「チェ 28歳の革命 」 味付無しのチェ 。 【原題】 CHE: PART ONE/THE ARGENTINE
【公開年】 2008年
【制作国】 亜米利加 西班牙 仏蘭西
【時間】 132分
【監督】 スティーヴン・ソダーバーグ 【音楽】 アルベルト・イグレシアス
【脚本】 ピーター・バックマン
【言語】 スペイン語 イングランド語
【出演】 ベニチオ・デル・トロ (
エルネスト・チェ・ゲバラ ) デミアン・ビチル(フィデル・カストロ) サンティアゴ・カブレラ(カミロ・シエンフエゴス) エルビラ・ミンゲス(セリア・サン
チェ ス) ジュリア・オーモンド(リサ・ハワード) カタリーナ・サンディノ・モレノ(アレイダ・マルチ) ロドリゴ・サントロ(ラウル・カストロ) ウラジミール・クルス(-) ウナクス・ウガルデ(-) ユル・ヴァスケス(-) ホルヘ・ペルゴリア(-) エドガー・ラミレス(-)
【成分】 スペクタクル 勇敢 知的 かっこいい 戦争映画 1950年代~1960年代 キューバ革命 一部白黒
【特徴】 南米が生んだ世界的著名な偉人にしてキューバ革命の立役者
チェ・ゲバラ 氏の半生を描いた2部作。本作はそま前編にあたる苦難のキューバ革命時代を描く。
アメリカの資本で制作されているが、全編スペイン語で演じられ、ジャングルや市街での戦いは記録映画を見ているかのようにリアル。また、
チェ 役の
ベニチオ・デル・トロ 氏もフィデル・カストロ役のデミアン・ビチル氏も恐ろしく史実の本人に似ている。これはキューバ市民の間でも同評価で、好意的に受け入れられている。
【効能】 ゲバラの生の息遣いが感じられる。ゲバラの革命を疑似体験できる。絶望していたことが小さな事に感じられる。
【副作用】 英雄物語と思って見ると拍子抜けしてがっかりする。
下の【続きを読む】 をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。 記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。
特にデミアン・ビチル氏はカストロそのものだ。 まず、映画を観終わって思い付いた事を書こう。
チェ 、フィデル、カミーロ、アレイダはソックリだった。まるで本人が出演しているかのような錯覚を起こした。(余談1)単に容姿を似せているだけでなく、所作や考え方もよく再現している。
チェ は革命の敵や裏切り者に対しては冷酷で、風紀には厳しく口やかましい人物なのだが、この作品にもそんな性格が描写されている。
キューバ革命の描写が実に淡々としていて脚色不足だ。もしアメリカのエンタメ映画であれば、スーパーマン的大活躍をするヒーローが多数の魅せ場をつくる所だが、それを一切排除している。汗と血の臭いが漂い小銃の乾いた射撃音が響くリアルな熱帯ジャングルの戦いや市街戦に徹している。
もちろん、ゲバラも超人ではない。汗で戦闘服が濡れて背中にびっしり張り付かせながら喘息の発作に耐えているか、負傷者に応急処置をしたり、森の繁みや街の建物に身を隠したり、部下に指示を与えたり口やかましく説教したり、時間があれば本を読んでいたり。伝え聞くゲバラそのものだった。
物語の展開は、革命成立後にキューバを代表して渡米し国連総会に出席したりアメリカのメディアからインタビューを受けている場面を白黒映像にして節目節目に挿入しながら、革命戦争時をカラー映像で流している。
これらの理由から、予告編から「スパルタカス」や「ブレイブハート」といった情熱的な英雄物語を期待すると拍子抜けするだろうし、時系列が順序通りでないと判りづらくなる人は物語についていけない。こんな物語の進め方は賛否あるだろうが、私は大変な好感をもって鑑賞した。もし味付けをしたら、前述したように本人が出演しているかのような錯覚は起こさなかったろう。
もし、エンタメ映画でないと納得できない、あるいは受け付けない方は、オマー・シャリフ氏がゲバラに扮した「
チェ 」を薦める。(余談2)
やはり、この作品は1部と2部あわせて1つの作品だ。第2部を観ない事には何とも言えない。
が、今回の前編は監督が意識して味付無しの
チェ にこだわったように思える。
チェ のエピソードを知ればいくらでも英雄的に表現できるものなのだが、努めてそれを抑えている。後編を観る事でその理由が解るだろうと思う。
というのも、前編である「28歳の革命」は史実通り証言通りの範疇で構成され監督達の想像力はあまり必要ではないが、後編の「39歳 別れの手紙」は部下たちが目撃していないゲバラ最期の姿を描くからだ。彼の人生を総括する意味でも制作者の解釈や想像力が盛り込まれるはずだ。
(余談1)
チェ・ゲバラ に扮している40男のデル・トロ氏、革命前夜の髭の無い顔はさすがに28歳の若者には見えなかった。
フィデル・カストロ役のデミアン・ビチル氏は巧くカストロになっていた。甲高くて機関銃のように言葉が飛び出す話し方もソックリだ。
チェとウマが合う戦友でキューバ革命の牽引車だったカミーロに扮したサンティアゴ・カブレラ氏も伝え聞くカミーロそのものだ。
後にチェの妻になるアレイダ役のカタリーナ・サンディノ・モレノ氏もよく特徴を捉えている。
但し、フィデルの弟ラウルに扮したロドリゴ・サントロ氏は実在より男前過ぎる。
(余談2)邦題は「革命戦士ゲバラ」または「ゲバラ!」。実はゲバラの生涯を映画化したのは今回が初めてではない。ゲバラの死後2年後の1969年にはさっそくアメリカ資本が映画を作っている。「アラビアのロレンス」で有名なアラブの名優オマー・シャリフ氏がゲバラに扮し、今回の作品と同様のテーマで制作されているが、かなりゲバラを英雄的に描写されており、カストロを差し置いて影の司令官であるかのような存在になっている。ただ、観客にとっては解り易くて納得する描き方だ。
それにしても敵対国であるアメリカがゲバラの映画を制作するとは。今回の映画かもアメリカ資本が関わっているし、興味深い。
VIDEO 晴雨堂スタンダード評価 ☆☆☆☆ 優 晴雨堂マニアック評価 ☆☆☆☆☆ 金字塔 【受賞】 カンヌ国際映画祭(男優賞)(2008年)
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特にデミアン・ビチル氏はカストロそのものだ。 まず、映画を観終わって思い付いた事を書こう。
チェ 、フィデル、カミーロ、アレイダはソックリだった。まるで本人が出演しているかのような錯覚を起こした。(余談1)単に容姿を似せているだけでなく、所作や考え方もよく再現している。
チェ は革命の敵や裏切り者に対しては冷酷で、風紀には厳しく口やかましい人物なのだが、この作品にもそんな性格が描写されている。
キューバ革命の描写が実に淡々としていて脚色不足だ。もしアメリカのエンタメ映画であれば、スーパーマン的大活躍をするヒーローが多数の魅せ場をつくる所だが、それを一切排除している。汗と血の臭いが漂い小銃の乾いた射撃音が響くリアルな熱帯ジャングルの戦いや市街戦に徹している。
もちろん、ゲバラも超人ではない。汗で戦闘服が濡れて背中にびっしり張り付かせながら喘息の発作に耐えているか、負傷者に応急処置をしたり、森の繁みや街の建物に身を隠したり、部下に指示を与えたり口やかましく説教したり、時間があれば本を読んでいたり。伝え聞くゲバラそのものだった。
物語の展開は、革命成立後にキューバを代表して渡米し国連総会に出席したりアメリカのメディアからインタビューを受けている場面を白黒映像にして節目節目に挿入しながら、革命戦争時をカラー映像で流している。
これらの理由から、予告編から「スパルタカス」や「ブレイブハート」といった情熱的な英雄物語を期待すると拍子抜けするだろうし、時系列が順序通りでないと判りづらくなる人は物語についていけない。こんな物語の進め方は賛否あるだろうが、私は大変な好感をもって鑑賞した。もし味付けをしたら、前述したように本人が出演しているかのような錯覚は起こさなかったろう。
もし、エンタメ映画でないと納得できない、あるいは受け付けない方は、オマー・シャリフ氏がゲバラに扮した「
チェ 」を薦める。(余談2)
やはり、この作品は1部と2部あわせて1つの作品だ。第2部を観ない事には何とも言えない。
が、今回の前編は監督が意識して味付無しの
チェ にこだわったように思える。
チェ のエピソードを知ればいくらでも英雄的に表現できるものなのだが、努めてそれを抑えている。後編を観る事でその理由が解るだろうと思う。
というのも、前編である「28歳の革命」は史実通り証言通りの範疇で構成され監督達の想像力はあまり必要ではないが、後編の「39歳 別れの手紙」は部下たちが目撃していないゲバラ最期の姿を描くからだ。彼の人生を総括する意味でも制作者の解釈や想像力が盛り込まれるはずだ。
(余談1)
チェ・ゲバラ に扮している40男のデル・トロ氏、革命前夜の髭の無い顔はさすがに28歳の若者には見えなかった。
フィデル・カストロ役のデミアン・ビチル氏は巧くカストロになっていた。甲高くて機関銃のように言葉が飛び出す話し方もソックリだ。
チェとウマが合う戦友でキューバ革命の牽引車だったカミーロに扮したサンティアゴ・カブレラ氏も伝え聞くカミーロそのものだ。
後にチェの妻になるアレイダ役のカタリーナ・サンディノ・モレノ氏もよく特徴を捉えている。
但し、フィデルの弟ラウルに扮したロドリゴ・サントロ氏は実在より男前過ぎる。
(余談2)邦題は「革命戦士ゲバラ」または「ゲバラ!」。実はゲバラの生涯を映画化したのは今回が初めてではない。ゲバラの死後2年後の1969年にはさっそくアメリカ資本が映画を作っている。「アラビアのロレンス」で有名なアラブの名優オマー・シャリフ氏がゲバラに扮し、今回の作品と同様のテーマで制作されているが、かなりゲバラを英雄的に描写されており、カストロを差し置いて影の司令官であるかのような存在になっている。ただ、観客にとっては解り易くて納得する描き方だ。
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スティーブン・ソダバーグの並々ならぬ思いが詰まった映画でしたよ。
下手に英雄視した映画よりもずっとよかったと思います。