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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「バンパイア・ラヴァーズ」 萌えたい時に〔16〕

バンパイア・ラヴァーズ」 
バンパイア物の元祖。

 


【原題】THE VAMPIRE LOVERS
【公開年】1971年  【制作国】英吉利  【時間】91分  
【監督】ロイ・ウォード・ベイカー
【原作】ジョゼフ・シェルダン・レ・ファニュ
【音楽】ハリー・ロビンソン
【脚本】チューダー・ゲイツ
【言語】イングランド語
【出演】イングリッド・ピット(マルシーラ ミラーカ カーミラ)  ジョージ・コール(モートン)  ピーター・カッシング(スピルスドルフ将軍)  ピッパ・スティール(ローラ)  マデリン・スミス(エマ)  ドーン・アダムス(-)  ケイト・オマラ(-)  ダグラス・ウィルマー(ハートグ男爵)  ジョン・フィンチ(-)
    
【成分】ファンタジー ゴージャス 不思議 不気味 知的 セクシー 吸血鬼 ホラー 19世紀 レズビアン
     
【特徴】バンパイア物としては、むしろドラキュラよりこのカーミラのほうが元祖だろう。
 当時、乳房がポロリとか陰毛が透けて見えたとかで話題になった。物語自体もホラーというよりはレズビアンがテーマといった方が良いくらいで批判的評価も多かった問題作である。私の目にはそんな過激な場面は見当たらなかったのだが。
 主人公の女吸血鬼カーミラ役を東欧系ドイツ人のイングリッド・ピット氏が妖しく演じた。
  
【効能】妖艶な場面に恐怖よりも萌えてしまう。
 
【副作用】ホラーを期待して観た人には、恐怖を楽しめず不満。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。  
公開当時は性的描写が論議をよんだ。
 
 吸血鬼とドラキュラは事実上同義語の扱いとなっている。それほどにドラキュラは吸血鬼モノの開祖的存在なのだが、実はドラキュラには先輩がいる。女吸血鬼カーミラである。
 「ドラキュラ」の原作者ブラム・ストーカー氏の大学の先輩にあたるレ・ファニュ氏(余談1)が発表した女吸血鬼モノで、当時も現代も女性の吸血鬼は珍しい。ストーカーは若い頃にレ・ファニュの「カーミラ」を読んで強く影響を受け「ドラキュラ」に反映させている。後にドラキュラが吸血鬼モノの開祖となることを考えれば、カーミラはその知られざる元祖であろう。

 カーミラがドラキュラよりもイマイチ知名度が低いのは、一つはドラキュラの方が派手でセンセーショナルで冒険活劇的なので、娯楽ホラー映画にしやすかった事があげられる。その結果、ドラキュラ映画の方が圧倒的大量に制作されている。対してカーミラは心理描写に重心を置いている。
 もう一つは、あくまで私見だがカーミラは耽美的でレズビアンを扱っているために、娯楽ホラー映画には向かなかった。そのため、現代に於いてなお制作数はドラキュラに比べて非常に少ない。

 さてこの「バンパイア・ラヴァーズ」は、そのカーミラ映画である。主演は東欧系の俳優でドイツ育ちのイングリッド・ピット氏。(余談2)当時のビット氏は若い頃の小川眞由美氏を西洋人顔にしたような女優で妖艶な雰囲気がある。ドイツ語訛りの台詞がゴシックホラー的イメージを高めてグッドである。他、クリストファー・リー氏と並んで怪奇映画スターのピーター・カッシングが出演している。
 公開当時は、カーミラの下のヘアが透けて見えたり、ヒロインの寝室へ吸血目的の夜這いに入って美少女の乳房がポロリそのまま同性愛描写などが物議を醸したようだが、現代の感覚ではさほど問題描写には見えない。これが問題なら「レッド・クリフ」はポルノになってしまう。

 ハリウッド映画と違って、さすがイギリスの名門ハマー・フィルムである。ゴシックホラーには重厚さが不可欠、雰囲気は素晴らしい。原作に沿った映画化なので、カーミラがヒロインに近づき、ヒロインとの友情を次第に恋愛感情になるよう仕向け、じわじわ血を吸っていく過程が丁寧で上品でエロく、それでもって野卑なスケベさが無いところが巧いと思う。

 ドラキュラに比してカーミラの映画化は非常に少ない。時代の制約も現代なら少ない。ドラキュラがあまりにも多すぎるので、今後はカーミラがウケると思う。
 思い切って「エマニエル夫人」レベルのソフトポルノと日本の伝統的ホラーとを組み合わせると、面白くなると思うのだが。

(余談1)19世紀の半ばから後半にかけて活躍したアイルランドの小説家。推理小説・怪奇小説で有名。
 ストーカーとは親子ほど歳が離れているので、大学の先輩といってもストーカー在学時は既に50歳前後になっており、OBとして「ダブリン大学マガジン」を主な舞台に文筆活動を展開していた。

 因みに吸血鬼モノ自体はヨーロッパで広く伝承となっており、レ・ファニュもストーカーもアイルランドの吸血鬼伝説をベースにしている。
 吸血鬼モノが初めて小説化されたのは19世紀初期らしい。レ・ファニュの「カーミラ」は1870年代、ストーカーのドラキュラは1890年代に発表されている。

(余談2)たしか、父親はドイツ人だが母親はバルト三国の出身。芸名はドイツ系の名前だが、本名は東欧特有の音韻だったように記憶している。



晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆ 良
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆☆ 名作

 
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恐怖の吸血美女 [DVD] ジミー・サングスター
鮮血の処女狩り [DVD] ピーター・サスディ
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ドラキュラ血のしたたり [DVD] ジョン・ハフ
   
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吸血鬼カーミラ 創元推理文庫 506-1 レ・ファニュ
 

 
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コメント

小川真由美。

トラックバックありがとうございます。
ほんとに小川真由美な雰囲気でしたね。

冒頭の墓からでてくるシーンは薄物がふわ~っとして雰囲気が素晴らしかったです。見守る
俳優の顔も歴史ものっぽい顔立ちで、(リチャード三世みたいな)おお~っと期待してしまいました。
しかし、その後はゴシック調にぴたりとあった男優に比べて女優が現代的すぎてちょっと
アンバランスな印象を受けました。それと杭を打ち込まれる時におとなしく寝ているのもあれ?
って感じで。もうひと暴れして欲しかったですね~。

Re: 小川真由美。

A君へ
 
 女吸血鬼カーミラ、良い雰囲気でしょう。掴みどころは良かったんですが、現代の感覚ではおとなしい描写なんです。
 
 ソフィア・コッポラ監督がカーミラを描いたら、なかなか様になるのかなぁ、と思っています。永遠に大人になれない美少女、「親友」とのスキンシップを求めて村の乙女から貴族の令嬢まで毒牙にかけていくカーミラ、情緒不安定なギャルを描かせたらピカ一のソフィアなら良い絵が描けると思うのです。

> トラックバックありがとうございます。
> ほんとに小川真由美な雰囲気でしたね。
>
> 冒頭の墓からでてくるシーンは薄物がふわ~っとして雰囲気が素晴らしかったです。見守る
> 俳優の顔も歴史ものっぽい顔立ちで、(リチャード三世みたいな)おお~っと期待してしまいました。
> しかし、その後はゴシック調にぴたりとあった男優に比べて女優が現代的すぎてちょっと
> アンバランスな印象を受けました。それと杭を打ち込まれる時におとなしく寝ているのもあれ?
> って感じで。もうひと暴れして欲しかったですね~。

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