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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「こころの湯」 家族と一緒に癒されよう〔20〕 

こころの湯」 癒しの銭湯「清水池」
 


【原題】洗澡
【英題】SHOWER
【公開年】1999年  【制作国】中華人民共和国  【時間】92分  
【監督】張揚
【原作】
【音楽】
【脚本】張揚
【言語】中国語
【出演】朱旭(劉)  濮存書怐(劉大明)  姜武(劉阿明)  李丁(-)  何冰(-)
    
【成分】笑える 悲しい 切ない コミカル ホームドラマ 下町 北京 中国
         
【特徴】北京の下町にある銭湯を舞台にした地域社会の人情模様。日本でも少なくなってきた古き良き時代の銭湯がここにある。が、日本と同じく再開発の波がここにも押し寄せる。
 銭湯の親父に名優朱旭氏が扮する。日本では「紅い服の少女」や「大地の子」で有名。障害をもった次男が父親の銭湯を楽しげに手伝い、家から独立して香港近くの大都市で今風の核家族で生活している長男のどこか寂しそうな表情が良い。
  
【効能】日本人にとっても共感できる銭湯の話に癒される。
 
【副作用】ラストが不満。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。  
日本人にも共感できる中国の銭湯の話
 
 簡単にいうと、古い町並みが残る北京の下町で、昔ながらの銭湯を営む劉老人とその2人の息子を軸に、銭湯の常連たちの人情模様を綴ったコミカルでシリアスな癒し系映画である。こんな銭湯、日本にも昔は沢山あったなぁ、と懐かしく思うだろう。

 監督は第六世代の張楊監督(チャン・ヤン)、劉老人を演じるのは朱旭氏(チュウ・シュイ)である。朱旭氏は来日挨拶で「日本人にとっても親しみやすい映画」という趣旨の発言をされたが、全くその通りである。こんな銭湯のある中国の町に引越したら、たとえ言葉が通じなくても馴染むだろうし、言葉もすぐに覚えられ第二の故郷と思うようになるだろう。(余談1)

 少し話が脱線するが、私が住む地域では近頃(2009年)中国系日本人との摩擦をよく目の当たりにする。ここ10年、詳しい経緯は知らないが来日して日本に帰化する中国人が増え、大阪府も国際化と人道的観点から積極的に受け入れているのだが、綺麗言だけでは片付けられない。
 若年層はすぐに日本語を覚えて日本社会に馴染んでくれるが、大人は未だ拙い日本語だし、地域社会に参加してくれず自治会運営に支障をきたす事もある。自治会連絡をキチンと口頭と文書の二段構えで伝えたのに、後で「知らない。聞いていない。受け取っていない」などと言われ、注意すると逆ギレされる事もある。文化習慣の違いと納得したいが、素人の庶民が負うには重過ぎる忍耐だ。

 かつて、日中国交正常化して間もない頃は、中国人の評判は非常に良かった。真面目で礼儀正しく気さくで義理がたい。むかし会った中国人は皆そんな方々ばかりだ。しかし、どこの国でもいろんな人間がいる。多勢の中国人が日本にやってくるようになると、嫌な人間も多くなるだろう。そう理解しようとしても、戸惑い困惑し憤懣を抱いてしまう事もある。

 そんな時この「こころの湯」を観ると、「なんや、中国も日本も下町は同じやないか」と安堵する。それとともに「中国にも日本と同じような銭湯があるやないか。住民自治会があるやないか」と再び不満が沸き起こる。というのも、「風呂なんかあまり入らない」という人もいれば、「住民自治会なんて中国には無い」という人もいたからだ。
 しかし本作にも描写されているように、同じ中国でも地域によって生活スタイルは随分違う。狭い日本でも様々な地方があり、自分が住んでいる地域以外は全く知らない人も多々いる訳だから、ましてや中国はもっと地域間の隔たりがあるだろう。くだんの「中国人たち」は自分たちがかつて住んでいた町を一般的な中国と思い込んでいるが、そうとは限らないのだ。

 この映画を観ると、日本が抱えている共通のキーワードがある。地域の憩の場、社交の場であった暖かい銭湯。家を飛び出し香港の隣の深曙V市でビジネスマンとなった長男。知的障害を抱えているが明るくて憎めない次男を暖かく接する父親や常連たち。銭湯を中心に築かれていた楽しい地域住民の輪が、都市の再開発によって壊れ四散してしまう。
 一時は広東の大都会で今風の核家族生活をしてきた長男は、風呂の良さ・隣近所人情の良さ・そして兄弟や家族の良さを再認識する。

 よくニュースで街頭インタビューに答える中国人の反応が、あまりにドライでビジネスライクで冷たいのに驚いてしまうことが多々ある。近年の大気汚染問題や失われていく風土人情や家族の結びつきなど、全く気にもとめないような反応。
 ところがこの映画を観ると、そんな人たちばかりではないのだ、少なくとも張楊監督たちとは話が通じる、などと思った。

(余談1)字数の関係から中国映画史の概略は割愛する。第五世代は文革時に青春時代を過した人々で日本の全共闘世代にあたる。張藝謀氏(チャン・イーモウ)や陳凱歌氏(チェン・カイコー)が代表的人物。
 第六世代は文革時に生まれた40代30代の人々で、ちょうど私と同じ歳頃だ。張楊監督も私より1つ歳下のほぼ同世代だ。

 朱旭氏は、日本ではNHKで放映された日中合作ドラマ「大地の子」で上川隆也氏が扮する主人公の義父役で有名だ。
 中国映画ファンには「紅い服の少女」でヒロインの父親役をやっていたのを思い浮かべるだろう。当時、既にベテランの舞台俳優だったが、この作品が映画デビュー作である。
 「赤い服・・」が制作された当時の中国は経済開放政策を行い始めた頃で、朱旭氏は人民服ではなく背広ネクタイ姿の新しい父親像を演じていた。

 張監督は諸先輩方の映画をたくさん観ているようだ。本作で主人公劉老人が様々な地方の入浴事情を湯舟につかり浮かべた盆にお銚子とオチョコ置いて話す場面(日本にもある定番やないか)がある。陳凱歌監督「黄色い大地」を彷彿させる場面や、田壮壮監督「盗馬賊」を連想する場面が出てくる。
 
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆☆ 優
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆☆ 名作

 
【受賞】トロント国際映画祭国際批評家連盟賞(1999年) テサロニキ映画祭グランプリ・観客賞(1999年) サンセバスチャン国際映画祭監督賞・OCIC賞(1999年) ロッテルダム国際映画祭観客賞(2000年)
 

 
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こんにちは、大地の子以来の朱旭さんの大ファンです^^
先日、沈まぬ太陽を見て来たら、一心こと上川君もちょこっと出演していて、懐かしく思い出していたんです。

晴雨堂ミカエルさんのご近所では、ここ10年位ですか・・。私のご近所にも市営住宅があって、昔からそこに残留孤児の方や難民の方がお住まいになっています。その方々が日本で家族を作り子供さんをもうけ、その子供を通して親同士という感じで知り合いや友達になった人が数人います。みなさんとっても苦労をされて来ている方が多いなあ・・と感じています。
[ 2009/11/18 08:39 ] [ 編集 ]
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