FC2ブログ

ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「クリムゾン・タイド」 知的興奮を楽しもう〔4〕 

クリムゾン・タイド」 
久々の潜水艦モノ佳作

 


【原題】CRIMSON TIDE
【公開年】1995年  【制作国】亜米利加  【時間】115分  
【監督】トニー・スコット
【音楽】ハンス・ジマー
【脚本】マイケル・シファー
【言語】イングランド語
【出演】デンゼル・ワシントン(ロン・ハンター少佐)  ジーン・ハックマン(フランク・ラムジー大佐)  ジョージ・ズンザ(ウォルターズ先任伍長)  ヴィゴ・モーテンセン(ピーター・“ウェップス”・インス大尉)  ジェームズ・ガンドルフィーニ(ボビー・ドガーティ大尉)  マット・クレイヴン(ロイ・ジマー大尉)  リロ・ブランカトー・Jr(ラッセル・ヴォスラー通信兵)  ライアン・フィリップ(グラッタム二等兵)  ダニー・ヌッチ(ダニー・リベッティ)  リック・シュローダー(ポール・ハラーマン大尉)
  
【成分】パニック 勇敢 知的 かっこいい 潜水艦
     
【特徴】「ケイン号の叛乱」水準の完成度、潜水艦モノの佳作である。ラストは爽やかなので家族での鑑賞にも適している。
 緊急出動した原子力潜水艦で勃発する艦長と副長の対立を軸に話が進む。叩き上げの艦長役にジーン・ハックマン氏、正義感の強いエリート副長役にデンゼル・ワシントン氏、キャスティングは絶妙、2人の俳優としてのキャラや演技のぶつかり合いも物語上での対立と同時に楽しめお得感がある作品だ。
 「ロード・オブ・ザ・リング」で渋い戦士を演じていたヴィゴ・モーテンセン氏は、ここではツルツル顔の優柔不断士官を演じている。また、名を連ねていないが、クエンティン・タランティーノ氏が脚本に関わっている。
 
【効能】職場での人間関係対策の参考になる。
 
【副作用】安っぽい海軍賛歌の映画に見えて不快感。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。  
オバマ大統領の対立候補だったマケイン氏、
自分とハックマン艦長を重ね合わせていた。


 アメリカ史上初のアフリカ系大統領として当選したバラク・オバマ氏はまだ40代と若く、スリムに引締まった体型に髭を綺麗に剃った顔、知的な物腰に清潔感のあるスーツ姿、実年齢よりも若く見える。
 敗れたジョン・マケイン氏は若作りしても無理がある白人の老人、オバマ氏当選が確定した時、本人にとって予想を上回る大差だったのか努めて清々しく潔い敗北宣言を行った。このとき会場に流れたBGM、あれ?この今どきのハリウッド映画に流れそうな安っぽい(失礼、私にはそう聞こえてしまう)エンタメ音楽はどこかで聞いたような・・。

 「クリムゾン・タイド」だった。潜水艦モノ映画の佳作、艦長を演じるジーン・ハックマン氏と副長役のデンゼル・ワシントン氏の手に汗握る対立劇を描いた作品だ。老境の叩上げ白人艦長と若々しいインテリ風の黒人副長、任務途中で険悪な関係となった艦長と副長だが、ラストは和解して艦長は非を認めて引退を表明、さらに副長の能力を認めて次期艦長に推薦して去っていく。
 なるほど、オバマ氏をデンゼル・ワシントン氏に、そしてマケイン氏は自分をジーン・ハックマン氏にダブらせているのか。たしかに何となく雰囲気は似ている。しかしマケイン氏よ、自分を美しく演出し過ぎではないか。

 さてこの作品、個人的にはドミトリク監督「ケイン号の叛乱」以来の完成度だと思っている。些か今どきのアメリカ的安っぽさ俗っぽさがあるが。
 お察しのようにこの作品の音楽は好きではない。監督も嫌いだ。そのため「どんな駄作かな」と思いながら見ていた。冒頭は2組の家族がホームパーティーを楽しむ風景、そこへロシアでクーデター勃発を伝えるTVニュース、いかにもアメリカ人が思いつきそうな悪玉ロシア人政治家が映る。(余談1)

 やがて非常召集、強面の老艦長がデンゼルを副長に抜擢、潜水艦クルーたちが会議室に集められ作戦概要を説明、雨の軍港へ移動し潜水艦を前にして整列、艦長の訓示と専任下士官の音頭による唱和、鑑に乗り込んで出撃。この一連の流れは非常にテンポが良い。後の展開を理解するに必要な軍隊における各々のポジションの説明も簡潔に判り易く描写されている。(余談2)

 ハックマン氏の威圧感ある艦長ぶりが素晴らしい。いかにも大ベテランの第一人者、普段は穏やかに気さくに話すが怒らせると恐ろしい雷を落とす。陰口すら思い浮かべないほど畏怖を抱かせる。当初は緊張する副長に葉巻を勧めたり慎重な性格を好意的に評価したりと気を遣う。デンゼル・ワシントン氏は期待通りインテリの真面目な副長を演じる。この艦長と副長の全編を通じて緊張感ある会話が気持ち良い。

 この作品では黒人差別を背景にするような場面は出てこないところに好感が持てる。黒人士官はかつては苦学して這い上がった人間として描かれ、黒人であることを理由に失脚するパターンで描かれる事が多かったが、ここではそんな描き方はしていない。ベトナム戦争時では黒人士官は珍しい存在だったが、この作品が制作された時期のアメリカ軍制服組トップはアフリカ系のコリン・パウエル陸軍大将だった。

(余談1)デンゼル・ワシントン氏とヴィゴ・モーテンセン氏の2人が並んで金紙で作った三角帽を被っている。ヴィゴが若い。どことなくエド・ハリス氏を青年にしたような顔つきだ。
 貫禄あるアラゴルン王役とは異なり、ここでは海軍士官役だから刈上げのツルツル顔、しかも佳境で副長派と艦長派の板ばさみになって汗だく顔でオロオロする。

(余談2)日本語では「副長」と書くが、実際は長を副える意味ではない。解り易く言えば幹事長か事務局長のようなポジションである。
 この場面で海軍司令は殆ど口を出さず会議に立ち会うだけ、副長がテキパキと作戦内容を説明し、艦長がシメの訓示を行い、ベテランの先任下士官が乗組員たちに唱和をさせる。
 海に出れば艦長は艦内で突出した強力な権限を持つ最高権力者、その下で副長が艦内全般の運営を取り仕切り、大尉たちは艦長・副長を補佐して各部門の責任者を務め、先任下士官は艦長に次ぐ影響力で水兵たちをまとめる。
 会議が終わって副長が各部門の士官たちと談笑し握手する場面があり、日本の軍隊ほど階級は意識されていない。副長は士官たちの上司というより幹事でもあることを示す。
 普通、潜水艦の艦長は「中佐(Commander)」が務めるが、ここでは重要な作戦を担うのか「大佐(Captain)」が指揮を執っている。日本語の階級は古代律令制の「佐」「尉」の呼称に大中小の等級を付けただけなのでピンとこないだろうが、英語の階級は役職名でもある。Commanderは「指揮官」「司令官」の意味がある。因みにアメリカ海軍で大尉は「Lieutenant」で副官の意味。
 

 
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆☆ 優
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆ 佳作

  
晴雨堂関連作品案内
クリムゾン・タイド ― オリジナル・サウンドトラック
ケイン号の叛乱 [DVD] エドワード・ドミトリク




 
 blogram投票ボタン にほんブログ村 映画ブログへ
ブログランキングに参加しています。
関連記事
スポンサーサイト



コメントの投稿













管理者にだけ表示を許可する
この記事のトラックバックURL
http://seiudomichael.blog103.fc2.com/tb.php/824-00db5583

 1995年/アメリカ  監督/トニー・スコット  出演/デンゼル・ワシントン      ジーン・ハックマン      ヴィゴ・モーテンセン  潜水艦ものにハズレなし!と言うけれど、この作品はちょっと毛色が変わっている。潜水艦ものの醍醐味って、海中での敵...
[2009/09/24 00:16] It's a wonderful cinema
皆さんは、映画の中の名演説というと、どれを思い浮かべますか? 多くの方がそうだと思いますが、双璧は『独裁者』でのラストのチャップリ...
[2009/09/24 09:48] 愛すべき映画たち
「クリムゾン・タイド」久々の潜水艦モノ佳作【原題】CRIMSONTIDE【公開年】1995年【制作国】亜米利加【っこいい潜水艦【特徴】「ケイン号の叛乱」水準の完成度、潜水艦モノの佳作である。ラストは爽やかなので家族での軸に話が進む。叩き上げの艦長役にジーン・ハックマ?...
[2012/05/03 05:25] まとめwoネタ速neo
映画処方箋一覧
晴雨堂が独断と偏見で処方した映画作品。
下段「日誌」項目は晴雨堂の日常雑感です。
メールフォーム
晴雨堂ミカエルに直接ご意見を仰せになりたい方は、このメールフォームを利用してください。晴雨堂のメールアドレスに送信されます。

名前:
メール:
件名:
本文:

プロフィール
↓私の愛車と野営道具を入れたリュックです。

晴雨堂ミカエル

Author:晴雨堂ミカエル
 執筆者兼管理人の詳しいプロフィールは下記の「晴雨堂ミカエルのプロフ」をクリックしてください。

晴雨堂ミカエルのプロフ

FC2カウンター
2007年10月29日設置
当ブログ注目記事ランキング
当ブログで閲覧数の多い順ランキングです。
設置2013年6月13日
ブログランキング
下記のランキングにも参加しております。ご声援ありがとうございます。
  にほんブログ村 映画ブログへblogram投票ボタン
アクセスランキング
[ジャンルランキング]
映画
107位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
レビュー
51位
アクセスランキングを見る>>
タグランキング
晴雨堂の関心度が反映されています。当ブログ開設当初は「黒澤明」が一位だったのに、今は・・。
訪問者閲覧記事
最近のアクセス者が閲覧した記事を表示しています。
月別アーカイブ
ブロとも申請フォーム
リンク