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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

自分に喝を入れたい時に 「ディファイアンス」 

ディファイアンス」 
ダニエル・クレイグの殺気だった表情が魅力

 


【原題】DEFIANCE
【公開年】2008年  【制作国】米  【時間】136分  【監督】エドワード・ズウィック
【原作】ネハマ・テク
【音楽】ジェームズ・ニュートン・ハワード
【脚本】クレイトン・フローマン エドワード・ズウィック
【出演】ダニエル・クレイグ(トゥヴィア・ビエルスキ)  リーヴ・シュレイバー(ズシュ・ビエルスキ)  ジェイミー・ベル(アザエル・ビエルスキ)  アレクサ・ダヴァロス(リルカ)  アラン・コーデュナー(ハレッツ)  マーク・フォイアスタイン(イザック)  トマス・アラナ(ベン・ジオン)  ジョディ・メイ(タマラ)  ケイト・フェイ(ロヴァ)  イド・ゴールドバーグ(イザック・シュルマン)  イーベン・ヤイレ(ベラ)  マーティン・ハンコック(ペレツ)  ラヴィル・イシアノフ(ヴィクトル・パンチェンコ)  ジャセック・コーマン(コスチュク)  ジョージ・マッケイ(アーロン・ビエルスキ)  ジョンジョ・オニール(ラザール)  サム・スプルエル(アルカディ)  ミア・ワシコウスカ(ハイア)
    
【成分】スペクタクル 勇敢 かっこいい 戦争映画 パルチザン 第二次大戦 1940年代 ポーランド ベラルーシ 
       
【特徴】第二次大戦中、東欧の森深くに解放区をつくりユダヤ難民を受け入れドイツ軍と戦い続けたビエルスキ・パルチザンの実話を映画化。まるで20世紀に誕生したロビン・フッドのシャーウッドの森か中国の梁山泊のようである。ただし、時代劇の勧善懲悪活劇ではなく、リアルな山賊集団に描いている。
 ダニエル・クレイグ氏の殺気だった演技に迫力がある。
  
【効能】絶望・意気消沈した心に愛の鞭で叩かれ熱くなる。
 
【副作用】倫理的に不快感をもよおす。パレスチナに対するイスラエルの仕業に嫌悪する者は本作に胡散臭さを感じる。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。  
何故いま制作する? 胡散臭い!

 映画としては良かった。実話を巧くエンターテイメント娯楽戦争映画にしている。
 私はこないだ観た「チェ」の2部作と比べてしまう。「チェ」と本作「ディファイアンス」は実に共通したキーワードを多く持ちながら、全く対照的にできあがっている。

 共通項を列挙してみると、
・れっきとした現代史に刻まれた実話を素にしている。
・主人公も実在の人物。
・舞台は鬱蒼とした森の中での解放軍拠点。
・ビエルスキのパルチザンもチェのボリビア民族解放軍も圧政や迫害からの解放闘争。
・敵は質量ともに優れた正規軍の機械化部隊、対する味方勢力は少数で装備も粗末。
・両者とも偉大な功績だが、その一方で全く正反対の評価もされている。(余談1)

 これほど共通する点がありながら、映画づくりは誠に真逆である。「チェ」は赤いキリストとも呼ばれる世界的有名人だが、ビエルスキ兄弟の名声はポーランドやユダヤ社会にほぼ限定している。そのためかもしれないが、チェは脚色臭・エンタメ臭を一切排除して等身大のチェが描写された。一方ビエルスキ兄弟は明らかにエンターテイメントで彩られている。チェは喘息で苦しんでいるか、コマンダンテらしい格好良い姿を魅せることなく一兵士として戦っているかだが、ビエルスキの長男は馬上で指揮する事もありカッコ良い、如何にも英雄そのものだ。何しろ演じているのは007だ。
 映画として万人が楽しめる作品はどれかと聞かれれば、私は迷わず「ディファイアンス」と答える。面白くて感動して考えさせられる完成度の高い戦争映画だ。まさに現代の「ロビン=フッド」「水滸伝」だ。

 しかし、私はどうしても胡散臭く思えてしまう。というのも、いまイスラエルとパレスチナ自治区は極めて険悪な状態にある。特にイスラエル軍によるガザ地区攻撃は世界中から非難された。イスラエル軍は世界中から非難されることを判っていながら、パレスチナの一般市民もろとも強硬派のハマスを攻撃した確信犯である。
 多くの子供たちが殺された。避難所や学校も攻撃された。イスラエル側は、ハマスはゲリラ組織で市民との区別が難しい、という言い訳もできるだろうが、国際法違反であるのは間違いない。
 そんな時になぜ「ディファイアンス」を制作するのか? 解放区に立て篭もって戦うユダヤ人たち、ガザ地区に篭って戦うパレスチナのハマス。時には略奪も断行するビエルスキたち、時には自爆テロも強行するハマス。現代装備でかためたイスラエル正規軍、ナチスの機械化軍団。どうもダブってしまう。

 イスラエルはナチスドイツがきっかけになっている。ナチスドイツの迫害によってユダヤ人社会からイスラエル復活の世論が大きくなり、大戦後パレスチナの地にイスラエルを建国、欧米諸国は早々と承認し、ヨーロッパ各地からユダヤ民族が移住してくる。ナチスの迫害によって難民となった者も多い。
 ところが、パレスチナ人にとっては2千年前の領有権を主張されても困惑するし、大挙移住するユダヤ人によって先祖代々肥やしてきた土地を奪われる。ナチスの迫害が無かったら、未だにイスラエルは建国しなかっただろうし、イスラム社会は元々ユダヤ人とは共存していた。(余談2)
 
 そういえば、アメリカは祖国イスラエルよりもユタや人の人口が多い。しばしば、ユダヤ系はハリウッドに強い影響力があるとの噂もある。イスラエルに批判が集まる国際世論を緩和するための壮大なプロパガンタ映画なのか?
 それともイスラエル擁護と見せかけて、イスラエルに向けた痛烈な皮肉なのか?


(余談1)ビエルスキ・パルチザンは映画にもあるように、東欧の森の中で解放区を維持し続けた。彼らが守りきれたのもソ連の後援があったからでもあると言われている。さらに非ユダヤ人から食糧の略奪を行っており、ポーランドでは評価が分かれているはずだ。一般市民にしてみれば、山賊以外の何者でもない。ポーランド市民がワルシャワ蜂起でドイツ軍と戦っていたとき、ソ連軍は進軍を止めて傍観した。
 ボリビアのチェは、多くのキューバ人将校や中央委の要人が兵士として加わっていたため、ボリビア政府はカストロの侵略と見なしていたし、一般市民も冷ややかだった。にも関わらず、チェたちは一般村民からは略奪を一切せず、食糧は行儀良く購入していた。そんな綺麗ごとを完遂しながら1年近くも戦っていたのだ。

(余談2)偏狭なイメージが強いイスラム教だが、しかし中世ではキリスト教より開放的進歩的だった。キリスト教が魔女裁判や異端審問をやっていたころ、イスラムでは偶像崇拝をしない宗教については寛容で、税金を納め布教活動をしなければ信仰を認めていた。ユダヤ教はユダヤ人のための宗教なので布教活動はせず、イスラムにとっては干渉する理由がないのでキリスト教諸国のような迫害はしなかった。
 


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TB&コメントありがとうございました。

確かに『チェ』二部作に比べると劇映画色が強く出ていましたね。胡散臭さはありますが、それがエンターテイメントとして必要だというのもわかります。リアリズムとフィクションの塩梅はなかなか難しいですね。
僕はこの映画を描写不足だと感じました。3時間くらいの大作にすれば、反対派からの視点などを取り入れて、より完成度の高いものになったと思います。
[ 2009/10/28 22:37 ] [ 編集 ]
えめきん氏へ

> 僕はこの映画を描写不足だと感じました。3時間くらいの大作にすれば、反対派からの視点などを取り入れて、より完成度の高いものになったと思います。
 
 たしかに、素材としては3時間描写が相応しいと思います。物語の内容としては「ブレイブハート」や「スパルタカス」と同質ですからね。
 
 それに古代や中世と違って、現代社会は利害が複雑で、とくに第二次大戦は今日の国際社会の原点ですから、私は安易なヒロイズムにしてほしくなかったと思っています。
 よりによって、イスラエル軍がカザ地区を攻撃しているときに公開とは。
[ 2009/10/28 23:02 ] [ 編集 ]
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□作品オフィシャルサイト 「ディファイアンス」□監督・脚本 エドワード・ズウィック □脚本 クレイトン・フローマン □原作 ネカマ・テク □ キャスト ダニエル・クレイグ、リーヴ・シュレイバー、ジェイミー・ベル、アレクサ・ダヴァロス、アラン・コー...
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