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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「GAMA 月桃の花」 社会問題を考えたい時に〔16〕 

GAMA 月桃の花」 沖縄戦の悲劇

GAMA 月桃の花.jpg
(未ソフト化)

【公開年】1996年  【制作国】日本国  【時間】110分  【監督】大澤豊
【原案】嶋津与志
【音楽】海勢頭豊
【脚本】嶋津与志
【言語】日本語 一部イングランド語
【出演】朝霧舞(宮里房)  川平慈英(ジョージ)  玉木初枝(現在の宮里房)  新里奈津子(糸数文子)  沖田浩之(鳥羽軍曹)  平良トミ(カミおばあ)  中里友豪(現在の平良勝男)  知花章(宮里真助)  島袋匠造(平良勝男)  島袋利造(宮里真吉)  ウエチ雄大(山城武吉)  當間武三(知念盛昌)  川満聡(比屋定亀助)  島袋也子(真壁ウメ)  國村隼(兵士)  吉田妙子(神谷ウタ)

【成分】泣ける 悲しい パニック 絶望的 切ない 第二次大戦 戦争映画 沖縄戦 1945年・1994年 沖縄 

【特徴】沖縄戦終結50周年記念作品。政治的論議をよんでいる集団自決問題を扱った作品である。
 日本人を母にもつアメリカ人青年ジョージは母の故郷沖縄を訪れ、祖母から沖縄戦の悲劇を聞くことになる、という形で話が展開されていく。洞窟に非難した沖縄島民は上陸侵攻するアメリカ軍と島民を守るはずの日本軍に「挟撃」させ惨い結末を迎えた。
 主に反戦平和運動を展開する護憲派市民有志によって全国自主上映された作品。劇場公演は少なかった。

【効能】戦争に対する楽観的感覚を諌める効果がある。

【副作用】国家や軍隊に対して過度の不信感を与える。

下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。
反戦とヤマトへの告発。

 監督は「日本の青空」の大澤豊氏。「日本の青空」は物語の趣旨と制作の趣旨を考えると戦術的失敗作だが、この「GAMA 月桃の花」は強烈なインパクトで観客を圧倒し追い詰める佳作だ。

 大澤監督の近年の作品を眺めれば判るように、反戦平和護憲のスタンスで映画を制作し政治的運動を展開している。この映画はタイトルからして一目瞭然である。GAMAは洞窟か鍾乳洞を意味するウチナグチ(沖縄方言)であり、月桃は白い花をつける沖縄の草木である。第二次大戦末期の沖縄戦では洞窟を避難壕に利用された。何度かリメイクされている「ひめゆりの塔」でも有名である。(余談1)

 配給は主に市民運動が主体となって行われ各地で上映された。私も当時は知人の反戦運動家から上映案内のチラシをもらった。たぶん、全国各地で自主上映会と沖縄出身者による当時の体験談講演をセットにして催されたのではないか。
 沖縄県や沖縄県教育委員会が推薦に名を連ね、川平慈英氏をはじめ沖縄出身俳優が多数出演。舞台となったガマで避難民や敗走兵たちを仕切る日本軍軍曹役に沖田浩之氏、住民に投降を許さず、米軍以上に恐怖の存在と化す。

 物語は、沖縄のとある村で戦後50年の節目に平和の記念碑を建てることになり、役場の職員が戦没者調査のため主人公である房ばあさんの所にやってくるところから始まる。房は悲惨なガマでの戦いの生き証人だったが、語ろうとはしない。
 そこへアメリカから孫が尋ねて来る。川平慈英氏扮するアメリカ人青年ジョージである。母親は房の反対を押し切って米兵と結婚しアメリカへ渡り疎遠となった。ジョージは祖母房と和解するためにやってきたのだ。
 ところが祖母も義理の伯父勝男も話そうとしない。ジョージはアメリカやアメリカ人である自分を憎んでいるのではないか、と祖母に疑問をぶつけた。やがて房は勝男とジョージをガマへ連れて行き、沖縄戦でガマで何が起こったのかを話し始めた。

 非常に痛い話である。「ひめゆりの塔」ではまだヤマトに遠慮があったが、これは完全に沖縄の戦災住民の視点で描かれている。米軍は恐ろしい敵だがまだ話は通じた。まったく話が通じない恐怖の存在が味方であるはずの日本軍だった。戦争の悲惨さなどと言葉で表現できるほど生易しいモノではない。(余談2)

 反戦をテーマに戦争の醜さを訴える映画として成功作だ。大澤監督の代表作となろう。この手の作品に否定的な人もいるだろうが、戦の臭いから遠ざかり過ぎると保革左右の区別なく平和ボケするものだ。護憲派は平和運動に熱心になるあまり必要悪である国家や武力を無謀にも言論戦だけで否定しようと試みる。保守派は戦争のリスクを楽観的に捉え過ぎるようになる。
 だから、戦争や社会の負の部分を抽出する行為は行わなければならない。

(余談1)吉永小百合主演「あゝひめゆりの塔」のレビューで私は「多少ヤマト寄りの映画」と題した。たしかに沖縄の女学生の視点で物語が進んでいくが、やはりヤマト(本土)への気兼ねというか遠慮があるように見えてしまったからだ。この「GAMA 月桃の花」を観るとますますその印象は強くなる。

(余談2)この問題について真偽と是非でしばしば政治的論争と政治的対立が起きる。保守的で反米的な私としてはあまり信じたくはない内容だ。
 しかし今でさえも沖縄は政治的に不当な負担と不利な立場に置かれている。ましてや当時はコリアンやアイヌ民族に投げていた蔑視を沖縄にも向けていた。さらに軍人は民間人に対し威張る者も少なくなかった。以上の要素を鑑みると、日本軍が沖縄県民に対して非道をやってしまう可能性はある。しかも証言者がいるのだ。
 保守も革新も右も左も、組織防衛にはしると本能的に過去の不始末を隠蔽しようとする。しかし隠蔽する行為には反省も改善も無い。また同じ失敗を繰り返すことになる。

晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆ 良

晴雨堂マニアック評価
☆☆☆☆ 名作


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