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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「ケイン号の叛乱」 知的興奮を楽しもう〔5〕 

ケイン号の叛乱」 組織問題がテーマの秀作
 


【原題】THE CAINE MUTINY
【公開年】1954年  【制作国】亜米利加  【時間】124分  
【監督】エドワード・ドミトリク
【原作】ハーマン・ウォーク
【音楽】マックス・スタイナー
【脚本】スタンリー・ロバーツ
【言語】イングランド語
【出演】ハンフリー・ボガート(クィーグ中佐)  ホセ・ファーラー(バーニー・グリーンウォルド中尉)  リー・マーヴィン(ミートベル)  ヴァン・ジョンソン(スティーブ・マリク大尉)  ロバート・フランシス(ウィリー・キース少尉)  E・G・マーシャル(チャーリー少佐)  メイ・ウィン(メイ・ウィン)  フレッド・マクマレイ(キーファー大尉)  トム・テューリー(デヴリース中佐)  クロード・エイキンス(ホリーベル)
  
【成分】パニック 知的 かっこいい アメリカ海軍 1940年代前半
     
【特徴】赤狩りの標的にされたこともあるドミトリク監督の秀作。海洋叛乱モノの金字塔であり、後の「スタートレック」や「クリムゾンタイド」などにも影響を与えている。
 主演で悪役のハンフリー・ボガード氏が良い味を出している。この時期のボギーは民家を占拠して人質をとる凶悪犯役など悪役を熱心にこなした。
 
 舞台は第二次大戦時、日本軍と対峙する米太平洋艦隊所属の駆逐艦ケイン号、ここで見掛け倒しの無能艦長とそれをフォローする部下との対立を描く。後半は軍法会議に舞台が移り優れた法廷劇を展開する。
 組織論や人間関係や事実関係というものを学ぶ格好の教材だ。
 
【効能】職場での人間関係対策の参考になる。事実関係の落とし穴を学べる。
 
【副作用】軍艦が舞台なのに戦闘場面が無いのでガッカリ。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。  
ボギーの悪役が憎たらしいほど巧い。
 
 社会の暗部を鋭く斬り込み、それでもって優秀なエンタメ娯楽作として巧く構成してしまうエドワード・ドミトリク監督の名作である。(余談1)
 軍艦内部での叛乱騒ぎを扱った映画では、近年のデンゼル・ワシントン氏主演「クリムゾンタイド」が記憶に新しいが、この映画はその元祖的なものである。さらに舞台は海ではなく宇宙になるが、TVドラマ「スタートレック」でも同様のネタが使われている。

 キャスト表によると主役は当時の大スターであるハンフリー・ボガード氏(以下ボギーと称する)になるのだろうが、ボギーはいわゆる悪役である。物語の主人公はボギーが演じる艦長の下で働く大学でたての新任少尉であり、若い彼の目線で話が進行していく。
 舞台は第二次大戦中の太平洋で行動する米海軍駆逐艦、少尉が赴任したての頃の艦長は退役間近と思われるくらいの年輩の大佐で、殆どを40歳前後の副官に鑑の仕切りを任せている。(余談2)副長は指揮だけでなく、本来は部下にやらせてもいいはずの作業までこなすが、艦長はねぎらいどころか結構きつい冗談をとばす。
 少尉はその艦長の一見するといい加減なやり方に憤懣を持つが、やがて50代前半くらいの若々しい新任の艦長に交代する。前任者と違いキビキビとした物腰と厳格な姿勢に少尉は期待を抱くが・・。

 ボギー艦長の正体が徐々に露呈して行く。会社の上司にも程度の差はあれいるだろう、仕事とは直接あるいは全く関係の無い些細な事で部下を執拗に叱責し続け、瑣末な事に夢中になって肝心の指示や注意を忘れてしまう。その結果、大チョンボに発展しても責任者としての責任はとらず部下に擦り付ける。
 ボギー艦長は乗組員の服装や食糧のデザートの数には目くじらをたてるが、戦闘の指揮はパニックになってできない人物だった。やがて悪天候が駆逐艦を襲い、錯乱状態の艦長を間近で観た乗組員たちは部下のフォローだけではもはや乗り切れないと悟り、副官は艦長から指揮権を奪うことを決意する。

 嵐を乗り切ったが、それでハッピーエンドではなかった。母港へ戻ると副長の叛乱容疑で軍法会議にかけられる。陸に上がるとボギー艦長は「立ち直って」自己弁護と責任転嫁をはじめる。艦長の精神異常を訴える副長に検察は、精神医学の知識がない点を突き、艦長が異常か正常かを法理論的に証明し判断する資格が無い、すなわち副長は違法行為をやったと追及する。(余談3)だが、有能な弁護人の巻き返しによって、法廷で艦長は自らの問題点を暴露してしまう。
 ラスト、あの若い少尉は別の駆逐艦へ転属となる。そこの艦長は何と最初出会った老艦長、今度は懐かしさと親しみで笑みがこぼれる少尉だった。

 2時間枠の映画に、海洋ドラマと法廷ドラマを巧くまとめた監督、そしてボギーの悪役ぶりは素晴らしい。大スターであるボギーは演技者としての野心から、通常よりも安いギャラで艦長役を捥ぎ取った、よほど演じたかった悪役なのだろう。

 最後に物語の中心を担う副官役のヴァン・ジョンソン氏が2008年12月12日に逝去されたそうである。92歳だった。ご冥福を祈ります。
 
(余談1)ドミトリク監督作で私がイチオシの映画は「十字砲火」だ。人間の差別意識に切り込んだ名作であり、日本の同和教育や人権啓発に使われる教育映画と違ってサスペンス仕立ての優れた娯楽作に仕上がっている。
 邦画はどういう訳かストレートに主義主張が出過ぎて物語としては面白くない作品があまりにも多すぎる。もっとも、そのおかげで国策映画は説教臭くて煽動される人が少なくて幸いなのだが。

(余談2)長らく観ていないので記憶違いかもしれないが、ふつう駆逐艦の艦長は少佐(ルタナン・コマンダー)か中佐(コマンダー)が務めるのだが、この老艦長は大佐だったような気がする。

(余談3)私はこの映画で初めて法廷の厳しさを垣間見た。自分で絶対に正しいと思っていても思わぬ落とし穴があることを学んだ。
 

 
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆☆ 優
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆☆☆ 金字塔

 
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クリムゾン・タイド 特別版 [DVD] トニー・スコット
  
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ケイン号の叛乱 1 (ハヤカワ文庫 NV 84) ハーマン・ウォーク
ケイン号の叛乱 2 (ハヤカワ文庫 NV 85) ハーマン・ウォーク
ケイン号の叛乱 3 (ハヤカワ文庫 NV 86) ハーマン・ウォーク
 
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「クリムゾン・タイド」 知的興奮を楽しもう〔4〕

 


 
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