「オーストラリア」
「風と共に去りぬ」の20世紀豪州版 【原題】AUSTRALIA
【公開年】2008年
【制作国】濠太剌利
【時間】165分
【監督】バズ・ラーマン 【原作】 【音楽】デヴィッド・ハーシュフェルダー
【脚本】バズ・ラーマン スチュアート・ビーティー ロナルド・ハーウッド リチャード・フラナガン
【言語】イングランド語
【出演】ニコール・キッドマン(レディ・サラ・シュレイ)
ヒュー・ジャックマン(ドローヴァー) デヴィッド・ウェンハム(ニール・フレッチャー) ブライアン・ブラウン(キング・カーニー) ジャック・トンプソン(キプリング・フリン) デヴィッド・ガルピリル(キング・ジョージ) ブランドン・ウォルターズ(ナラ) デヴィッド・ングームブージャラ(-) アンガス・ピラクイ(-) リリアン・クロンビー(-) ユン・ワー(-)
【成分】スペクタクル ロマンチック パニック 勇敢 かっこいい アボリジニ 第二次大戦 1940年代
オーストラリア 【特徴】イングランド貴族の夫人が夫を心配して
オーストラリアの所領を訪れるところから話が展開する。ロンドンの上流階級育ちの夫人が雄大な
オーストラリアの大自然と逞しいカウボーイに触発されて野生に目覚めていく過程を描写。「風と共に去りぬ」の豪州20世紀版といったところか。
日本軍の描写について批判あり。豪州では大ヒット作。
【効能】雄大な
オーストラリアの描写とヒロインの変化に触発されて心が解放される。
ニコール・キッドマンの中年の美しさに萌える男性あり。
【副作用】日本軍を史実より残虐性を過度に描写しているため、激怒する日本人観客あり。アボリジニの描写が豪州人の偽善的気罪滅ぼし臭くて嫌悪感をもよおす。
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。
日本政府は抗議してもエエんとちゃう。 思い付いた事を書こう。
久しぶりの長い映画、私は壮大な
オーストラリアの叙事詩だと思っていた。しかし、予告編で銀色のゼロ戦らしきレシプロ機が攻撃する場面が一瞬あって、嫌な予感がした。
オーストラリアの雄大な大自然を背景に、いい大人のむさ苦しい男性と端正な貴婦人が久しぶりに激しく燃やす恋の炎、次第に逞しく野生に目覚める貴婦人、次第にイケメン男性へ変化する男性、「少数民族」に追いやられたアボリジニの風土人情との絡み、物語としては悪くないデキだった。3時間近くある長編だが、様々な困難を乗り越える波乱万丈のラブロマンスに飽きはこない。
また、完璧に男性目線になるが、
ニコール・キッドマン氏の顔のアップが四十路の艶かしさが出て美しい。堅苦しい貴婦人の姿から次第にアウトドア系シャツ姿になるのも仄かなエロさがあって良い。
しかしである。これと全く同じテーマの映画を仮に日本で制作したらどうなるだろう。タイトルは「北海道」。
東京の華族の貴婦人が北海道の牧場を相続して北海道へ。そこで逞しいヤクザな魅力の男性と出会い恋に落ちる。アイヌ民族の風土人情との絡み、ヒロインは野卑なシャモの地方官僚や悪徳商人のアイヌ民族差別に怒り、口の周りを大きく縁取る独特の刺青をほどこしたアイヌの少女を溺愛する。(余談1)
そんな時、露西亜帝国のバルチック艦隊が北海道を攻撃、さらに樺太からも露西亜軍が南下。主人公たちは「祖国」のため戦う。
本気でこんな映画をつくったら、国の内外から大ブーイング、ロシアから抗議、アイヌ民族の団体や人権派市民グループから抗議。怨嗟で大炎上するだろう。
日本軍が
オーストラリアを大規模な航空兵力で空襲した事はあまり知られていない。だから空襲シーンについては不快感はあっても拒絶はしない。むしろ、そんな史実があった事を日本人に知らしめる意義はあった。余計な誇張さえしなければ。(余談2)
作品のみを評価すべき、という考え方も有りだ。私もその精神に則って評価すべきところは評価しているつもりである。しかし、同様テーマの作品を日本でも制作できるかどうかを想像する事は、作品の普遍性を計る意味で重要である。政治と切り離す事は無理だ。(余談3)
(余談1)アイヌ語で和人(日本人)を指す。シサム(隣人)ともいう。
女性のお洒落として、口の周りを大きく刺青で縁取る風習があった。現代人の感覚では口裂け女に見える。刺青なので消えない、和人から格好の蔑視対象にされた。
(余談2)日本の機動部隊による艦載機によって大規模な空襲が行われたのは事実である。詳しい数字は忘れたが100機単位の航空機が参加した。当時は日本軍に勢いがあったので、一方的に
オーストラリアは叩かれた。映像で表せば、映画のような光景になるだろう。しかしあれほどの大規模な戦力を動員できたのは大戦初期のみである。しかも上陸するだけの陸上兵力は無かった。あとは潜水艦による艦砲射撃や機雷敷設が多い。
もし陸戦隊や陸軍が上陸できるほどの陸海空混成軍を豪州に派遣できるのであれば、その前に真珠湾奇襲段階でハワイを占領し、カメハメハ王の血縁者を国王に立てて傀儡独立国を建てて国際的にアメリカを翻弄しただろう。
ニューギニア上空で戦っていたラバウルのゼロ戦パイロット坂井三郎の主戦場も、豪州北部のケアンズになり、撃墜スコアも倍になったはずだ。
(余談3)80年代末、豪州はオセアニアの先進国からアジアの一員として国おこしをするとの記事を見たことがある。ちょうど、若者向けのワーキングビザが発給されるようになったり、日本向けの牛肉や蕎麦が輸出されるようになった時期だった。
ところが、白豪主義の政党が躍進したり、シー・シェパードなる「海の羊飼い」を自負する団体が日本の捕鯨船を襲い、その行為を支持する豪州市民も多いとか。
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆☆ 優
晴雨堂マニアック評価
☆☆ 凡作 【受賞】サテライト賞(美術賞、撮影賞、視覚効果賞)
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日本政府は抗議してもエエんとちゃう。 思い付いた事を書こう。
久しぶりの長い映画、私は壮大な
オーストラリアの叙事詩だと思っていた。しかし、予告編で銀色のゼロ戦らしきレシプロ機が攻撃する場面が一瞬あって、嫌な予感がした。
オーストラリアの雄大な大自然を背景に、いい大人のむさ苦しい男性と端正な貴婦人が久しぶりに激しく燃やす恋の炎、次第に逞しく野生に目覚める貴婦人、次第にイケメン男性へ変化する男性、「少数民族」に追いやられたアボリジニの風土人情との絡み、物語としては悪くないデキだった。3時間近くある長編だが、様々な困難を乗り越える波乱万丈のラブロマンスに飽きはこない。
また、完璧に男性目線になるが、
ニコール・キッドマン氏の顔のアップが四十路の艶かしさが出て美しい。堅苦しい貴婦人の姿から次第にアウトドア系シャツ姿になるのも仄かなエロさがあって良い。
しかしである。これと全く同じテーマの映画を仮に日本で制作したらどうなるだろう。タイトルは「北海道」。
東京の華族の貴婦人が北海道の牧場を相続して北海道へ。そこで逞しいヤクザな魅力の男性と出会い恋に落ちる。アイヌ民族の風土人情との絡み、ヒロインは野卑なシャモの地方官僚や悪徳商人のアイヌ民族差別に怒り、口の周りを大きく縁取る独特の刺青をほどこしたアイヌの少女を溺愛する。(余談1)
そんな時、露西亜帝国のバルチック艦隊が北海道を攻撃、さらに樺太からも露西亜軍が南下。主人公たちは「祖国」のため戦う。
本気でこんな映画をつくったら、国の内外から大ブーイング、ロシアから抗議、アイヌ民族の団体や人権派市民グループから抗議。怨嗟で大炎上するだろう。
日本軍が
オーストラリアを大規模な航空兵力で空襲した事はあまり知られていない。だから空襲シーンについては不快感はあっても拒絶はしない。むしろ、そんな史実があった事を日本人に知らしめる意義はあった。余計な誇張さえしなければ。(余談2)
作品のみを評価すべき、という考え方も有りだ。私もその精神に則って評価すべきところは評価しているつもりである。しかし、同様テーマの作品を日本でも制作できるかどうかを想像する事は、作品の普遍性を計る意味で重要である。政治と切り離す事は無理だ。(余談3)
(余談1)アイヌ語で和人(日本人)を指す。シサム(隣人)ともいう。
女性のお洒落として、口の周りを大きく刺青で縁取る風習があった。現代人の感覚では口裂け女に見える。刺青なので消えない、和人から格好の蔑視対象にされた。
(余談2)日本の機動部隊による艦載機によって大規模な空襲が行われたのは事実である。詳しい数字は忘れたが100機単位の航空機が参加した。当時は日本軍に勢いがあったので、一方的に
オーストラリアは叩かれた。映像で表せば、映画のような光景になるだろう。しかしあれほどの大規模な戦力を動員できたのは大戦初期のみである。しかも上陸するだけの陸上兵力は無かった。あとは潜水艦による艦砲射撃や機雷敷設が多い。
もし陸戦隊や陸軍が上陸できるほどの陸海空混成軍を豪州に派遣できるのであれば、その前に真珠湾奇襲段階でハワイを占領し、カメハメハ王の血縁者を国王に立てて傀儡独立国を建てて国際的にアメリカを翻弄しただろう。
ニューギニア上空で戦っていたラバウルのゼロ戦パイロット坂井三郎の主戦場も、豪州北部のケアンズになり、撃墜スコアも倍になったはずだ。
(余談3)80年代末、豪州はオセアニアの先進国からアジアの一員として国おこしをするとの記事を見たことがある。ちょうど、若者向けのワーキングビザが発給されるようになったり、日本向けの牛肉や蕎麦が輸出されるようになった時期だった。
ところが、白豪主義の政党が躍進したり、シー・シェパードなる「海の羊飼い」を自負する団体が日本の捕鯨船を襲い、その行為を支持する豪州市民も多いとか。
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