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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「鉄道員」 家族と一緒に考えよう〔20〕

鉄道員」 イタリアのホームドラマ名作



【原題】IL FERROVIERE
【公開年】1956年  【制作国】伊太利  【時間】115分  
【監督】ピエトロ・ジェルミ
【原作】
【音楽】カルロ・ルスティケリ
【脚本】 アルフレード・ジャンネッティ ピエトロ・ジェルミ ルチアーノ・ヴィンチェンツォーニ
【言語】イタリア語
【出演】ピエトロ・ジェルミ(アンドレア・マルコッチ)  エドアルド・ネヴォラ(サンドロ)  ルイザ・デラ・ノーチェ(サーラ)  シルヴァ・コシナ(ジュリア)  サロ・ウルツィ(リヴェラーニ)  カルロ・ジュフレ(レナート)  レナート・スペツィアリ(マルチェロ)

【成分】泣ける 切ない かわいい ホームドラマ 鉄道 1950年代 イタリア 白黒映画

【特徴】イタリア映画の古典的名作。平凡で頑固な鉄道マンの親父とその家族の物語。優しい母親、反抗的な長男と勝手に妊娠する長女、そして父親を英雄視する末っ子。戦後まもないイタリアの典型的な庶民の姿を描いた作品だが、いつの時代・どこの国でも通用する普遍的なホームドラマ佳作である。
 ギターの音色を中心とした暗い調子のテーマ曲は、映画音楽の名曲としてたびたび取り上げられる。

【効能】平凡な家族のありがたさを実感する。

【副作用】内容がやや暗いので気分が落ち込む。

下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。
平凡な家族像、今の時代に必要だ。

 初めてみた時は、ちょうど作中の語り部役を務めている幼い末っ子と同じくらいの子供だった。だから感情移入する部分は多々あった。私の父はダムや橋をつくる土木技師だったので、工事現場を点々と移動する。単身赴任は当たり前なので、作中のように毎日帰宅する父親がいる家庭が羨ましかった。たまに帰ってくる父を、私も作中の末っ子と同じように慕ったものだ。
 作中の末っ子と違って、私には兄はいなかったが五つ歳上の姉がいた。子供にとっては大人と子供くらいの開きがある。自分の家族とダブる部分はあった。

 私が生まれる前の時代、遠いイタリアの平凡な家庭、テーマ曲はギターをベースにした暗い調子、白黒映画だったので暗い画像、古臭い映画だと思いながら、その一方で感情移入してしまう不思議な感覚、それがこの映画の魅力だった。この感覚は齢を重ねるごとに増していく。(余談1)
 成長して作中の兄や姉と同じくらいになった。やはり大人に対する粗が目に付くようになり反発をするようになる。私の場合、その反発は母へ向けられた。というのも父は新しモノ好きで平凡を嫌う気性だったから、私のやる事に表面上は理解を示していた。母は平凡な人生こそ幸せと考えていて、私が行うことにはことごとく頑固に反対した。だから作中の兄・姉と違って私は素直な反抗児ではなかった。父の前でワザと「俺は平凡なサラリーマンか公務員になる」と言って、父から「お前、そんな人生つまらんぞ」と言わさせ、それを言質として母の反対を封じ込め行動した。狡猾な子供だった。

 けっこう私は好き勝手な事をやらしてもらった。未だそれらからは芽が出ない。普通の労働者になったとき、作中の父親と同じく「こんだけ働いたのに、賃金こんだけ?」と納得いかず給料明細を何度も確認する。最初の職場の給料明細も作中と同じく細長いロール紙だった。労働組合に関係した事もあったが、作中と同じく頼りになりそうでならない。
 作中の父親は生涯を鉄道員で全うしたが、私は会社の倒産などで職を変えざるを得なくなった。そして2008年秋から始まった大恐慌、現職場もこんなに暇では一寸先は闇だ。「鉄道員」の父親は、列車飛び込み自殺に出くわさなかったら、黙々と仕事だけに専念し、母親も末っ子が成人する頃には夫は鉄道員を定年退職するだろう、といった長期的人生設計を立てていたことだろうし、立てる事ができた。

 齢を重ねるごとに、私は平凡な家庭のありがたさを身に沁みるようになった。頑固親父でいられるのは幸せな証拠だ。頑固親父が家にいるのは幸せだ。特にこの不況の中、「鉄道員」のような家庭は幸せの象徴かな、との思いが日増しに強くなる。

(余談1)白黒画像に登場する列車は蒸気機関車と思い込んでいた私にとって、作中の父親が運転する特急列車にパンタグラフがついているのが衝撃だった。「今と変わらんやん」
 さらに、父親は飛び込み自殺に遭遇して、気持ちを落ち着かせるためワインをラッパ飲みする。「ええ!? イタリアでは職場に酒持ち込んでもええのか!」と驚いた。



晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆☆ 優

晴雨堂マニアック評価
☆☆☆☆ 名作


【受賞】カンヌ国際映画祭(国際カトリック映画事務局賞)(1956年)

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鉄道員(ぽっぽや) [DVD] 降旗康男
ナビゲーター ある鉄道員の物語 [DVD] ケン・ローチ

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イタリア=鉄道旅物語 原口隆行

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