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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「うる星やつら 怒れシャーベット」 家族と一緒に愉快になろう〔9〕 

うる星やつら 怒れシャーベット」 
「うる星」OVA作品

 


【公開年】1988年  【制作国】日本国  【時間】97分  【監督】四分一節子
【原作】高橋留美子
【音楽】
【脚本】
【言語】日本語
【出演】平野文ラム) 古川登志夫諸星あたる) 神谷明面堂終太郎) 小宮和枝(ラン)
   
【成分】楽しい かわいい コミカル アニメ
     
【特徴】うる星やつら」連載・放送終了後に製作された作品。原作に沿ったギャグが連発。ラムとランの掛け合い漫才が楽しい。
  
【効能】明るい色調に明るいギャグに世界が楽しくなる。
 
【副作用】ギャグのテンポに古さがあり楽しめない。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。
「うる星」の残り香。

 「うる星やつら」(以下「うる星」)ほど男女双方から支持され、漫画業界・アニメ業界を牽引した作品は無いと思う。私が高校・大学時代を過した80年代は「うる星」とともに歩んできたといっても過言ではないほどだ。
 当時、漫画同人誌のサークルに顔を出していて、同人誌即売会などのイベントにもよく行った。イベントには必ずトラ縞ビキニを着てイベント会場を闊歩する女性が大勢いた。スタイルの良い女性は人気の的で、まるでモデルのようにポーズをとり、大勢のオタク少年たちのフラッシュを浴びる。(余談1)

 さて、「うる星」関連の作品レビューで述べ続けたように、映画1作目「オンリー・ユー」は発展期、2作目「ビューティフルドリーマー」は全盛期、3作目「リメンバー・マイ・ラブ」は安定期、4作目「ラム・ザ・フォーエバー」は衰退期、5作目「完結編」と6作目「いつだってマイ・ダーリン」は残照期だろう。

 この「怒れシャーベット」は88年に発表された30分ビデオ作品である。既にアニメ放送は86年に終わった。原作漫画のほうも87年に終了した。残照期にあたる。映画「完結編」でキャラデザインを担当した四分一節子氏が監督を務め、原作をベースに構成されている。ギャグのテンポやオチも初期の「うる星」を彷彿させる。テレビ局での活躍を終えた「うる星」がビデオとして復活したような感じだ。このビデオ作品は単発で終わらず、91年まで7作ほど制作されたと思う。

 しかし、どういう訳か以前のような新鮮な感動は感じなくなった。シャーベットを作る動物(機械だったかな?)をラムとランが扱き使って逆襲される物語で、初期のアニメを連想するノリなのだが、どこかが違う。BGMも「うる星」らしさが無く、失礼ながらどこかの場末アニメの音楽のように聞こえた。エンディングの映像も予算が少ないのか手を抜いている。
 後に発表される「ヤギさんとチーズ」だったか、面堂が私設軍隊を動員して校舎の廊下に司令部を設置するいつもの大袈裟な場面も虚しい。全体のギャグとオチは面白いのだが、なんだか昔見たアニメを繰り返し見過ぎて飽きてしまったような、いや再放送や録画した過去のエピソードは今観ても笑えるし感動する。だからこの一連のビデオ作で感じる空虚な倦怠感は別のモノだ。気だるい内輪ウケの同窓会もどきといった感じか。

 当時はまだ「うる星」ファンは大きな勢力をほこっていた。ファンの圧力でTV放送全エピソードがLD化(余談2)されたほどだ。映画「完結編」の制作もファンの力だ。そもそもTV放送にしてもファンの力で何度も放送延長になって4年以上も長きにわたった。この一連のビデオ作品もその勢いで制作されたようなものだ。(余談3)
 「宇宙戦艦ヤマト」や「機動戦士ガンダム」などファンの熱い声援でブレイクした作品はあるが、「うる星」は「ヤマト」や「ガンダム」ほどには制作者・スポンサー側の意向よりもファンによって育てられた作品の意味合いが非常に強いと思う。

 そういう意味でこの作品は「うる星」の凄さを表している。

(余談1)当時の同人誌即売会は現在のような規則で縛られておらず自由だった。露出度の多いラムの扮装をしたまま会場を出て街を歩いたり駅の改札をくぐったりということがあったらしく、しかも10代の女の子とあっては世間から誤解を受けるのは必定。
 もちろん、本来は行儀の良い少年少女たちが中心、節度ある秩序が自主的に保たれていた。ただ、公的抑圧に無頓着で世間知らずな面はあった。現在の東京のコミックマーケットをはじめ各地のイベントはそういった苦い体験を経て様々な規則が整備されていったのである。

 平素の私を知る人は当時からコスプレ少女を追い掛け回していたのでは、と勘繰るだろうが意外にそうではない。高校生の自分はカメラや写真には全く興味がなく写真を撮るようになったのは大学に入ってから。しかもカメラマン志望の硬派な女友達の影響なので題材は森や湖といった藝術的なものやドヤ街の労働者やデモ隊などの社会派志向。女の子をナンパして撮るといった行為は無かった。

(余談2)LDとはレーザーディスクの略。DVDが登場する前のメディア。昔のLP盤くらいの大きさで持ち運びに不便。価格も高い。今でこそTVドラマやアニメを全話収録DVDは珍しくないが、当時はありえない話だった。「スタートレック」や「未来少年コナン」など根強いファンが支持する作品は全話収録ディスクが極めて高価な値段で売られていた。

(余談3)西村知美氏も「うる星」ファンで脚本を投稿していた。何かの機会で読んだ事があるが、けっこう面白かった。

晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆ 良
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆ 佳作

 
晴雨堂関連作品案内
DVDうる星やつら OVAカルテット その2
うる星やつら 了子の9月のお茶会&アイムTHE終ちゃん [DVD]
 

   

 
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