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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「地球が静止する日」 孤独を楽しむ時に〔39〕 

地球が静止する日」 
ロバート・ワイズ監督の名作SFをリメイク

 


【原題】THE DAY THE EARTH STOOD STILL
【公開年】2008年  【制作国】亜米利加  【時間】106分  【監督】スコット・デリクソン
【音楽】タイラー・ベイツ
【脚本】デヴィッド・スカルパ
【出演】キアヌ・リーヴス(クラトゥ)  ジェニファー・コネリー(ヘレン)  ジェイデン・スミス(ジェイコブ)  キャシー・ベイツ(国防長官)  ジョン・ハム(-)  ジョン・クリーズ(-)  カイル・チャンドラー(-)  ロバート・ネッパー(-)  ジェームズ・ホン(-)  ジョン・ロスマン(-)
   
【成分】ファンタジー スペクタクル パニック 不気味 知的 絶望的
     
【特徴】1950年代の名作SFを最新のCGを駆使してリメイク。原題は同じだが、邦題は前作の「地球の・・」と区別するために「地球が・・」としている。
 当時は米ソ冷戦体制下での核戦争危機が背景にあり、主人公クラトゥは地球人を核武装解除するのが任務だった。
 本作では、冷戦体制が崩壊し環境問題や宗教紛争など核問題以外にも様々な問題が絡み合う混沌とした時代での制作なので、クラトゥの任務は人類という種の抹殺とそれ以外の種を保護する事にある。
 前作と同じくクラトゥはのっぺりした巨大人形ロボットを連れて乱れない背広姿で行動、キャラとして著しい変化はない。ただヒロインはこの半世紀あまりの女性を取り巻く環境が変化した事を反映して、恐怖に直面すると絶叫するハリウッド定番ヒロインから常に冷静な判断力のあるキャリアウーマンになった。
  
【効能】人類を取り巻く深刻な状況を悟らせる。
 
【副作用】結論の先送りに不完全燃焼。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。  
前作の根幹を潰したリメイク。
 
 ロバート・ワイズ監督「地球の静止する日」は私のお気に入り作品である。良い意味でも悪い意味でもマッチョ主義のアメリカ人気質が前面に出たヒューマンなSF風味の名作である。リメイクではキアヌ・リーブス氏が宇宙からの使者クラトゥを演じる。これは適役といえよう。さらに私のお気に入り女優ジェニファ・コネリー氏がヒロインを担当する。これだけ条件が揃えば映画館へ行かねばなるまい。いや、スクリーンいっぱいのジェニファのアップが見られるなら、たとえどんな駄作でも劇場へ馳せ参じるだろう。(余談1)
 仕事を終えて映画館へ行き公開日19日のチケットを購入しようとカウンターの前に立つと、なんと前夜祭と称して本日(18日)の夜から上映と書いてあるではないか、迷わずそのまま鑑賞する。

 さて、リメイクを制作するにあたっての問題は、前作をどの程度踏襲するか、どの程度改変するかだ。この匙加減は非常に難しい。
 踏襲して良かったと思うのは、クラトゥのイメージである。前作も七三頭に背広のスタイルだが、キアヌ・クラトゥもこざっぱりした髪型で殆どがスーツ姿だ。またクラトゥを守るノッペリとツヤ光りした巨人ロボットは今回も登場する。
 改変して良かったのは、前作では空飛ぶ円盤でやってくるが、今回は人智を超えた超文明なので得体の知れない光る球体や謎の金属虫になる。前作のクラトゥは宇宙人というよりは知的で物静かなオジサンという感じだったが、今回はさらに感情の起伏が少なくキアヌの面長な白面と身なりが崩れない背広姿が宇宙人らしさを強調している。前回のヒロインも意志の強い女性だが、当時の女性キャラは恐怖に直面するとか弱く絶叫を強いられた。今回のヒロインは前作以上に知的で概ね理性的に行動する。
 また、前作でクラトゥを窮地に追い詰めるのはヒロインのボーイフレンドで、ヒロイズム・マッチョ主義から宇宙人を侵略者だと決め付け英雄になるために妨害工作をする。今回はヒロインの幼い継子がその役割を担当する。これは賛否あるかもしれないが私は良い構成だと思う。

 50年代の社会と21世紀初頭の現在とでは、社会状況は大きく異なる。社会状況が異なればキャラの描き方も変わってくる。また映像の技術も格段に進歩しているので凝った描写もできる。前述した改変して良かった部分は、むしろ現在の様々な状況を考慮すれば当然の内容だと思う。
 問題は物語の佳境をどうするか、オチをどうするかだろう。前作でクラトゥは人類に向かって演説する。「宇宙にも国連のような組織があり、宇宙全体に平和秩序を構築している。地球人もその秩序に組み込まれる。野蛮な核兵器は捨てろ」そんな趣旨だった。そして銃を乱射したがる野蛮な地球人に地球の自転を止めるという圧倒的な力技をみせて地球人を屈服させる。アメリカ人が考えそうな覇権思想だが、説得力はあるし解りやすい。

 50年代の単純な米ソ冷戦から50年が過ぎ、目下の問題は環境問題と宗教や経済などの複雑な利害対立だ。人類の驚異はもはや人類そのものである。だからキアヌ・クラトゥが「地球を救うために人類を滅ぼす」という言い分はクラトゥが属する宇宙秩序の考え方としては正しい。
 それだけにヒロインの説得で人類抹殺を思い留まらせるのは極めて不自然だ。ヒロインやその友人たちは信頼できても、人類を牛耳る体制権力を前にすればヒロイン個人の良心が虚しい存在であるのは明白。しかもクラトゥの立場なら人類とは数多くある種の1つに過ぎない。しかもその種は地球の生態系を破壊し続け危険だ。さらに作中でアメリカ政府は最後までヒロインたちの良心を裏切り続けた。

 私がクラトゥなら、ヒロイン個人の涙だけで人類全てを「安全」だとは評価できない。人類抹殺を思いとどまってしまう「危険」はおかせない。もし魔がさして違法行為をやるとしても、せいぜいヒロインを安全な母星へ連れ去るくらいか。
 前回のように、力を見せて人類を屈服させた方が簡単で早いはずなのだが、アメリカ人は気弱くなっているのかな?

(余談1)私は「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」のバレーリーナ少女の頃からのファンである。
 
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆ 良
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆ 凡作

 
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こんにちは~♪

>「地球を救うために人類を滅ぼす」という言い分はクラトゥが属する宇宙秩序の考え方としては正しい。
 それだけにヒロインの説得で人類抹殺を思い留まらせるのは極めて不自然だ。
私もそう思いました。
かなり期待したSF映画でしたが、ラストが陳腐でしたよね~
もうちょっと脚本を練って欲しかったです。
[ 2009/10/06 17:18 ] [ 編集 ]
由香氏、ようこそ。

 前作の方がシンプルでまとまりとインパクトがありましたね。子供心に溜飲さがる思いを抱いたものです。
 本作の場合、ラストをどんなまとめ方をするのか楽しみだったのですが、せっかく宇宙人になりきっていたキアヌのキャラが台無しです。「ノウイング」のほうがまだ納得のいくラストでした。

> こんにちは~♪
>
> >「地球を救うために人類を滅ぼす」という言い分はクラトゥが属する宇宙秩序の考え方としては正しい。
>  それだけにヒロインの説得で人類抹殺を思い留まらせるのは極めて不自然だ。
> 私もそう思いました。
> かなり期待したSF映画でしたが、ラストが陳腐でしたよね~
> もうちょっと脚本を練って欲しかったです。
[ 2009/10/07 02:54 ] [ 編集 ]
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年内の鑑賞予定はあと3本。そんな時期になったんですね~【story】巨大な謎の球体と共に地球に降り立った宇宙からの使者クラトゥ(キアヌ・リーヴス)。友好か、侵略か―。クラトゥの謎を解き明かすべく国防長官(キャシー・ベイツ)はじめ政府や科学者たちがやっきになる...
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