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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「チェ 39歳 別れの手紙」 自分に喝を入れたい時に〔29〕 

チェ 39歳 別れの手紙」 ゲバラの革命追体験
 

 
【原題】CHE: PART TWO
【公開年】2008年  【制作国】仏蘭西 西班牙 亜米利加  【時間】133分  
【監督】スティーヴン・ソダーバーグ
【原作】
【音楽】アルベルト・イグレシアス
【脚本】ピーター・バックマン
【言語】スペイン語 一部イングランド語 フランス語
【出演】ベニチオ・デル・トロ(エルネスト・チェゲバラ)  ヨアキム・デ・アルメイダ(バリエントス大統領)  デミアン・ビチル(フィデル・カストロ)  カルロス・バルデム(モイセス・ゲバラ)  エルビラ・ミンゲス(セリア・サンチェス)  フランカ・ポテンテ(タニア)  カタリーナ・サンディノ・モレノ(アレイダ・マルチ)  ロドリゴ・サントロ(ラウル・カストロ)  ルー・ダイアモンド・フィリップス(マリオ・モンヘ)  マット・デイモン(-)  カリル・メンデス(-)  ホルヘ・ペルゴリア(-)  ルーベン・オチャンディアーノ(-)  エドゥアルド・フェルナンデス(-)  アントニオ・デ・ラ・トレ(-)
    
【成分】泣ける 悲しい スペクタクル パニック 勇敢 知的 絶望的 切ない かっこいい 革命 戦争映画 ボリビア 1966年~1967年 
       
【特徴】ソダーバーグ監督チェ2部作の後編にあたる。前編は軍医としてキューバ革命軍に参加したチェが次第に革命の中枢リーダーとなり、コマンダンテ(司令官)として要衝サンタ・クララを制圧するまでを、まるで監督自身がゲバラの軍に従軍しながら撮ったかのように描いた。
 本作はゲバラが思いつめてキューバを出国し、ボリビアに南米全体を「解放」するための拠点をつくるべく解放軍を組織し山中を彷徨する様を描く。前編では一種のサクセスストーリーだが、後編では転落の日々である。次第に追い詰められていく様が痛い。
  
【効能】ゲバラの信念に勇気付けられる。日ごろ悩んでいた事が軽く見える。
 
【副作用】冒険活劇が好きな人、ハッピーエンドでないと納得しない人には不向きな作品、盛り下がって暗い気分になる。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。  
これは、監督がゲバラに贈った墓碑である。

 後編である「チェ39歳 別れの手紙」を観て監督の意図が解った様な気持ちになった。この映画はソダーバーグ監督がコマンダンテ・チェゲバラに贈った墓碑である。チェがどのように生き、時代と格闘し、志半ばで最期を迎えたのかを克明に記した墓碑を、デル・トロ氏がまるで本物のゲバラ自身が肉声の如く朗読しているかのような、そんな映画だった。(余談1)

 物語の展開は前編の「28歳の革命」と同じく脚色臭を排した作りになっている。南米の高地を彷徨うように点々とするゲバラたちをデフォルメすることなく描いていた。ボリビアでのゲバラたちを写した写真を何枚か見たことがあるが、作中の雰囲気はそのままリアルに再現されている。
 この厳しいボリビアでの行軍中、ゲバラは几帳面に日誌を書いている。文体は一貫して冷静で淡々とその日の行動を記録していた。感傷的な内容は無い。喘息もちのハンデを抱えながら彼は厳しい環境のなかコマンダンテ(指揮官)として部隊全体を統括し、医師として傷病兵の治療は勿論のこと寒村の住民を診察するなど医療奉仕を行い、兵士としては常に他の兵士たちと同じ戦力の一員として行動した。そんな中での日誌である。人並みはずれた知性と自制心の持ち主であることが窺われる。

 日誌最後の日付は10月7日、つまりゲバラが負傷しボリビア陸軍の捕虜となる前日である。映画でも描写されているように、この時期のゲバラたちはボリビア軍によって散り散りに分断包囲され各個撃破によって殲滅間近の状況だった。
 この日、渓谷で潜伏していると地元の老女と偶然出あい、やむを得ず捕らえたものの、口止め料50ペソを払って放免したとある。裏切って軍に通報するだろうとの予想も記されていた。(余談2)あまりにも厳しすぎる状況の中でも、ゲバラは驚異の忍耐力を発揮する。ゲバラに従う同志たちも凄いが、同志たちに規律を守らせるゲバラが如何に自分に厳しい人物であるかを改めて痛感する。
 ゲバラたちの涙ぐましい革命闘争の日々が、下手な演出を徹底排除して違和感なく記されている事は正解だったと思っているし、ゲバラへの敬意なのだろう。

 作品を観る前、私はエンドロールでラテンアメリカらしく物悲しいギターだけの曲が流れると思っていたが、無音だった。これを観てこの作品はゲバラの墓碑だと確信した。
 鑑賞者はチェ・ゲバラという1人の人間が闘った様を観てほしい。「映画」を楽しむ人やチェの生き様に関心の無い人にとっては、退屈な作品である。もう一度いうが、これは墓碑である。

(余談1)ルー・ダイアモンド・フィリップス氏がボリビア共産党のモンヘ役で登場した。彼のキャラならボリビア陸軍将校だと思ったのに、好意的な意味で意表を突かれた。
 アルゼンチン生まれの東ドイツ人タニア役にフランカ・ポテンテ氏、彼女が冒頭で着飾ってパーティーに出ているのはスパイとして政府要人秘書になっていたため。

(余談2)老女はゲバラたちを裏切らず通報しなかったようだ。

 作中にも登場するアフリカ系キューバ人ポンボ、当時の肩書きはキャピタン(大尉)、コマンダンテ・チェ・ゲバラが処刑された後、生き残り部隊の指揮官となる。彼は2人のキューバ人同志とともに無事に帰国、空港にはカストロ自ら出迎えた。キューバ軍の中枢を担う。



晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆☆ 優

晴雨堂マニアック評価
☆☆☆☆☆ 金字塔


晴雨堂関連作品案内
チェ 28歳の革命 [DVD] スティーブン・ソダーバーグ
モーターサイクル・ダイアリーズ 通常版 [DVD] ウォルター・サレス まだ社会主義者になる前の放浪が好きな青年時代のゲバラの物語。
革命戦士ゲバラ! [DVD] リチャード・フライシャー オマー・シャリフがゲバラを演じるアメリカ映画。悪意は無いがやや野心的なヒーローとして描かれている。

晴雨堂関連書籍案内
ゲバラ日記 エルネスト・チェ ゲバラ ボリビアでの闘いの合間に書いた手記。
モーターサイクル・ダイアリーズ (角川文庫) エルネスト・チェ ゲバラ 青年時代のゲバラの南米放浪記。
チェ・ゲバラ―リウスの現代思想学校 リウス ゲバラの出生から最期までを解り易く漫画で描いている。

キューバ・ボリビア観光関係サイト
海外ホテル予約『地球の歩き方 ホテルサーチ』





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チェ・ゲバラに対する思いを無音で表現するあたり、さすがスティーブン・ソダバーグ監督でしたね。
高尚な思いをこういう風に描かせるあたり、改めてチェ・ゲバラの偉大さを思い知らされましたよ。
[ 2009/10/22 21:36 ] [ 編集 ]
にゃむばなな氏へ

> チェ・ゲバラに対する思いを無音で表現するあたり、さすがスティーブン・ソダバーグ監督でしたね。
> 高尚な思いをこういう風に描かせるあたり、改めてチェ・ゲバラの偉大さを思い知らされましたよ。
 
 ゲバラの死後2年ほどたってオマー・シャリフ氏主演の「チェ!(革命戦士ゲバラ)」が制作されましたが、比較的好意的に描写しているものの、ヒーロー的要素を強く出していて、「何か違う」という思いを持ちました。
 ソダーバーグ監督版は納得です。
[ 2009/10/22 22:13 ] [ 編集 ]
彼の生き方そのものに対する憧憬のようなものも感じました。
ソダーバーグ、ぱっとしなかった作品が続いてましたが、これで面目躍如だったと思います。
[ 2009/10/23 08:27 ] [ 編集 ]
sakurai氏へ

> 彼の生き方そのものに対する憧憬のようなものも感じました。
> ソダーバーグ、ぱっとしなかった作品が続いてましたが、これで面目躍如だったと思います。
 
 前の「ソラリス」リメイクにがっかりしただけに、今回の脚色を思い切って排した構成には驚きと敬意を抱きます。
[ 2009/10/23 19:50 ] [ 編集 ]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
[ 2011/08/13 22:46 ] [ 編集 ]
 長文のコメントありがとうございます。
 
[ 2011/08/16 07:13 ] [ 編集 ]
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