。

Re: そうなんですか・・

 三国志を知らずに見たら、たぶん後半は楽しめると思いますね。古くからの「三國志」ファンからは不評が多いと聞いています。

> 長い間に、何度となく本や映画やドラマにされる度に、色々付け加えたり、変えられ、脚色されたりして来たんでしょうかね。
 
 これが歴史ドラマの醍醐味ではないでしょうか。大河ドラマだって、作者によって家康や秀吉の性格が変わってきます。作者の個々の解釈を楽しむのも楽しみです。
 
 三谷幸喜氏の「新選組!」で近藤勇と坂本竜馬が友達というのはぶっ飛びました。

Re: タイトルなし

由香氏へ
 
 私は金城孔明が矢を調達する場面が一番好きですね。矢が飛ぶ中、酒を飲む場面がカッコいい。 

> 晴雨堂ミカエルさんは2もお好きだったようですね。
> 私は1で燃えに燃えましたが(笑)、2には少々引き気味になってしまいました。
> 余計かな?って思えるエピソード(尚香が男装して敵地に乗り込むところなど)が多かったように思えて退屈してしまいました。
> 少し短くして、一気に一本の映画で観たかったです。

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