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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「大閲兵」 青春回帰〔5〕

大閲兵」 古き良き時代の人民解放軍。

大閲兵
大閲兵 [VHS] 陳凱歌
 
【英題】The Big Parade 
【公開年】1985年  【制作国】中華人民共和国  【時間】99分  
【監督】陳凱歌
【撮影】張藝謀
【言語】中国語        
【出演】王学圻(李偉成小隊長)  孫淳(孫放)  呉若甫(呂純)     
 
【成分】かっこいい 切ない 人民解放軍 80年代 中国
 
【特徴】軍隊を舞台にした映画だが、戦闘・銃撃といった硝煙臭さ血腥さは無く、部下虐待といった陰鬱な雰囲気も無い。いたって爽やかな青春スポ根モノなので、家族揃っての鑑賞にも堪えうる。本当にこんな軍隊があったら良いのに、と思わせる癒し系映画でもある。
 登場人物たちは階級の無い時代の人民解放軍制服を着ているので、マニアにも人気。
 
【効能】国慶節(建国記念日)パレードの練習に様々な思惑で参加する兵士たち、炎天下とコンクリートの照り返しのある場所で苦しい行進の練習、やがて全員一丸となって乗り越え有終の美を飾るところが軍隊映画らしからぬ清々しさでポジテブな気持ちになれる。
 
【副作用】文部科学省推薦映画のようでつまらないかもしれない。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。  
陳凱歌張藝謀のコンビがおくる第二弾

 今や世界的に著名な映画人である陳凱歌氏(チェン・カイコー・「始皇帝暗殺」)と張藝謀氏(チャン・イーモウ・「あの子をさがして」「ヒーロー」)が若い頃にコンビを組んで発表した作品。
 
 前年、陳監督が初めてメガホンをもち、張氏が撮影した「黄色い大地」が国内外で高い評価を受けた。だからこの作品は期待の第2弾である。前作に続いて監督は陳氏で撮影は張氏、主演の一人を務めた王学圻氏(ワン・シュエチー「ヘブンアンドアース/天地英雄」)も、ここでは小隊長役で登場する。
 
 1985年作だが、党や軍からクレームがついて公開が2年ほど遅れた。日本で紹介されたのはさらに後だったと思う。上演されたのも大きな映画館ではなく、市民サークルなどの主催によるミニシアターや公民館での上映が多かった。この時期は、オリバー・ストーン監督「プラトーン」やキューブリック監督「フルメタル・ジャケット」などが評判になっており、同じ軍隊をテーマにした映画ということでよく比較された。
 
 「プラトーン」や「フルメタル・・」はアメリカ軍内部への批判が重要な要素となっていて、当然の事ながら上官や戦友たちからの虐待描写があるし、精神に異常をきたした人物も登場する。「大閲兵」ではそういう暗い描写は無い。
 
 登場人物各々の生い立ちや思惑などの人間臭い描写はあるものの、一様に「優しい人」「良い人」ばかりである。しかも国家行事のパレード訓練なので、人を殺す練習ではなく延々行進ばかりやらされる。それを上官や兵士たちが励ましあって精進し本番に臨むという内容なので、軍隊映画というよりは文部省選定のスポ根青春映画に近い。だから「フルメタル・・」の後に「大閲兵」を観たら癒されるだろう。
 
 もちろん、言論の自由が保証されているはずのアメリカと、言論と表現に対しあからさまに制約のある中国という条件は考慮しなければならない。前述したように党と軍からクレームがついた作品であり、陳凱歌監督自身も「(公開されたのは)オリジナルではない」と語った。
 
 それにしても何故クレームを?という疑問が起こる。実は修正をへて公開されたものですら軍からクレームがあったそうだ。私から観れば、映画の通りの軍隊なら素晴らしいと思った。当時、中国にかぶれていた知人にいたっては「アメリカ軍は非人間的、人民解放軍は人間的」とまで言っているのだ。党や軍の思惑通りだと思うのに、これ以上なにを求めるのだろうか。党や軍の言う通りにしたら著しくリアリティーが損なわれると思うのだが。
 
 前作の「黄色い大地」でも、王学圻氏は農民よりも農作業が巧い八路軍兵士(便宜的にいえば毛沢東率いる共産党軍)を演じた。過去の映画でも抗日兵士や共産党員をスーパーマンのように描くことが多いという。しかし「黄色い大地」では単なるスーパーマンではなく、善意ではあるが若いゆえの無理解も描かれていた。農村の貧しさに驚いたり、言葉の端々に農民の苦しさを理解していない姿勢を滲ませたり、最後は人身御供的に嫁入りさせられる主人公の少女を助けることすらできなかった。少女を助けるため、律儀に再訪するがすでに少女は単身村を出ようとして河に溺れ死んでいる。ラストは広大な土獏のような黄色い大地に少女の歌声がこだまする。「万民救う共産党」
 
 とりようによっては露骨な共産党批判にも聞こえる。結局、農民の苦しみを理解できていない兵士、一人の少女すら救えなかった兵士。しかし公開され中国国内の批評家たちから賛美された。逆にとれば共産党の善意と律儀さにリアリテイーを持たせたとも言える。ところが「大閲兵」では制約が強かった。これは中国の党と軍との関係を考える上で興味深いかもしれない。そして、この現象は中国に限ったことではない。
 
 余談だが、文化大革命の頃に人民解放軍は「指揮官も兵士も人格的に平等である」を建前に階級制度を廃止している。兵士も指揮官も同じ人民服形の軍服に赤い無地の襟章を付けただけ。
 ところが、この映画が制作された頃に再び階級制度が復活した。劇中の兵士たちは階級の無い軍隊時代の格好だが、現在はロシア軍に似た格好になっている。
 
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆☆ 名作


【受賞】モントリオール世界映画祭審査員賞
 
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コメント

こんにちはー!
TBとコメントありがとうございました。
1985年の映画なのですね。
私は丁度その頃、中国映画(チャン・イーモー、チェン・カイコー)
を知って、一気に中国映画のファンになったものでした。
もう22年も前だとは・・・。

人民服の中国はもういない。

こんばんは、晴雨堂です。
 わざわざの御返信ありがとうございます。
 私は陳凱歌監督と張藝謀監督の二人が初めて手掛けた「黄土地」からファンでした。当時は「西太妃」や「大橋下面」がチョットしたブームで、私自身も中国語を第二外国語で履修していたので、よく見ていました。
 すっかり巨匠になってしまいましたね。作風もエンタメ志向になってしまって、私も時代の流れを感じ些か寂しく思っています。

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チャン・イーモー監督とチェン・カイコー監督の映画

私が初めて中国映画を見たのは、多分 「紅いコーリャン」を1987年、映画館で見た時だった。 映像美や独特の色合いなどで、びっくりして、中国映画って チャン・イーモー監督って、凄いんだなー!って思いました。

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