「マンマ・ミーア!」 青春回帰〔38〕
【原題】MAMMA MIA!
【公開年】2008年 【制作国】英吉利 亜米利加 【時間】108分
【監督】フィリダ・ロイド
【音楽】ベニー・アンダーソン ビョルン・ウルヴァース
【脚本】キャサリン・ジョンソン
【出演】メリル・ストリープ(ドナ) アマンダ・セイフライド(ソフィ) ピアース・ブロスナン(サム) コリン・ファース(ハリー) ステラン・スカルスガルド(ビル) ドミニク・クーパー(スカイ) ジュリー・ウォルターズ(ロージー) クリスティーン・バランスキー(ターニャ)
【成分】笑える 楽しい ファンタジー ゴージャス ロマンチック かわいい かっこいい コミカル 夏 海 エーゲ海 ミュージカル
【特徴】大ヒット作ミュージカルの映画化。ABBAの名曲にのせて、明るい日差しのエーゲ海沿岸を舞台に、結婚式に臨む若い娘と複数の男と付き合っていた母親との騒動を愉快に描く。
何も考えずお祭り気分で見るべし。
【効能】愉快な気分にさせる。嫌なことが些細に感じられる。
【副作用】ミュージカルならでは迫力が感じられず損した気分になる。中身の無い馬鹿騒ぎに見える。
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。
齢を重ねた母娘で観る映画。
まず、私は基本的にミュージカルが苦手であり嫌いである。ミュージカルという表現方法の良さは理解していないし生理的に虫ずが走る。しかしミュージカルを観ないのかといえば、そうではなく、一通りは観る人間なのである。ミュージカルが嫌う以上に食わず嫌いで物事を判断する行為を唾棄するのが私の性分だ。(余談1)
この作品を観て思ったのは、制作者は私のような40過ぎで理屈っぽく政治がどうの経済がどうのと考えてしまう人間はあまり対象にしていないだろう、という事である。
最も楽しめる人々は、たぶん30歳以上の女性、還暦前後の母親と30代半ば既婚娘の組み合わせで映画館に入ったら、作品世界を堪能できるだろうと思う。理由の1つとして、還暦前後の世代はアバの4人と同世代であり、50代・40代世代ではアバのヒット曲は青春時代の曲だからだ。
若い女性も楽しい雰囲気に乗って楽しめるとは思うが、下ネタを友人や身内と抵抗無く楽しめる年齢になったほうがより入り込めやすい。やはり男女の営みを経験し子育てが少し落ち着いた頃が作品の世界に馴染むと思うのだ。
メリル・ストリープ氏の好演と娘役のアマンダ・セイフライド氏の溌剌とした可愛らしさ、カッコいい男たち、明るい陽射しが注ぐエーゲ海の雰囲気、これらは誠に良いのだが気になる点がある。
ミュージカルの多くは群舞で観客にインパクトを与えるのが醍醐味だ。ミュージカルの映画化も同じ、群集の動き群舞の振り付け、それを撮影するカメラの構図と構成、ミュージカル映画の名作は綿密に計算されているものである。
ところがこの作品の群舞は迫力が無い。何故だろう? もしチャップリン氏が映画監督であれば、群舞のダンサーやエキストラたちに何度もやり直しをさせ、カメラマンに構図のチェックを何度もさせるのでは、と想像してしまう。こんなミュージカル映画では、癇癪を起こしてしまうのは間違いない。
具体的にいうと、ミュージカル映画なのにミュージカルのようなズームアウトした全景描写が少ない印象を抱くのである。何のための群集場面群舞場面なのか。ミュージカルにこだわらず、アバの曲をBGMにした通常のラブコメ映画でも良かったのではないか、とミュージカル嫌いの私は思う。
いずれにせよ、これは女性の感性に合わせた作品であり、その目的は達成されている。
(余談1)「ウエストサイド物語」でジョージ=チャキリス氏が突然足を高々とあげて踊りだす様を観て、コメディと思い込んでしまった。突然、シリアスな台詞が歌に変化して前触れも無く群舞をやりだすなどは異様で不自然で笑うしかなかった。
「マンマ・ミーア!」と雰囲気が似ている「グリース」は、毎日が学園祭の物語と思えば感情移入できた。ただ、高校生を演じているのはイイ歳したオジサン・オバサンたちなので、これもギャグとして楽しめた。
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆ 良
晴雨堂マニアック評価
☆☆ 凡作
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コメント
こんにちは~♪
Re: こんにちは~♪
ミュージカルの中で、抵抗なく見れたのは「サウンド・オブ・ミュージック」と「アクロス・ザ・ユニバース」でした。これは極めて個人的な贔屓目があるかもしれません。
> 私もミュージカルはそれほど得意ではないです。
> けれど数をこなすうちに、ノレる作品とそうでない作品があることが分かりました。
> 美男美女が恋愛ムードになっていきなり歌いだす・・・というシチュエーションに一番引いてしまうかもしれません~。
TBありがとうございました
これは見ててとっても楽しかったです。
ついつい口づさんでた自分がいました。
TBありがとうございました。
本作は、ノレともノレなかったとも言えないけれど、楽しかったです。
始めてみる弾けて楽しそうなメリル・ストリープを観ていると、こちらまで楽しくなりました。ただ、ちょっとやりすぎじゃないの?って所も間々ありましたね。
中年のおばちゃん応援映画ってことで、エーゲ海の美しい海をバックに明るい気持ちになれました。
こんばんわ
まぁだから見終わって半年もすると中身を忘れちゃうんですけど。
とにかく楽しい映画。ただそれだけですね。
Re: TBありがとうございました
オリビア・ニュートン・ジョンの「グリース」も毎日学園祭のような雰囲気、そんな作品にミュージカルは合いますね。
> ミュージカルなんだから、見て楽しいのが一番だと思いますわ。
> これは見ててとっても楽しかったです。
> ついつい口づさんでた自分がいました。
Re: TBありがとうございました。
「グリース」は20代・30代の青春回帰映画、本作は50代以上の青春回帰映画だと思います。どの世代でも明るく楽しいお祭り気分にさせてくれます。暗い世相には必要な作品でしょう。
日本の夏とはまた違った爽やかな明るさと暑さですね。
> ミュージカル、結構好きです。でも、ミチさんも仰っていますが、「ノレるものとノレないものがある」に同感です。
> 本作は、ノレともノレなかったとも言えないけれど、楽しかったです。
> 始めてみる弾けて楽しそうなメリル・ストリープを観ていると、こちらまで楽しくなりました。ただ、ちょっとやりすぎじゃないの?って所も間々ありましたね。
> 中年のおばちゃん応援映画ってことで、エーゲ海の美しい海をバックに明るい気持ちになれました。
Re: こんばんわ
ジョン・トラボルタの「サタデーナイト・フィーバー」と「グリース」を観た時でも、「サタデーナイト・・」は深みのある映画なのに「グリース」は何て中身の無い映画だ、オリビアはどうみても中年のオバサンにしか見えない、と思ってしまい、しばらく忘れていました。
しかし今「グリース」を見ると、面白いやん、と印象が変わってしまいます。自分の子供が結婚するときに観たら、感動するかもしれません。
> ほんと、この映画は何も考えずに見るのが一番の映画ですよね。
> まぁだから見終わって半年もすると中身を忘れちゃうんですけど。
>
> とにかく楽しい映画。ただそれだけですね。
こんにちはー
>最も楽しめる人々は、たぶん30歳以上の女性、還暦前後の母親と30代半ば既婚娘の組み合わせで
すごい言えてるな~と思いました。私は娘側の立場で楽しめたのですが、家の母は、道徳観念にうるさい人だったので、そんな何人もの人と~と顔をしかめてました(^^ゞ
TB&コメントありがとうございました!
ご訪問ありがとうございました。
ミュージカルはあまり得意なジャンルでは
ありませんが・・・。「マンマ・ミーア」は
楽しめました。懐かしいアバの歌に思わず
口ずさみました。オフセット印刷をされて
いたんですね。同じようなことをされて
いる方は少ないので、嬉しい限りです。
これからも宜しくお願い致します。
Re: こんにちはー
アメリカでも、中絶を殺人罪と断定する保守的なキリスト教信徒の家庭では顔を顰めるどころか、有害映画として糾弾するでしょう。
江戸時代以前の日本人は、「マンマ・ミーア!」のノリそのものだったと思います。歌って踊って大団円でしたから。
> 楽しめる世代は?とか、どういうタイプ方がこの映画を楽しめるか?という推察が的確で素晴らしいですね~^^
>
> >最も楽しめる人々は、たぶん30歳以上の女性、還暦前後の母親と30代半ば既婚娘の組み合わせで
> すごい言えてるな~と思いました。私は娘側の立場で楽しめたのですが、家の母は、道徳観念にうるさい人だったので、そんな何人もの人と~と顔をしかめてました(^^ゞ
Re: TB&コメントありがとうございました!
お祭り騒ぎは大好きです。「マンマ・ミーア!」は夏祭りです。
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けれど数をこなすうちに、ノレる作品とそうでない作品があることが分かりました。
美男美女が恋愛ムードになっていきなり歌いだす・・・というシチュエーションに一番引いてしまうかもしれません~。